野田政権は30日の原子力災害対策本部で、東京電力福島第一原発から半径20〜30キロ圏の緊急時避難準備区域を一斉に解除することを決めた。対策本部の野田佳彦本部長が佐藤雄平福島県知事や対象5市町村の首長に指示し、即時解除された。原発事故に伴う避難区域の解除は初めて。
緊急時避難準備区域は、半径20〜30キロ圏で年間の累積放射線量が20ミリシーベルト未満の地域。福島県広野町の全域と、楢葉町、川内村、田村市、南相馬市の一部が対象。子どもや妊婦らは立ち入らないよう求められ、それ以外の人も原子炉が再び不安定になって放射性物質が大量放出されるような緊急事態に備え、避難や屋内退避ができるよう準備する必要があった。区域内の人口5万8千人のうち約2万6千人が域外に避難している。
政権が解除に踏み切ったのは、原子炉の冷却が安定的に進み、緊急事態が発生する可能性が極めて低くなったと判断したためだ。子どもや要介護者らの帰還や教育施設の再開、仮設住宅の建設などが認められるようになり、本格復興への第一歩となる。細野豪志原発相は記者会見で「安全に帰れるように全力で後押しする」と強調した。
ただ、水道や電気などのインフラの復旧や除染作業はこれから本格化する。帰還の完了時期は川内村が来年2〜3月、広野町は来年中をめざしているが、計画通り進むかは見通せない。