英・最重要カウンターカルチャー「レイブ」。音楽に溺れ、自由を求め抵抗した90年代の若者たち。写真集『Exist to Resist』

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1980年代後半のイギリス。がらんどうの倉庫や郊外の廃屋、田舎の農場では“ある文化”が生まれていた。がんがんに鳴るクラブミュージック、ドラッグをキメ踊り狂う大勢の若者。そう、「レイブ」だ。

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当時、“鉄の女”・保守派のサッチャー政権が施した金融規制緩和により富裕層と労働者階級の格差が生まれ、多くの若者が職を失った。そんな路頭に迷った者たちが現実を忘れるかのように集まったのが、レイブのはじまりだった。

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 今年5月、レイブシーンの誕生から衰退までをドキュメントした写真集『Exist to Resist(イグジスト・トゥー・レジスト)』が出版される。作者は“レイブの目撃者”でイギリス人写真家のマシュー・スミス(Matthew Smith)。彼が89年から97年までの8年間で撮り溜めた写真には、「自由を求め、政府に抵抗する若者の姿」がある。

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 世界最大級の野外フェス・グラストンベリーでの一枚は、ヒッピーな家族に連れて来られた子どもの姿。圧巻のでべそだ。

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あるいは車の屋根に積んだサウンドシステムを前に踊る女性に、廃トンネルで開かれたパーティーの様子。

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 ドラッグの蔓延や抵抗運動を懸念した政府が94年に制定した「クリミナル・ジャスティス・アクト(いわゆる“レイブ禁止法”)」にもめげず、若者たちが社会への鬱憤(うっぷん)やエネルギー発散の場として守り抜いた「レイブ」が鮮明に写し出されている。

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 ここに写る若者たちはただのパーティー野郎とは同じではない。秩序という名の元で振るわれる政府からの弾圧に対し、自由を求め、抵抗した若者たちだ。
 あれから20年の月日が経ち、ますます混迷を極める2017年にて。当時の若者の姿が現代の若者たちに訴えかけてくるものは、決して少なくないはずだ。

Matthew Smith

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All images via Matthew Smith
Text by Shimpei Nakagawa
Edited by HEAPS

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