京速凍結への文科省的寝言

「仕分け」の結果、「京速」は事実上の凍結になった。

次世代スパコン、事業仕分けで事実上の「凍結」と判定

このプロジェクトには言いたいこと山盛りあって、既に何度か書いている。まぁ一言で言えば、「凍結ざまぁ」なんだけど。

リンク先の記事には「文科省関係者」が寝ながら言ったと思われる言葉が出ている。これが件のプロジェクトの問題点を端的に表している。

私が「寝言」だと言っているのは、

文科省の関係者の中には、事実上の凍結について「長い目で見ると国内のIT業界にとって重大な損失。次世代スパコンの心臓部となるチップの開発技術は、今後、クラウドコンピューティングなどあらゆる分野でも活用されていくもの。凍結されれば、中長期的に見て国内のIT業界におけるかなりの利益を海外に流失することに等しい」とする声もある。

これだ。実はこの言葉(の背景)こそが、件のプロジェクトの最大の問題点だ。

どういうことかと言えば、これはプロジェクトを

特盛り

にしてしまったとゆーこと。

そもそも、件のプロジェクトは「理研のスーパーコンピュータ調達」なのか、「世界最速コンピュータを作る」ことなのか、目的がはっきりしてなかった。富士通やNECを混ぜて、言い訳にGRAPEを混ぜたりして、何かの研究プロジェクトに見えていたのだけど、いつの間にやら「10PFlops」で「世界一奪還」とか、意味不明のものになってしまった。

富士通とNECとGRAPEのアーキテクトが一同に会して設計したら、どんなカオスで斬新なアーキテクチャが出来るかと思っていたら、いつの間にやら富士通一社になり、

高速計算用SPARCと
InfiniBandの速いやつ

を作るプロジェクトに成り下がってしまった。いや、細かい部分はいろいろあるだろうが、乱暴に言ってしまえば技術的に存在するハードルはそこでしかなく、後は単なる物量の問題になってしまった。

もちろん「物量」ってのはある程度の規模を越えればそれだけで技術的革新が必要なものではあるし、簡単なもんじゃないと思うけれど、特にこれと言って凄い革新的なものを作るわけじゃない。まぁ逆に言えば、それだけ確実なプロジェクトに整理されて不透明な部分が減ったと言えなくもないけど。

で、さっきの「寝言」に戻ると、これのどこが寝言かと言えば、「クラウド」がどーだこーだなんて話は、プロジェクト当初には何も言われてなかったとゆーこと。それを「だったかも知れないのに」ってのは、

小学生の負け惜しみ

と同じレベルだ。当初盛り込んでもいない、後づけの「期待される波及効果」に対して、負け惜しみを言っているわけだ。

これは、プロジェクト当初からあったことで、最初の方で書いたように、これは「調達」なのか「開発」なのか、また「開発」であるなら何を目標としたものなのか、そういった

プロジェクトの目指すべき方向

がまるで定まっていない上に、後から後から「あれもやってみましょう、これもやってみましょう」的に「目標」がやたらに増やされて、いったい何のためのプロジェクトなのかわけがわからなくなってしまっていた。その上に「クラウドの技術に」とか、どんだけ後づけの理由つければ良いかと。

人が何かに理由づけする時、確固とした中心となる理由がない時には、理由の数が増える傾向にある。目標が明確で、そこに至る経路がはっきりしている時は、理由も絞られる。そして、その絞られた理由は説得力があるものだ。だから、「理由」なんてのは少ない程良いし、少ない程強いものだ。そういったものの有ることが、計画の「説得力」となる。

逆に「理由」が「あれもこれも」と並んでいるものは、それだけ目標が曖昧であり、その「理由」もいい加減なものなことが多い。と言うか、それぞれの理由が弱いものだから、「数で勝負」に来ているわけだ。「言い訳」はいっぱい並ぶものだし、「言い訳」には「説得力」はない。あくまでも、その場しのぎだ。

そういったことを考えれば、件のプロジェクトのダメさ加減がわかるだろう。「あれのためです、これのためです」が大量に並んで、さらに中止の時にまでつけ加えられる。その、

どんどん理由がくっつく

ということが、件のプロジェクトの最大の問題だったわけだ。

もちろん大きなプロジェクトなんだから、波及効果は小さくないだろう。でも、プロジェクトの目標は副産物にあるわけじゃない。そこを平気ではき違えた発言が出て来るところに、「京速」のダメさがある。

PS.

だいたい、そんなに波及効果が期待出来ることだったら、何も国が金出さんでも、普通に「商品開発」してもペイ出来るはずだよね。「商品開発」ではペイする見通しが立たないからこそ、国の金が必要なんだし。

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