東京電力福島第一原発の事故で全住民が避難を強いられている福島県浪江町が、住民に行ったアンケートで、3人に1人が町に「戻らない」と答えた。「戻りたい」とする人も、帰還まで待てる期間は「3年以内」が半数以上を占め、つなぎ留められる時間は長くないことがわかる。
アンケートは、町の復興計画策定に役立てるのを目的に昨年11〜12月に実施。高校生以上の1万8448人に調査票を送り、約6割の1万1001人から回答を得た。
町に「戻りたい」と答えたのは64%。そのうち約7割は「放射線量低減と生活基盤の整備、他の町民がある程度戻る」ことがそろうのを条件にした。
「戻らない」と答えたのは33%。理由(複数回答)として、「放射線量低下が期待できない」「事故が収束しない」「生活基盤の整備が難しい」などが多い。「戻らない」としながら、その半数以上は「町の除染、復旧・復興が必要」とし、たとえ自分は帰らなくても故郷への思いは強いことがうかがえる。
「戻りたい」人に、帰還までどれくらい待てるか尋ねたところ、震災後「1〜2年以内」「2〜3年以内」とも約28%ずつで、合わせて6割近い。一方で、「いつまででも待つ」人が約11%いた。
野田政権は、年間放射線量が20ミリシーベルトを下回るのに5年以上見込まれる地域を「帰還困難区域」、数年程度の地域を「居住制限区域」とする方針で、浪江町の一部もこれらに該当するとみられる。
大震災があった昨年3月11日時点の浪江町の人口2万1434人のうち約1万4千人が県内に、約7千人が県外に避難中。町外に住民票を移した人は約千人にのぼる。(小寺陽一郎)