話の肖像画

大勢の人を救いたい 弁護士・清水直(80)(1) 大勢の人を救いたい

 〈「企業再建のプロフェッショナル」と呼ばれる。80歳になった今も、企業再建を通して、困っている人たちの救済に情熱を注ぐ〉

 世界的に著名な登山家、ジョージ・マロリーは、「なぜ、あなたはエベレストに登りたいのか」と尋ねられ、「そこに山があるからだ」と答えました。私が、「なぜ、企業再建事件をライフワークとするのだ」とその動機を尋ねられたら、「そこに困っている人がいっぱいいるからだ」と答えたいと思っています。

 弁護士になりたての頃は、ごく一般的な弁護士として、多種多様の事件を手がけていました。例えば、土地・家屋の明け渡し事件や手形訴訟事件、交通事故の損害賠償請求事件、離婚事件、遺産相続事件などです。これらの事件は、首尾よく解決したとしても、所詮はその当事者、またはその家族を救うことはできても、解決の効果・恩恵はその事件限りの範囲にとどまるわけで、それ以上の社会的効果としての広がりはあまり期待できません。

 これに対して、企業再建事件では、小なりといえども、ひとつの企業を再建することによって、その企業に直接・間接関係ある多くの人を一度に大量に救うことができる、という点で極めて社会的広がりのある効果を持っているといえます。だからこそ、企業を再建するという仕事に、個々の紛争を解決する場合とは次元の異なる社会的意義があるし、これを手がける者にとっては、使命感、達成感、生きがいを感じるに十分なものがあります。

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