2日前に事務所のお客さんの紹介で少年事件(まだ被疑者段階)を国選弁護人として受任してほしい、という依頼があったので、国選弁護人として受任しようと思ったところ(いわゆる「持ち込み国選」)、結局受任できなかった、という経験をしたので、その顛末を書いてみたい。


 大阪弁護士会では、個人的なつながりから弁護士を指定して国選弁護人として選任されるには、刑事弁護委員会の承認を得なければいけないので、「申入書」に「事前に少年の母親から『逮捕された場合には少年事件として受任してほしい』という相談があった」など事情を書いて提出したのだけど、本日、刑事弁護委員会から「昨年末に審査基準が変わって、『逮捕前に直接被疑者(少年)と面識がない場合には法テラスに推薦しない(つまり国選弁護人として選任されない)』という連絡があった。


 国選弁護人の場合であっても、自分の指定した弁護士を国選弁護人として選任することを禁止する憲法上、刑事訴訟法上の規定は無いはずである。しかし、私選弁護人を選任する経済的な余裕の無い被疑者、被告人は、「弁護人報酬を払う余裕がないけれど頼みたい弁護士がいる」という場合でも、その弁護士を国選弁護人として選任してもらうことが原則としてできない。ただし、例外的に、直接面識がある場合には、国選弁護人として選任されることが可能だ、という運用になっている。


 なぜ直接面識がないとしても個人的なつながりのある方からの国選弁護人選任が禁止されるのか、理解し難いので、大阪弁護士会の刑事弁護委員会がどのような意図で審査基準を変更したのか質問してみた。すると、近年の弁護士間の過当競争により、警察の留置場、拘置所に出向いて、被疑者・被告人に対し営業をする弁護士がおり、また、そうして選任された弁護人が適切な活動を行わない、という、いわゆる「事件漁り」の事例が報告されている、というのが主な理由のようだ。


 東京の弁護士に聞くと、東京では「事件漁り」はもっとひどく、大阪のように逮捕前に直接面識がある被疑者・被告人であってもほぼ国選弁護人として選任されることは不可能のようだ。「事件漁り」を防止するためには仕方がないとはいえ、現状のように私選弁護人を依頼する経済的余裕がない人の場合、ほぼルーレットのような運任せで弁護人が決まってしまう制度は、改善しなければならないと思う。