東京電力は28日、東日本大震災発生時に運転中で、その後爆発事故を起こした福島第一原発1〜3号機の原子炉圧力容器底部の温度がいずれも100度未満になったと発表した。原子炉の水の温度が100度を下回ることは事故収束の工程表の目標である冷温停止状態の条件の一つだった。ただ、原子炉からの放射性物質の飛散対策や水素爆発防止対策など、冷温停止に向けては課題が残る。
3基とも100度未満になったのは事故後初めて。東電は「2号機では全体的に温度の低下傾向にあるが、まだ温度の上昇と下降がある。さらに冷却を目指す」としている。
28日午後5時現在の温度は1号機が78度、2号機が99.4度、3号機が79度。100度以上が続いていた2、3号機は、新たな注水方法を採用。3号機は9月中旬以降100度未満を保ち、2号機は28日に100度を下回った。
通常の原発で、原子炉が安定して停止した状態を意味する冷温停止は、原子炉の水が100度未満の状態をいう。しかし、今回は燃料が溶け落ちた状態にあるなどのため、経済産業省原子力安全・保安院は、100度を下回ることに加え、原子炉からの放射性物質の外部への放出を大幅に抑えることを最低条件とした。
東電は現在、原子炉建屋の上部や発電所周囲の放射性物質の濃度の測定点を増やすなどして、放射性物質の飛散状況を調べている。飛散をさらに減らすため、原子炉格納容器から漏れる気体から放射性物質を取り除く装置の設置も進めている。
東電原子力・立地本部の松本純一本部長代理は「(現時点で)冷温停止状態というのは早い。永続的に原子炉を安定的に冷やすために、注水が余震などで途切れることがないよう、システムの多重化を進めたい」と話す。
1号機の格納容器につながる配管で見つかった高濃度の水素の対策も課題だ。水素は爆発事故の原因となったもので、28日に測ったところ、水素濃度は63%だった。
爆発の条件となる酸素は濃度が0%だったため、東電は爆発の危険性はないとしているが、2、3号機や1号機のほかの配管でも予期せぬ状態で水素がたまっている可能性がある。新たな爆発事故を起こせば、放射性物質が外部に飛散しかねない。
東電は29日、水素を抜くために配管に窒素を入れる。配管の切断工事などを実施するにあたり、ほかの配管でも事前に調べて爆発事故を防ぎたいとしている。(今直也)