政府と東京電力の福島第一原発の廃炉に向けた中長期対策会議が27日、開かれ、原子炉建屋からの放射性物質放出は先月の7分の1に減ったことなど、作業の進捗(しんちょく)状況を明らかにした。放射能汚染水を海に放出できるぐらいにまで浄化できる設備を9月までに新たに設置。3月上旬に工業用内視鏡による2号機格納容器内の2度目の調査をするという。
炉心溶融事故を起こした1〜3号機の原子炉建屋からの新たな放射性物質の大気への放出量は毎時約1千万ベクレルで、先月の7分の1に減った。放出源のほとんどが、爆発で原子炉建屋が激しく破損した状態がそのままになっている3号機からの放出だった。津波で破損した大物搬入口を塞いだことなどが理由としている。
対策会議では、東電が東芝製浄化装置の多核種除去設備「アルプス」の基礎試験結果を公表。現在の浄化装置はセシウムの除去が主だが、セシウム以外の核種も取り除くことができるという。試験ではガンマ核種45種類で、法的に海に放出できる限度以下に減らすことができた。
ただし東電は海への放出の判断は地元自治体や漁協の理解を前提にしている。このため、当面は汚染水の保管のため、4月までに発電所内に新たに4万トン分のタンクを増設。さらに、事故直後に設置した小型タンクを大型タンクに作り替えることで2万2千トン分の容量を増やす予定だという。
また、廃炉に向けた準備として、1月19日に実施した2号機格納容器内の内視鏡調査を3月上旬に実施する。前回よりも長いケーブルを使って、前回測れなかった格納容器にたまっている水位を測る。
同じ日に開かれた政府と東電の研究開発推進本部では、廃炉の機器開発のために、破損したとみられる圧力抑制室の模型づくりや、溶けた燃料の分析施設の必要性が、メーカーや日本原子力研究開発機構から指摘された。(坪谷英紀)