東京電力福島第一原発1号機の格納容器の圧力を下げることができなかった場合に発生が想定される事象として、原子力安全・保安院が、敷地境界での被曝(ひばく)線量が「数シーベルト以上」に達すると見込んでいたことが、情報公開法に基づき開示された同院の内部文書で分かった。7シーベルトが全身被曝の致死量と言われており、敷地内では人が生きていられない状況になる可能性が政府部内で検討されていたことになる。
この文書は「1号機において耐圧ベントができない場合に想定される事象について(案)」と題され、保安院が3月12日午後1時ごろに作成した。
当時、1号機の格納容器の内部の圧力は750キロパスカルで、設計上の使用圧力を大きく超えていた。格納容器の破裂を防ぐため、東電は午前中から、内部のガスを外部に放出する「ベント」と呼ばれる作業を始めたが、弁を開けるのに手間取っていた。
保安院の文書は「ベントができない状態が継続する場合、約10時間後(午後11時)に大量の放射性物質が放出される」「気象条件によっては、発電所から3〜5キロの範囲において著しい公衆被ばくのおそれがある」としている。
この文書は3月12日午後2時2分に保安院から原子力安全委員会にファクスで送られた。実際には午後2時半を境に格納容器の圧力は下がり、この文書が心配したような大量放出は避けられ、東電は「ベントに成功した」と発表した。また、敷地境界(正門付近)での実際の線量は15日午前9時に記録した毎時11.93ミリシーベルト(約0.01シーベルト)が最高値だった。(奥山俊宏)