ジョブズ辞任 なぜ「今」なのか?

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    ジョブズ辞任 なぜ「今」なのか?

    「今」である理由はあるのでしょうか?

    ジョブズ氏のCEO辞任。びっくりはしましたが、ニュースを聞いた時「ついにきたか」という気持ちの方が大きかったと思います。病気療養などで何度も現場を離れていたことからも、いつ辞任してもおかしくないという雰囲気が周りにはずっとありました。驚いたのは辞任のニュースではなくて、そのニュースが「」流れたというところではないでしょうか。なぜ「今」辞任したのか? 体のことを考えてかもしれません、前々から決まっていたのかもしれません。いや、それとも「今」という時がAppleにとって何か動きのある重要な時期だから、なのでしょうか?

    「今」とはもちろん、ニュースが流れた日付をさしているのではなく、Appleという会社にとっての「今」という時期という意味。もしAppleが、ジョブズ氏が去った後生き残っていくことだけを考えていたのなら、ジョブズ氏はもっと早くに辞任できたでしょう。つまり、生き残るだけじゃなくこれからさらに大きな繁栄を遂げるために、ジョブズ氏は「今」まで辞任することができなかったのです。

    Appleは現在、かつてないくらい力がみなぎっています。1ヶ月ほど前、Appleは史上最大の売上高をたたき出しました。285億7000万ドルの収益、利益は昨年から2倍の73億1000万ドル。ライバルであるDELLやHPの3ヶ月分の売り上げです。新製品発表があったわけでも、年末商戦の時期でも新学期が始まる時期でもなんでもない1ヶ月前に、最高記録をだしたのです。Appleは実に、現在世界で最も価値のある企業と言っても過言ではないでしょう。

    では、今から1ヶ月後には何が起きるのか。iPhoneの新モデルの登場です。米国内では大手3キャリア全てからリリースされることになります。さらに予想では、現行のiPhoneが安くなるとも言われています。これが上手くいけば、Appleは高価なヤッピー製品から、誰の手も届くみんなの製品に変貌をとげることとなります。

    だから「今」なのです。かつて無いほど売り上げを伸ばし、みんなのAppleへと変わろうとする「今」こそ、Appleが胸をはってジョブズ氏を見送れる時なのです。

    これが1ヶ月遅れてしまえば、iPhone 5はジョブズ氏の影に隠れてしまうかもしれません。今ジョブズ氏が去る事で、1ヶ月後のiPhone 5リリース時にクック氏は自分の足で立ち、ジョブズ氏の影に隠れることなく輝かしい製品とともに素晴らしいスタートをきれるでしょう。そのスタートはつまり、ジョブズ氏がいないAppleが生き残るだけでなくさらに飛躍していく大きな1歩となるでしょう。

    忘れてしまいがちですが、企業は製品を作る時に長い時間をかけます。iPhone 5も、iPad 3も、そしてすでに話されているであろうiPhone 6も。これから発表される新製品にはジョブズ氏の息がかかっています。もっともっと未来に発表されるであろう製品もその根本にはジョブズ氏がいます。特に、彼が取締役会長を務める間はまだまだ彼の姿があちこちに見え隠れするでしょう。

    ジョブズ氏辞任の「今」は彼だけでなく、Appleにとっても大きな転化となる「今」なのです。

    そうこ(Brian Barrett 米版