東京電力が20年以上にわたり年平均で約20億円の予算を組み、東電の原発などがある3県の関係自治体に総額四百数十億円の寄付をしたことが分かった。原発の発電量などに応じて「地元対策資金」を配分する予算システムになっており、自治体側がこれに頼ってきた構図だ。
原子力施設の立地自治体に入る電源三法交付金、核燃料税の金額は公表されているが、東電が原則非公表としている寄付金の全体像が判明したのは初めて。東電幹部は「原発の立地などで自治体の理解を得たいという思惑もあり、癒着と批判されるのを避けたかった」と証言している。
複数の東電幹部によると、立地自治体への寄付は、福島第一原発の建設が始まった1960年代からあったという。1990年前後から昨年まで、東電本社は毎年、年度初めに10億〜20億円の寄付金の予算を組んできた。必要に応じて増額することも多く、年平均にすると20億円以上になる。自治体首長らの要望などを審査し、役員会の決裁を得て支出する仕組みだ。金額は、県ごとの原発の発電量などを目安に配分。寄付が多額な場合は数年に分割して予算計上し、支払うこともあったという。
東電が寄付した自治体は、福島県と、福島第一、第二原発の立地4町など▽新潟県と、柏崎刈羽原発が立地する2市村など▽青森県と、東電出資企業が使用済み核燃料の中間貯蔵施設を設置予定の同県むつ市など、だという。
四百数十億円の行方について朝日新聞が関係自治体に取材したところ、公共施設の建設費などへの寄付金は過去約20年間で計約347億円に達した。福島県の関係自治体分が計約199億円、新潟県分が計約130億円、むつ市が計約18億円。青森県では、業界団体「電気事業連合会」が核燃料サイクル事業の推進のため、同県の関連財団法人に89〜2009年に支出した寄付金計170億円のうち約50億円を負担したことも判明した。残る数十億円の使い道は明らかになっていない。
東電の寄付では、福島県のサッカー施設「Jヴィレッジ」(130億円)の寄贈や新潟県柏崎市と刈羽村の公園施設整備費(計100億円)など、大型施設への寄付などは例外的に公表されている。これら以外にも福島県双葉町のステーションビル建設費(7.5億円)、同県楢葉町の認定こども園建設費(10億円)などが確認された。
東電広報部は「寄付は社会貢献が目的なので、個々の案件について公表は控える。相手先に公表の意志が強い場合や大きなプロジェクトの場合は、公表したこともある」としている。(編集委員・市田隆、藤森かもめ)