サイバー防衛で戦略本部 基本法成立、五輪へ対策急ぐ
国や地方自治体にサイバー攻撃への安全対策を講じる責任を課す「サイバーセキュリティ基本法」が6日の衆院本会議で、与党などの賛成多数で可決、成立した。内閣に司令塔となるサイバーセキュリティ戦略本部を新設し、各府省に防御策などを勧告する権限を持たせる。日本への攻撃の急増が懸念される2020年の東京五輪に向けて対策強化を急ぐ。
戦略本部は官房長官が本部長を務め、国家安全保障会議(NSC)やIT総合戦略本部などと連携してサイバー攻撃への対策を練る。政府機関が攻撃を受けた場合、資料提出を求めたり防御体制の改善を勧告したりできる。電力会社や金融機関など民間の重要インフラ事業者には、政府の対策強化に協力するよう努力義務を課す。
政府は05年に内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)を設置してサイバー攻撃に対応してきたが、法的根拠がなく権限が弱かった。司令塔の設置により政府全体の体制強化につなげる。
政府は戦略本部の設置を機に、サイバー攻撃対策を加速する方針だ。13年度の政府機関への不正アクセスは12年度の5倍の約508万件に達している。攻撃の97%は海外からで、特にサイバー空間への進出を強めている中国からの発信が多いとみており、安全保障上の脅威になりつつある。
サイバー攻撃は五輪開催国に集中する傾向がある。12年のロンドン五輪は大会期間中に2億回以上の攻撃があったという。政府は東京五輪に向けて防御態勢に危機感を強めている。