東京電力は福島第一原発にたまっている放射能汚染水を処理して海に放出する計画を検討していたが、8日、放出を当面は見合わせることを明らかにした。放出を盛り込んだ計画書を経済産業省原子力安全・保安院に提出する予定だったが、漁業団体の抗議に配慮した格好だ。
当初の計画では、1〜4号機のタービン建屋などにたまった汚染水をセシウム吸着装置などで浄化し、基準以下の放射性物質の濃度にして放出する予定だった。しかし、8日夜に保安院に提出した中期的な施設運営計画では、放出の記述は削除され、盛り込まれなかった。
事前に計画の説明を受けた全国漁業協同組合連合会(全漁連)の服部郁弘会長が8日午前、東京電力本社を訪れ、「安易な海への放水は容認できない」と強く抗議。西沢俊夫社長に手渡し、処理水の放出計画の撤回を求めていた。
原子力・立地本部の松本純一本部長代理は「処理水の取り扱いについては、放出するともやらないともまだ決定できていない。全漁連からの意見もふまえて、今後どうするか検討したい。ただ、半永久的にタンクを作りつづけて処理水をため続けるのは現実的ではないと考える」と話した。
処理水の保管タンクにはすでに計約10万トンたまっている。来年3月には、タンクがいっぱいになる見込み。1日400トンとみられる建屋への地下水流入は続いており対応に苦慮している。原発内での再利用や地下水の流入防止策も検討するものの、限度があるという。