米カリフォルニア州南部を含め、世界中のさまざまな場所で侵略的外来種として扱われているアメリカザリガニ(Procambarus clarkii)。今回、学術誌「Conservation Biology」に発表された新たな研究によって、アメリカザリガニが人間にとって有害である可能性が明らかになった。ザリガニが増えることで蚊が増え、蚊が媒介する病気のリスクが高まるかもしれない。(参考記事:「蚊と人間の終わりなき戦い」)
アメリカザリガニの原産地は米国南東部の沼地だ。しかし、現在では、オーストラリアと南極を除くすべての大陸に広がり、生態系を乱し、在来種の脅威となっている。また、人間が感染する寄生虫である肺吸虫の中間宿主でもある。(参考記事:「脳に入る寄生虫が温暖化で北上、ナメクジに注意」)
「アメリカザリガニが穴を掘ることで、土の堰堤などに被害が出ることもあります」と、米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の生物学者エリック・ラーソン氏は話す。さらに、アメリカザリガニが水草を食べてしまい、澄んだ湖沼が濁ってしまうこともあるという。「その土地原産のザリガニを駆逐し、それに取って代わることも少なくありません」。なお、氏は今回の研究に関与していない。(参考記事:「アフリカでザリガニ繁殖、固有種に危機」)
論文の筆頭著者で、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校のゲイリー・ブッチャレッリ氏らの研究グループが、カリフォルニア州のサンタモニカ山地でザリガニを駆除していたときのこと。ザリガニがいる場所ほど蚊の幼生も多いことに氏らは気がついた。
アメリカザリガニの悪評もあり、これは注意を引いた。ブッチャレッリ氏は、「ザリガニがいる場所では、ヤゴはほとんど見つかりませんでした」と言う。ヤゴは水中で生活するトンボの幼虫で、蚊の幼生をたくさん食べる。
研究グループは、サンタモニカ山地で13カ所の川を調査した。そのうち5カ所は、外来種が侵入した記録がないか、近年駆除に成功した場所だ。残りの8カ所には、1960年代からアメリカザリガニがいたことがわかっている。アメリカザリガニは、そのころからカリフォルニア州南部で見られるようになった。釣り人が余った餌のザリガニを放したためではないかと考えられている。(参考記事:「巨大な新種ザリガニ、米テネシー州」)
案の定、ザリガニのいない川にはヤゴがたくさんおり、蚊の幼生は少なかった。その逆も当てはまり、ザリガニのいる川では蚊の幼生が多く、ヤゴが少なかった。