「『てるみくらぶ』は、会社の規模に釣り合わないような大きな音楽イベントに協賛を続けていました。14年から大幅な赤字経営に転落していたのに昨年も協賛をやめなかったようです」(イベント関係者)

旅行会社てるみくらぶは3月27日、自己破産を東京地方裁判所に申請した。負債額は151億円。支払った旅行代金が一部しか弁済されない被害者は、9万人にのぼる。

「本当に申し訳ないと思っている。とにかくみなさんのお役に立つことだけを思って、いままでやってきたので」と謝罪会見で号泣しながら語った山田千賀子社長だったが、冒頭のコメントのように協賛という形で会社の金を音楽イベントに注ぎ込んでいたようだ。別のイベント関係者が語る。

「そのイベントはゆず、ミスチルなど大物ミュージシャンが参加する音楽イベント『Golden Circle』。ある音楽プロデューサーが企画したもので、山田社長は彼を通してイベントを知るようになったそうです」

島根県出身で、神奈川県の大学を出て旅行代理店に就職後は添乗員として活躍し、32歳の若さで独立して社長に。バリバリのキャリアウーマンだったという山田社長だが、いっぽうでこんな話もあった。

「ミュージシャン好きが高じて、音楽イベントの協賛も社長が先頭に立って10年から始めたようです」(前出・別のイベント関係者)

そのイベントの“ウリ”はライブの前に旅行商品が当たるというものだった。山田社長は、ミュージシャンのなかでも特にユーミン(63)の大ファン。同世代でカリスマのユーミンは憧れの人で、少しでも近づきたいという思いが、13年1月3日のユーミンの40周年コンサートへの協賛として結実する。

「武道館で行われたイベントは大掛かりで、薬師丸ひろ子やムッシュかまやつ、細野晴臣など大物が集結。社長もその日はユーミンに挨拶するために会場に来ていたようです」(別のイベント関係者)

てるみくらぶはイベントにどれくらいの“出費”をしていたのだろうか。この音楽イベントに関わっていたある関係者がこう明かしてくれた。

「ざっと見積もって7年で3億円くらいではないでしょうか。てるみくらぶの破綻で、イベント参加経験のあるミュージシャンのなかには、被害者に対して心苦しいと思っている人もいると聞きます」

7年間にわたってイベントに協賛し続けていた事実は、今後のてるみくらぶの破たん処理にどんな影響をあたえるのだろうか。破産手続きの申立代理人弁護士の柴原多氏に聞いた。

「今後、管財人が、資産をお金に変えて負債を確定する作業をします。しかし多い年で宣伝費が20億円を超えているのは腑に落ちないですね。経営が立ち行かなくなっているのに個人的関係だけで山田社長がお金を出しているなら問題があると思いますが、これからの調査次第となります」

ユーミンの所属事務所に山田社長との関係について聞くと、「個人的な関係はありません」とのことだった。社長が、会社の金で個人の夢を叶えようとした行為が破たんの一因だったとしたら、被害者の怒りはさらに強まることだろう。