ことしもカラーの図録をいただきましたが、掲載作品名と実際に出品されている作品との間に異同が少なからずあり、それについて触れながら以下の記述を進めます。
2013年を最後に「秋季展」を取りやめ、それ以降は春に年1度の開催となっている「北海道抽象派作家協会展」。
ことしの同人は13人。14年に同人になった能登智子さんが亡くなり、あらたに田中季里さんが加わり、プラスマイナス・ゼロです。
ただし、同人のうち、創立メンバーである佐々木美枝子さんはご高齢のため出品せず、鈴木悠高さんの作品も、図録には「Drawing」という題も記されていますが、会場には見当たりません。
今回、同人以外からの推薦作家は3人のみです。
左は丸藤真知子さん。
この数年、ものすごい勢いで作品を発表している丸藤さんは「ホダの洞 I」(F30)「ホダの洞 II」(F120)「ホダの洞 III」(同)の3点を出品しています。
中央は後藤和司さん。
図録には「回想<記憶の断片>」ミクストメディア S20 ×9とありますが、このほかに「回想 I」「回想 II」という小品が左右に展示されています。
後藤さんの作品は、おびただしい行為の集積が画面に刻印されていることが多かったのですが、作風も転換期にあるのかもしれません。
あらたに同人になった田中季里さんの作品「walk the sea」が右側です。
田中さんは、団体公募展には属さず、かといって個展などを札幌の各所で発表したり大型のグループ展に出したりすることもなく、ギャラリーたぴおが2016年に事実上の閉鎖となるまで、そこでのグループ展に黙々とプリント作品を発表してきた若手です。
拡大してみると…。
根気よく沈黙を紡いでいる、という印象を持ちました。
林教司さんは岩見沢市栗沢町と札幌の双方を拠点として活動する一方、ギャラリーたぴおのオーナーとしても奮戦していましたが、昨年、ギャラリーから手を引き、喫茶店のマスターに転じました。
中央バスターミナル地下の「レ・ノール」です。
今回、図録には、「 」油彩 180×180 とだけ書かれています。
写真の左側です。
右側の、縦長の作品には「現身(うつしみ)」という題がついていました。
どちらも暗い色の抽象画で、じっと見ていると吸い込まれそうなほど、深みのある画面です。
どうやったらこの深さが表現できるのか、不思議でなりません。
会場に並んでいる作品のなかでも、惹かれた作品のひとつです。
右側は、推薦作家の堅田智子さん(苫小牧)の作品だと思います。
堅田さんは「message I」「「message II」「message III」(以上F100)と「風の色 I」「風の色 II」(以上SM)の計5点の油彩を出しています。
左は2014年に同人の仲間入りをした宮部美紀さん(石狩)の水彩画「流れる」。F60のうちの1点だと思います。
宮部さんはほかにコラージュも2点出しています。
右側は推薦作家の田中郁子さん(日高管内浦河町)。
田中さんは「No.52 蠢」「No.52 流」「No.52 溢」というF100の油彩を3点出品しています。
推薦作家の木内弘子さんの作品。
木内さんは「はじける」「はじまる」「オアシス」(以上F100)と「春」「希望」(以上F3)の、計5点の油彩を発表しています。
暖色の地に、青や紫、白からなる楔形の図形が差し込まれているような図柄の抽象絵画です。
推薦作家は、木内さんと堅田さんが新道展会友、田中さんが会員です。
いずれも、理知的に構図を構築していくというよりも、自らの思いを画面に投じていくという感じを、筆者は受けましたが…。
後ろの右側にあるのは小川豊さん(小樽)の油彩「心のひだ」。
図録には「F100(2枚組)とありますが、会場には小品が11点も並び、ちょっとした平面インスタレーションの趣です。
作者が「心のひだ」という半円形の模様が、ひたすら反復され増殖していくようすは以前から変わっていませんが、地の色に少し変化がみられるようです。
昨年に続き唯一、巨大なインスタレーションを発表しているのが苫小牧の田村純也さんです。
「漲影」という題で、図録には「550×230×150cm」とあります。素材は記載がありません。
森のようにも、みなぎるエネルギーのようにも感じられますが、そのあたりは自由に見てよいのでしょう。
背後に、木内さんと小川さんの作品が並んでいるのが見えます。
2014年に同人に加わった若手の宇流奈未さんは「stardust」と題したパステル・アクリル。90×70センチの3枚です。
宇流さんといえば、新道展で墨によるモノトーンのダイナミックな作品の印象が強いですが、今回は「カラフルな作品に取り組んでみたいと思い」、画風が一変しました。
図録には
「パステルを少し変わった方法で使っていて、透明感と発色、動きを意識して表現してみました。広大な宇宙空間の星々のイメージを感じていただけるとうれしいです」
と文を寄せています。
三浦恭三さんは「連環 1」から「連環 3」まで、F60の油彩を3点出品。
ほかに小品も2点あります。
円や矩形を組み合わせて軽快な画面を構築する三浦さんですが、以前よりも、明度の高い部分が少なくなってきています。
また「連環 2」は、中央の色が濃い矩形の部分に、スクラッチでつくったような細かい痕をたくさん入れており、新たな試みといえそうです。
佐々木さんとともに創立メンバーである今荘義男さん(岩見沢市栗沢町)の「古里」シリーズ。
図録には3枚組とありますが、会場には4点ありました。
マチエールに工夫をこらし、抑制された色調で、渋い空間を作りだしています。
2017年4月18日(火)~23日(日)午前10時~午後5時(初日午後1時~、最終日~午後4時)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
関連記事へのリンク
■第43回北海道抽象派作家協会展 (2016)
【告知】第42回北海道抽象派作家協会展 (2015)
■第41回北海道抽象派作家協会展 (2014)
■北海道抽象派作家協会秋季展 (2013)
【告知】第39回北海道抽象派作家協会展 (2012)
・2011年の告知
■第37回(2010年) ■続き
■第三十三回北海道抽象派作家協会秋季展 (2009年10月)
■北海道抽象派作家協会 同人と2009年展推薦者による小品展 (2009年7月)
■第36回北海道抽象派作家協会展 ■続き ■続々 (2009年4月)
■第32回北海道抽象派作家協会秋季展(2008年9、10月)
■第35回展(2008年5月)
■第34回
■第33回
■第32回
■第31回
■03年秋季展(画像なし)
■第30回(画像なし)
■02年の秋季展(画像なし)
■第29回
■01年の秋季展
■第28回
・地下鉄東西線「バスセンター前」9番出口から約300メートル、徒歩4分
・ジェイアール北海道バス、中央バス「サッポロファクトリー前」から約510メートル、徒歩7分=札幌駅前、時計台前から現金のみ100円で乗れます
・東西線「菊水駅」1番出口から約650メートル、徒歩9分
・中央バス「豊平橋」から約850メートル、徒歩11分
(市民ギャラリーに駐車場はありませんが、周辺にコインパーキングはいくつかあります)
2013年を最後に「秋季展」を取りやめ、それ以降は春に年1度の開催となっている「北海道抽象派作家協会展」。
ことしの同人は13人。14年に同人になった能登智子さんが亡くなり、あらたに田中季里さんが加わり、プラスマイナス・ゼロです。
ただし、同人のうち、創立メンバーである佐々木美枝子さんはご高齢のため出品せず、鈴木悠高さんの作品も、図録には「Drawing」という題も記されていますが、会場には見当たりません。
今回、同人以外からの推薦作家は3人のみです。
左は丸藤真知子さん。
この数年、ものすごい勢いで作品を発表している丸藤さんは「ホダの洞 I」(F30)「ホダの洞 II」(F120)「ホダの洞 III」(同)の3点を出品しています。
中央は後藤和司さん。
図録には「回想<記憶の断片>」ミクストメディア S20 ×9とありますが、このほかに「回想 I」「回想 II」という小品が左右に展示されています。
後藤さんの作品は、おびただしい行為の集積が画面に刻印されていることが多かったのですが、作風も転換期にあるのかもしれません。
あらたに同人になった田中季里さんの作品「walk the sea」が右側です。
田中さんは、団体公募展には属さず、かといって個展などを札幌の各所で発表したり大型のグループ展に出したりすることもなく、ギャラリーたぴおが2016年に事実上の閉鎖となるまで、そこでのグループ展に黙々とプリント作品を発表してきた若手です。
拡大してみると…。
根気よく沈黙を紡いでいる、という印象を持ちました。
林教司さんは岩見沢市栗沢町と札幌の双方を拠点として活動する一方、ギャラリーたぴおのオーナーとしても奮戦していましたが、昨年、ギャラリーから手を引き、喫茶店のマスターに転じました。
中央バスターミナル地下の「レ・ノール」です。
今回、図録には、「 」油彩 180×180 とだけ書かれています。
写真の左側です。
右側の、縦長の作品には「現身(うつしみ)」という題がついていました。
どちらも暗い色の抽象画で、じっと見ていると吸い込まれそうなほど、深みのある画面です。
どうやったらこの深さが表現できるのか、不思議でなりません。
会場に並んでいる作品のなかでも、惹かれた作品のひとつです。
右側は、推薦作家の堅田智子さん(苫小牧)の作品だと思います。
堅田さんは「message I」「「message II」「message III」(以上F100)と「風の色 I」「風の色 II」(以上SM)の計5点の油彩を出しています。
左は2014年に同人の仲間入りをした宮部美紀さん(石狩)の水彩画「流れる」。F60のうちの1点だと思います。
宮部さんはほかにコラージュも2点出しています。
右側は推薦作家の田中郁子さん(日高管内浦河町)。
田中さんは「No.52 蠢」「No.52 流」「No.52 溢」というF100の油彩を3点出品しています。
推薦作家の木内弘子さんの作品。
木内さんは「はじける」「はじまる」「オアシス」(以上F100)と「春」「希望」(以上F3)の、計5点の油彩を発表しています。
暖色の地に、青や紫、白からなる楔形の図形が差し込まれているような図柄の抽象絵画です。
推薦作家は、木内さんと堅田さんが新道展会友、田中さんが会員です。
いずれも、理知的に構図を構築していくというよりも、自らの思いを画面に投じていくという感じを、筆者は受けましたが…。
後ろの右側にあるのは小川豊さん(小樽)の油彩「心のひだ」。
図録には「F100(2枚組)とありますが、会場には小品が11点も並び、ちょっとした平面インスタレーションの趣です。
作者が「心のひだ」という半円形の模様が、ひたすら反復され増殖していくようすは以前から変わっていませんが、地の色に少し変化がみられるようです。
昨年に続き唯一、巨大なインスタレーションを発表しているのが苫小牧の田村純也さんです。
「漲影」という題で、図録には「550×230×150cm」とあります。素材は記載がありません。
森のようにも、みなぎるエネルギーのようにも感じられますが、そのあたりは自由に見てよいのでしょう。
背後に、木内さんと小川さんの作品が並んでいるのが見えます。
2014年に同人に加わった若手の宇流奈未さんは「stardust」と題したパステル・アクリル。90×70センチの3枚です。
宇流さんといえば、新道展で墨によるモノトーンのダイナミックな作品の印象が強いですが、今回は「カラフルな作品に取り組んでみたいと思い」、画風が一変しました。
図録には
「パステルを少し変わった方法で使っていて、透明感と発色、動きを意識して表現してみました。広大な宇宙空間の星々のイメージを感じていただけるとうれしいです」
と文を寄せています。
三浦恭三さんは「連環 1」から「連環 3」まで、F60の油彩を3点出品。
ほかに小品も2点あります。
円や矩形を組み合わせて軽快な画面を構築する三浦さんですが、以前よりも、明度の高い部分が少なくなってきています。
また「連環 2」は、中央の色が濃い矩形の部分に、スクラッチでつくったような細かい痕をたくさん入れており、新たな試みといえそうです。
佐々木さんとともに創立メンバーである今荘義男さん(岩見沢市栗沢町)の「古里」シリーズ。
図録には3枚組とありますが、会場には4点ありました。
マチエールに工夫をこらし、抑制された色調で、渋い空間を作りだしています。
2017年4月18日(火)~23日(日)午前10時~午後5時(初日午後1時~、最終日~午後4時)
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
関連記事へのリンク
■第43回北海道抽象派作家協会展 (2016)
【告知】第42回北海道抽象派作家協会展 (2015)
■第41回北海道抽象派作家協会展 (2014)
■北海道抽象派作家協会秋季展 (2013)
【告知】第39回北海道抽象派作家協会展 (2012)
・2011年の告知
■第37回(2010年) ■続き
■第三十三回北海道抽象派作家協会秋季展 (2009年10月)
■北海道抽象派作家協会 同人と2009年展推薦者による小品展 (2009年7月)
■第36回北海道抽象派作家協会展 ■続き ■続々 (2009年4月)
■第32回北海道抽象派作家協会秋季展(2008年9、10月)
■第35回展(2008年5月)
■第34回
■第33回
■第32回
■第31回
■03年秋季展(画像なし)
■第30回(画像なし)
■02年の秋季展(画像なし)
■第29回
■01年の秋季展
■第28回
・地下鉄東西線「バスセンター前」9番出口から約300メートル、徒歩4分
・ジェイアール北海道バス、中央バス「サッポロファクトリー前」から約510メートル、徒歩7分=札幌駅前、時計台前から現金のみ100円で乗れます
・東西線「菊水駅」1番出口から約650メートル、徒歩9分
・中央バス「豊平橋」から約850メートル、徒歩11分
(市民ギャラリーに駐車場はありませんが、周辺にコインパーキングはいくつかあります)