東京電力福島第一原発の事故による自主避難者らへの損害賠償をめぐり、政府は22日、原子力損害賠償紛争審査会がまとめた賠償指針の対象から外れた福島県の市町村の住民ら向けに、補償措置を講じる方向で検討に入った。指針への反発が相次いだため、追加の対策を迫られた形だ。
審査会は今月6日、政府が指示した避難地域周辺の福島県内23市町村について、自主避難した人も残った人もすべて賠償対象とする追加指針を策定。しかし対象から外れた県南、会津、南会津地方の住民から不満の声が出ていた。
22日に福島県の佐藤雄平知事と関係市町村の首長らは文部科学省を訪ね、賠償対象を福島県全域のすべての住民に広げるよう中川正春文科相に要望した。
中川氏は「このままではダメだと思っている。関係閣僚と相談し、要望に応えられる枠組みを知恵を出して作りたい」と強調。東電による賠償ではなく、国が税金で補償する方法を含めて、具体策の検討を始めたことを明らかにした。
住民の不満を受け、21日の審査会では線引きの妥当性を改めて議論したが、指針の見直しは当面必要ないとの意見で一致していた。
佐藤知事らは枝野幸男経済産業相や与野党幹部らも訪ね、賠償金の仮払い法に基づいて福島県に創設が認められている基金をつくり、被害者救済を急ぐことも要望。枝野氏は「新たな支援措置を早急にとりまとめ、年明けの早い段階で政府の方針を示したい」と応じた。基金は自主避難者の救済や除染費用、風評被害対策などの原資にする目的で設立できるが、東電の賠償に一本化したい政権は「基金は不要」との立場をとってきた。(木村裕明)