ラーメン学び舎、客伸ばす 一蘭の森(福岡県糸島市)
おもてなし 魅せどころ
とんこつラーメンチェーンの一蘭(福岡市)が福岡県糸島市で運営する「一蘭の森」は製麺の様子などが見学でき、出来たてラーメンも食べられる。福岡空港から電車とバスを乗り継いで1時間以上かかるが、とんこつラーメンは今や世界中で人気のメニュー。来場者の3割以上を訪日外国人(インバウンド)が占めるラーメンの「学び舎(や)」となっている。
製造ラインが2本並ぶ製麺室。ガラス越しにのぞくと、数種類の小麦粉を企業秘密の配合で練り上げた「麺のもと」が裁断機器でテンポよくカットされていく。団体旅行で来ていた27歳の韓国人男性は「ラーメンを食べるだけでなく、学べるのは魅力的」と話す。
一蘭の森は2014年に開業した。東京ドーム2個分にあたる約9万4000平方メートルの広大な土地に麺やスープなどを作る工場のほか、ラーメンの歴史などを学べる「とんこつラーメン博物館」がある。昭和初期の屋台をモチーフにした店舗では、工場でできたばかりのラーメンを食べることもできる。アジアを中心にインバウンド客の人気も高く、多い日には400人ほどの外国人が訪れる。
一蘭のラーメンは癖のないスープにピリ辛の秘伝タレがアクセントとなり、世界中にファンがいる。日本語を話せなくてもオーダー用紙で細かな要望を注文できる仕組みも人気だ。インターネットで口コミが広がり、インバウンドの来店が増えている。台湾から来た王佳●(あめかんむりに文)さん(27)も「一蘭のとんこつラーメンは癖がなくおいしいとSNS(交流サイト)で見た」と話す。
ここでしか味わえない「できたて超生麺」は通常よりモチモチした食感で、小麦の風味をより味わえる。外国人客が福岡市内の店舗ではなく、わざわざ一蘭の森を訪れる理由の1つだ。
無料送迎バスの予約サイトは5言語に対応。JR九大学研都市駅から15分ほどの道中では、運転手が搭乗した外国人の国籍に合わせて音楽を変えている。「少しでも快適な旅を楽しんでもらえればと」話す。
近年は中国や韓国だけでなく、東南アジアからの来客も増えている。宗教上の理由で豚を食べない人にも楽しんでもらえるよう、おみやげ店では豚を使わないとんこつラーメンも用意する。博物館や工場見学パネルの多言語対応も検討しており、さらなるインバウンド客獲得を狙う。
(西部支社 大城夏希)
[日経MJ 観光・インバウンド面 2020年1月27日付]
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