ミドクラは2010年創業の通信系ベンチャー企業である。分散型のネットワーク仮想化技術に強みを持つ。ここにきて、国内外のサービス事業者やインテグレーターとの提携を次々と発表し始めた。同社の共同創業者である加藤会長に、ターゲットとするデータセンター/クラウド市場の動向や今後の展開を聞いた。

(聞き手は加藤 雅浩=日経コミュニケーション編集長)

まずミドクラは何を提供する会社なのか教えてほしい。

加藤 隆哉(Tatsuya Kato)
加藤 隆哉(Tatsuya Kato)
1965年生まれ。兵庫県出身。京都大学工学部航空工学科卒。1991年、コーポレートディレクションに入社。新規事業開発支援、全社経営監査、中長期戦略立案などのコンサルティング業務を手掛けた後、グロービスの設立に参加。グループCOOとしてベンチャー経営に携わる。その間、ベンチャーキャピタリストとして様々なベンチャー企業に投資。2004年、サイバード代表取締役社長に就任。経営改革・事業改革の陣頭指揮をとる。2006年、CSKホールディングスの執行役員に就任。CSK-ISの代表取締役副社長、ISAO代表取締役社長を歴任。2010年1月にダン・ドミトリウ(現CEO兼CTO)とミドクラを創業、現在に至る。趣味はスポーツ全般(特にアメフト)、料理、水彩画。(写真:新関 雅士)

 一言でいえば、ネットワークの仮想化技術をソフトウエアで提供する会社だ。サーバーやストレージは既に仮想化・ソフト化され、オンデマンドでプロビジョニングができるようになっている。ネットワークもそうならなきゃいけない。逆にネットワークが仮想化されないままではクラウドの普及ペースが遅くなる。

クラウドやデータセンターのさらなる進化にネットワークがボトルネックになっているということか。

 クラウドの進展は疑いようがない。すると、雲の裏側で大量の仮想マシン(VM)が稼働するようになる。これらはすべてネットワークにぶらさがる。この時ネットワークに求められるのは拡張性や柔軟性、迅速性だ。特に、現在はハードウエアのネットワーク機器を使っているクラウドサービス事業者からネットワークに対する要望として聞こえてくるのが拡張性と耐障害性である。ミドクラのネットワーク仮想化ソフトである「MidoNet」の強みはここにある。

とすると顧客はクラウドサービス事業者になるのか。

 今はそうだ。いわゆるアーリーアダプターはIaaS(Infrastructure as a Service)を提供するクラウドサービス事業者である。この7月にKVH、8月にはノルウェーのZetta. IOがそれぞれMidoNetを採用した。この2社はいずれもクラウド基盤としてオープンソースの「OpenStack」を利用している。MidoNetはOpenStackのネットワークコンポーネントである「Neutron」のプラグインとして仮想ネットワーク機能を提供する。