「自分が持つ奴隷の数」が分かるアプリ

自分が持っている製品やライフスタイルを入力すると、それを支えるために世界のどこで何人の強制労働者が使われているかが分かるアプリを紹介。
「自分が持つ奴隷の数」が分かるアプリ

自分の生活と「世界の奴隷」の関係がわかる。

数百年前には、自分が持っている奴隷の数を数えるのは簡単だった。ポーチに出て、労働者の数を数えればいい。しかしいまでは、何百万人もの奴隷たちが衣類や食品や電気製品を作っているのに、彼らは世界中に分散しており、姿が見えない。例えば、着ているシャツはウズベキスタン人の子どもが摘んだ綿が素材で、口にしている砂糖はブラジルの男性が収穫したサトウキビから採取したもの、使用しているスマートフォンにはコンゴ人の少年が採掘した原材料が用いられている。

そこで、自分のために何人の奴隷が働いているかが分かるアプリを紹介しよう。このアプリは非営利団体『Slavery Footprint』が作成したもので、所有する製品別および製品の生産地域別に分類して、自分が何人の強制労働者を利用しているかを教えてくれる。Slavery Footprintの創設者であるジャスティン・ディロン(42歳)はこのアプリが、知らないうちに強制労働に荷担している消費者への警鐘になってほしいと期待している。

「強制労働者とは、暴力的な脅迫によって、対価なしに労働を強制される人たちのことだ」とディロン氏は説明する。「もし逃げ出せば、彼らもしくは彼らの家族に危険が及ぶ」

ディロン氏は以前、ドキュメンタリー映画『Call + Response』を監督した。この映画は、人身売買と、ディロン氏が「2,700万人に及ぶ世界の最も汚い秘密」と呼ぶところの現代の奴隷、すなわち強制労働者がテーマだった。

この映画の噂を聞きつけた米国務省の人身売買監視対策室は、ディロン氏に対して、すでに何年も調査が行われていた『Slavery Footprint』プロジェクトを指揮する機会を提供した。情報や資金を提供し、データを有効活用する方法を考案するよう依頼したのだ。1年前のことだ。

このアプリはまず、利用者のライフスタイルと消費習慣について尋ねる。居間の広さはどのくらいか。どういった種類の食べ物が好きか。ワインは飲むか。アプリには、400を超える製品に関する情報が、ホウ砂やベリリウムからコーヒー、コーンスターチまで原材料別に収められている。各製品には、国務省の『人身売買報告書』と、米国の民間人権団体『フリーダムハウス』の指標、ほか3つの厳しく吟味されたデータに基づいて、得点がつけられている。得点は基本的に、原料を集めたり加工したりするのに使われた強制労働者の数となっている。

「スマートフォンを100台集めたら、1台につき平均3.2人以上の強制労働者が生産に利用されていることはほぼ確実だ」とディロン氏は語る。

意外なものも多い。鎮痛剤イブプロフェン配合の薬剤の得点は1.2点だ。残念なことに、マティーニ1杯でも0.9点となっている。赤ちゃん用のお尻拭きや日焼け用ベッドのような製品も、妙に合計点が高い。現在のバージョンではブランドは問題にしていないが、原料供給元はだいたい同じだという。また、将来のバージョンでは、ブランド別のスコアがわかるようにする計画だという。

将来的には、利用者の位置情報を使ってすぐ製品情報がわかるようにしたり、製品の写真を撮ると、Slavery Footprintがその企業に対して、強制労働や児童労働を利用せずに製品を生産するよう丁重に求める手紙を自動的に作成してくれる仕組みも取り入れたいという。これは、製品に「Free World」ラベルを付けるという、ディロン氏のより大きな構想の一環だ。「強制労働が利用されていないというラベルにも価値が出るようにする必要がある」

Slavery Footprintのサイトは、9月22日(米国時間)に立ち上げられた。リンカーン米大統領が奴隷解放宣言をしてから149年目にあたる日だ。『iOS』と『Andorid』バージョンも近日登場の予定。

TEXT BY Eric Blattberg
TRANSLATION BY ガリレオ -矢倉美登里/合原弘子

WIRED NEWS 原文(English)