第二回 ソーシャルメディア クリエイティブディレクター ナカヤマン。(その1) | ファッション業界転職ブログ

第二回 ソーシャルメディア クリエイティブディレクター ナカヤマン。(その1)

こんにちは。コンサルタントの池松です。
今回は、ファッション業界でソーシャルメディア・ブランディングを手掛ける
株式会社ドレスイングの代表取締役CEOで、
ソーシャルメディア クリエイティブディレクターのナカヤマン。氏がゲストです。

ファッション業界転職ブログ-01

場所は、表参道にある青山ブックセンター隣り、
フレンチ・フュージョン料理が人気の「UnCafe(アンカフェ)」。

ファッション業界転職ブログ-02

食べるサラダシェイクで、草食系男子を装っての対談です。

ファッション業界転職ブログ-03

* * * *

池松 まず、ナカヤマン。の名前の由来について、
特に「。」の意味、興味あります。

ナカヤマン。 そこからですか!(笑)

ボクは7年前に独立したんです。30歳のタイミングで。
ファッションブランドのブランド戦略業務のみを請け負う仕事でした。
はじめはフリーランスだったので、
まずは初対面で覚えていただかないといけないなと。

当時住んでいた中目黒の仲間でフットサルをやっていて、
ユニフォームにふざけて「NAKAYAMAN」と書いていたんです。

それで「ナカヤマン」がアダナになってしまっていて。
インパクトもあるし、仕事もこれでしちゃおうと(笑)

池松 「。」を付けたのは?

ナカヤマン。 ボクの師匠にあたる方で、
テレビ業界出身のプロデューサーの方に従事していた時期があるんです。
ある日、事務所に番組に出演する占い師さんが来られてたんですよ。
めちゃくちゃ当たる方で。

ご挨拶をしようと名刺を渡したら
「画数が悪い!」「一画増やしてください!」と言われて。
そもそもがフザけた名前なので
一画増やすくらい いいやと「。」を足したんです(笑)

池松 確かに一画プラスですね(笑。
今の会社の仕事内容を教えてください。

ナカヤマン。 ここ3年弱はソーシャルメディアを用いた
ブランド戦略の提供が中心ですね。

池松 ソーシャルメディアを用いたブランド戦略というと?

ナカヤマン。 フリーランス時代から、ブランドが狙う方向に合わせて
戦略を提供するブランド・コンサルタント業務をしていたのですが、
ブランディング・エージェンシーって、
どういう商売なのか、
何を提供する会社なのか正直理解されづらい。特に日本では。

3年弱前、ツイッターを始めた時に、
これはすごいセグメンテーションツールだと驚いたんです。
「フォロワー」という概念を「顧客」や「ターゲット」という概念と結びつければ、
戦略が組み立て易くなる上、理解もしてもらい易くなる、と雷に打たれた気分でした。

そこからソーシャルメディアを猛勉強して、
ブランディングのツールとしての可能性が見えたので、
これに絞ってやって行こうと決めました。

現在行っているのは、本来提供していた「ブランド戦略」を、
ソーシャルメディアを手段に組み上げたものです。
目的も明確なりますし、都度の課題も明示できるように構築しています。

ファッション業界転職ブログ-04
株式会社ドレスイング/Dre55ing Inc. http://dr55ng.jp

池松 今のクライアントのポートフォリオの中でも、
ファッション業界のクライアントは多いですか?

ナカヤマン。 7~8割ですね。

去年からサイバーエージェントさんとの共同事業で
ソーシャルメディアのセミナー/スクール事業をやっている事もあり、
ソーシャルメディアの会社と認識されることも増えました。
残り2~3割はそういう入口でお声掛け頂くクライアントで、
古巣の車業界のクライアントもおられます。

ファッション業界のクライアントでは、
雑誌社:ブランド=5:5ですね。
ソーシャルメディアのアカウント取得から始まって、
ガイドラインの策定、運営の目的設定、戦略の立案、測定指標の選択など、
基本的には皆さん12カ月契約で、しっかり関わらせて頂いています。

池松 12カ月もかけるんですね。

ファッション業界転職ブログ-05

ナカヤマン。 正直、場当たり的にソーシャルメディア運営の
リテラシーを身に付けて頂くだけなら、半年かからずに対応できます。
一方で、全体戦略ありきでソーシャルメディアに戦略の一部を担わせるという観点で行くと
12カ月でようやく功績が見えてくる頃だと思います。

当社はブランディング・エージェンシーです。
戦略ベースのお話が出来なければ、
当社のメリットを御提供できないのでお断りしている状況です。

例えば、電子書籍を念頭に置いている雑誌社と、そうでない雑誌社では、
ソーシャルメディアに担わせる業務が極端に変わります。

前者では電子書籍の認知と決済サイト、ストアへの送客が
ソーシャルメディア・アカウント育成の指標になりがちでしょうし、
後者では紙媒体の内容を補完する存在がアカウントであったりします

スケジュール感も含めて、中期的に、どういう戦略の上に成立させるかによって、
ソーシャルメディア・アカウントでやらなきゃならないことって
ずいぶん変わってくるんですよね。

ブランドにしても、eコマースを自社でやっているか、
直営店舗があるないかだけでも、ゴールやポジショニングは変わってくる。
戦略に基づいてしっかり構築するのには、12カ月くらい必要だと感じています。

池松 ブランドがソーシャルメディアをやる上で
気を付けなくてはいけないことって、ありますか?

ナカヤマン。 ブランドに限ったことではないですが、目的設定ですよね。

確かにツイッターのフォロワー数を増やした方が
タッチポイントは増えますし、情報も流れやすくなる。

というのは方法論であるツールの話で。
で、何するの?というところが無い企業が非常に多い。

露出を増やした、タッチポイントを増やしたという時に、
言いたいことが決まってなかったら、
お金でタッチポイント買おうが、
時間や労力かけてタッチポイントを生もうが、無意味です。

で、それがもともと無いなら、
ツイッターなんてやらなくていいですよっていう話ですね。

当社では、それを初めにお話するようにしています。
そうしないと、リテラシーは身に付きました、フォロワーは増えました、
一方でクライアント側は何も得してませんけど、っていう話に絶対なってしまう。

実店舗への誘導か、ECサイトへの送客か、
ブランドの世界観をファンに伝える、いわゆる場づくりに特化するのか、など
目的をまず決めていきます。

Webの世界って、先行者利益が大きいですよね。
黎明期にポジションを築いた方が、パワーブロガーになる「確率」が高かったり。
その感覚で、早くスペースを確保しなくちゃという気持ちも分かります。

でも並行して、きちんと目的決めましょうと。
同時進行でいいからちゃんと構築していきましょうという話はしています。

池松 ツイッターって日本に来て4年くらいですかね?

ナカヤマン。 そうですね、うちがやりだして3年弱くらいですね。

池松 どうやってそのツイッターのリテラシーを高めてきたんですか?

ナカヤマン。 もともとボク、ブロガーだったんですよ。
あまりブログは相性よく無かったですけど(笑)

更新していても、PV数が上がっても特に楽しくなかったんですが、
いま思うと、本業=ブランディングに生かす方法が見えなかったからだと思います。
ブランドに強いるには、しんどすぎるなと思っていたんですよね。
更新も大変だし。ピンと来てなかった。

でもツイッターを始めた時には、自身のブログはフル活用しました。
名古屋のブロガーと一緒に勉強会やセミナーを開催したり、
海外の色んなツールを試したり。

池松 じゃあ、最初は海外の文献見たりして覚えたんですか?

ナカヤマン。 そうですね。当時はリアルの友人はツイッターを始めていなくて、
海外サイトや、ブロガーさんの情報を漁ってました。
逆にいうと、知り合いじゃない人と繋がるしかなかったのが良かったのかもしれません。
その頃できた繋がりは、今でも宝物ですけどね。

ファッション業界転職ブログ-06

池松 でもそれがあって、フォロワーが1万人超えたってことですよね。

ナカヤマン。 それこそ初期だったからじゃないですか。
今始めてもそこまで行かないと思います。

池松 そこまで増えるために仕掛けたことは?

ナカヤマン。 ファッションの話題に食いつきが良くなってきたのは去年あたりからなので、
初期はブロガーコミュニティからの派生でしょうね。

当時、ブロガーに対してツイッターやフェイスブックのセミナーを
月に数回やってたんです。東京と名古屋を中心に。

知人が主催するセミナーのゲストで呼ばれたのをきっかけに、
開催する側にもなって。
フォロワーの多くはセミナーでお目に掛かった方だったりします。

ブロガーさんが「ナカヤマン。って変わった名前の人が来ましたよ」って
ブログに書いてくださって、
その読者がフォローしてくださったり。

100名を超えるセミナーもあるので、
申し訳ないのですが全員を把握している訳ではないじゃないですか。
ですから今でもスパムや店舗アカウント以外はフォロー返ししていますよ。

ファッション業界転職ブログ-07
http://twitter.com/#!/NKYMN

池松 でも1万人ってすごい数ですよね。
ソーシャルメディアの先駆者として、仕事になり始めた背景は?

ナカヤマン。 しっかりビジネスになり出したのは、
出版社さんとのパートナーシップが構築出来始めたあたりかもしれません。

外資系の出版社が電子出版を始められた頃から、
各ファッション誌に自分が思う将来的なビジネスモデルを提案して回っていたんです。
そこではソーシャルメディアの活用が
かなり重要になってくるなと思っていたので。

結果いくつかの雑誌で契約していただいて、
雑誌アカウントのソーシャルメディア戦略に関わり始めました。

最初は、ツイッターキャンペーンを中心に運営していました。
本来のターゲットである読者からチェックされるアカウントに育てないと意味がないので。

そうすると、その雑誌に出稿しているブランドが声を掛けてくださるわけです。
うちもツイッター始めたいので、
雑誌アカウントと共同キャンペーンをできないか、という風に。

当社が関わっているアカウントは、しっかり「読者」と繋がる戦略で動いているので、
出稿ブランドであれば、ターゲットが「ちゃんと重複している」前提があります。

のべつまくなしにフォロワー数をかき集めるのではなくて、
先に雑誌アカウントが繋がった「共通ターゲット」にアピールすることになるので、
そこで得たフォロワーはコアユーザーに発展していくことが多い。

あとは各キャンペーンの企画次第となりますが、
それもノウハウがきっちり積みあがって、しっかりビジネス化できています。

池松 雑誌の広告を出しているブランドがそういった手法で、
ツイッター等でお客さんをつかんでいけば、
その方がコスト的には安いから広告出さなくてもいいよって、
ある意味、対局にならないんですか?

ファッション業界転職ブログ-08

ナカヤマン。 前提として、ソーシャルメディアという存在がなかったら、
雑誌ビジネスが変わらず元気だったかと言うと、そうではないと思います。
色んな条件が変化していますから。

その前提で、紙もソーシャルメディアも包含して
メディアとして、どういうビジネスができるかを考えた方が
雑誌社としてクレバーだと思います。その形を目指した方が絶対いい。

当社は直感的に、先に雑誌社に提案に伺っていたのですが、
そういう意味ではブランドよりも先に雑誌社に提案していたお陰で
今のビジネスがあるのかもしれません。

池松 それを考えると、ブランドって今までと違って、
広告のやり方、イベント、セールスプロモーションのやり方って
変わってくる気がしますね。

ナカヤマン。 変わりますね。ひとつは、より数字で見えてきてしまう。
ある部分は見えなくてもよかった気もするんですけど。
どうしてかというと、ファッション業界って
クリエイティブに比重が大きい業界じゃないですか。

数字が見えるところが8割になっちゃうと、
数字で判断する気持ちも8割になっちゃうのが人情です。

数字で見える一方で、あえて感覚値も重視するという
非常に難しい判断が求められます。
その感覚は、特にクライアント側に身につけていただかないとつらいですね。

特にブランディングという意味で、全てが数値化できる訳ではないので、
数字に偏るとすごく短期的なビジネスになっちゃいそうで怖いです。

池松 ここ1年で、ファッションブランドは国内も含めて、
デジタル担当PRの募集が増えてきているんですが、
そういう人たちの役割って何だと思いますか?

ナカヤマン。 ひとつは皆さん認識している、リテラシーだと思います。
もうひとつは、先ほどの数値と感覚値の判断ができることだと思います。

当面は、マネージャークラスの方々が、
まずはデジタル化されて得られる数値に
比重を置き過ぎる時期が続くのではないかと思います。

でもこういう先進的な分野の場合、
必死に勉強していないとメリットとデメリットが見えてこないじゃないですか。
それをマネージャークラスに強いるのは現実問題として難しいです。

社内で唯一、そこに特化できる担当が行間まで読んで伝えるしかないと思います。
ここは数値から判断をしてはダメなんだと、しっかり言えるかどうか。
確かにAの側面では数値はそう語っているが、Bという側面の数値を収拾出来ていないから
こういうリスクが含まれているのだ、と説明できるかどうか。

本来はマネージメントが長期的展望を持っていて、
担当が近視眼的になりがちだと思いますが、
どんどん進化するソーシャルメディアの世界に関しては現実問題、
担当が、知識と長期的展望を持ち合せるしかない気がします。

変にきっちりした「感じの」レポートが出せてしまう分、
マネージメントがそれだけを見て、
短絡的に解釈してしまうリスクは否めません。

だからこそ、デジタル担当の方を雇用するとしたら、
担当的視点ではなくて、ディレクター的視点の方でないと、
ブランドや会社全体がデジタルに振り回されるリスクがある。

池松 今までの経験上、デジタル担当に関して、
もしくは企業に対して、アドバイスはありますか?

ナカヤマン。 先ほどの話の繰り返しになりますが、
ソーシャルメディアって表面的には自分たちで出来ちゃうじゃないですか。
でも戦略的にしっかり使うのは、効果もある半面、やはり大変です。

将来的に重要度は大きくなってくる分野だと思うので、
取り組むという判断をされる企業は多いし間違ってないと考えますが、
その業務を、雇用するのか、外部に任せるのか、
そこはしっかり検討された方がいい気がします。

ファッション業界転職ブログ-09

池松 具体的にどういった点ですか?

ナカヤマン。 前提条件として、今から取り組むSNSが
世の中ではどういう役割のもので、
自分達はそれをどう使うのかを把握しておかないといけない。
ツイッターでつぶやけばいいんでしょ、っていうところだけ見ちゃうと、
そりゃ社内の大体の人でもつぶやけます。

でも本来の目的は?というところを考え出すと、
ツイッターは方法論なわけですよね。

(操作方法的に)ツイッターを使いこなしている気がする!という所は
たいして重要ではなくて、目的をブレずに保持しながら数字も担保していくには、
先ほどの話の通り、社内に「デジタル・ディレクター」が必要です。

でも、はじめから「デジタル・ディレクター」がいる会社なんて無いですよね。
専業でやっているボクらですら、日々情報を追っかけて必死です。
出来る人の絶対数が少ないし、雇うとしたら高額になる。
雇う代わりにノウハウ買いながら育成するという考え方でも良いのではないでしょうか。

また目的設定に付随して、事例共有も重要です。

「よし、ソーシャルメディア対応しよう!」とだけ本部で決めて、
店頭に立つショップスタッフさんに「店舗情報つぶやきなさい!」と言えば、
仕事としてやらざるを得ない。
販売で忙しい中、「できないこともない」程度で回しているツイッターアカウントが、
会社に、はたして何の利益をもたらせるのか。

逆に、一日中ツイッターだけをやる担当を設けたとしても、
しっかり効果がでれば、会社としてプラスなわけですよね。
複数人のツイッター選任担当を設けている会社も事例として既にあります。

池松 そういう会社では
つぶやかれたものに返事したりしているんですか?

ナカヤマン。 まず返事をしますよね。
加えて、サービス部門として電話で受け答えしていた内容を、
ツイッター対応したりしています。

当社の案件でも急激に問合わせが増えているのがアクティブサポート。
ファッション業界でも皆さん注目されています。

例えば、ソフトバンクでは「ホワイトプラン」などのキーワードで随時検索されています。
ソフトバンクに話しかける訳ではなく、
友達同士で「ホワイトプランっていくらだったっけ?」と話すツイートが、
検索で探し出せる訳です。

要は聞かれる前に、返答ができてしまう。
「突然お友達同士のお話に割り込んで申し訳ありませんが、ホワイトプランは○○○円です。
よろしければご加入ください。」なんて話しかけたりできるんですよ。

池松 へー。面白い!

ナカヤマン。 アクティブサポートって、
そこで話されていること全てが可視化されて
初めて可能になるという意味で、ソーシャルメディアならではですよね。
逆に、サポート部門の業務という意味では、
ユーザー側がクレーム電話を入れるまでは怒り心頭していない時点で対応できるので、
すごく有用なんですよ。
逆に感謝されたり、もっと好きになられたりという事例もあるくらいです。

当社のクライアントでも、専任担当を設けて
アクティブサポート対応されているブランドもあります。
顧客からの評判も、とてもいいですよ。

池松 アクティブサポートは、例えばフォロワーが何名増えたから
専任を置いた方がいいとか、目安とかあるんですか?

ナカヤマン。 フォロワー数とは別ですね。
ブランド名で検索したとしても、
ツイッターであまり引っかからない企業だと、
話しかけるも何もないわけで。
ただ、何店舗出店しているとか、一定期間に雑誌何誌に露出するとか、
話題になるかどうかの規模感を予測して対応することは必要だと思います。

* * * *

うーん、面白い!
ソーシャルメディアに関して、いろいろウンチクを言う
コンサルティング会社はたくさん出てきていますが、
ナカヤマン。氏は、特に力むでもなく、
クールな視点で、ソーシャルメディアと付き合っていると感じます。

ナカヤマン。という名前でビジネスしていること自体が、
ハンドルネームで生きるデジタル世代を感じるというか。

さて、続編(その2)では、ナカヤマン。氏の持論がまだまだ登場。
ライフスタイルに合わせたソーシャルメディアとの付き合い方、
孫正義氏の後継者を育成する機関への入校の話など、
デジタル・アクティブな話が続きます!お楽しみに!

(文責:堀田律子)



取材協力点DATA
UnCafe(アンカフェ)
フレンチベースのフュージョン料理で人気のカフェレストラン。
白を基調とした明るい空間と、フィリップ・スタルクのチェアが印象的。
住所:東京都渋谷区神宮前5-53-67 コスモス青山ガーデンフロア
TEL:最寄り駅:表参道から徒歩3分。
URL:http://www.uncafe-tokyo.com/

ファッション業界転職ブログ-10