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訂正有り■バックボックス展 (2018年4月17~22日、札幌)=4月21日は13カ所(7)

2018年05月01日 22時18分52秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
(承前)

 4月21日に見た展覧会のうち、まだ紹介しきれていないものがあるので、急ぎます。


 新道展会員の画家、亀井由利さんらが中心となって昨年はじめて開いたグループ展。
 同時期の開催の「北海道抽象派作家協会」が、以前よりも規模を縮小しているので、側面から盛り上げてくれたら―という思いが、あるいはあったのかもしれません。
 今年は、絵画だけでなく、現代美術的なアプローチの作品もあり、なかなかおもしろい会場になっていました。

 北海道抽象派の重鎮、今荘義男さんは、こちらにも「古里」を3点出品しています。
 2点組みが2点、3点組みが1点。渋い色合いは、単なる意匠を超えて、日本の美を深いところでたたえています。

 会場中央にあるのは、ユニット「故郷II」による、自立型の絵画。
 これは2016年の展覧会(■永桶麻理子と故郷 II)で発表済みの「お江戸三人娘」である。


 「故郷 II」は、床の上に自立するタイプの絵画を制作・発表しています。
 これらは表と裏の絵柄が異なるのがミソです。

 今回は旧作と新作を取りまぜて並べていて、2枚目の画像は新作のようです。
 左の作品は「0歳の自画像ー青空」。
 古い新聞の切り抜きをたくさん、裏焼きにコピーして貼り付け、時代の流れを表現しています。
 中央の穴には、新旧の新聞を丸めて突っ込んでいます(北海道新聞と朝日新聞でした。よく保存しておいたなあ)。

 右側の、どこか昭和っぽいイメージの作品は「あしたの家族 II」。
 子どもの顔の部分が、観光地などによくある顔ハメタイプの作品になっています。


 つぎは、バックボックス展のまとめ役、亀井由利さんの絵画。
 モノトーンで、生命感を漂わせる飛沫が特徴です。

 左は「病める月」。


 右の4枚組みは
「海にいるのは、
あれは人魚ではないのです。
海にいるのは、
あれは、浪ばかり。
中原中也「北の海」」
という、非常に長い題がついています。
 亀井さんが昔から愛唱していた詩の一連を、そのまま作品タイトルにしたそうです。

 モダニスム絵画は文学的な要素を画面から排除することで純化を進めてきましたが、ほんらいは詩情という面では絵画(美術)と近い部分もあるはずなので、こういう試みはおもしろいと筆者は思います。少なくとも、作品の受け止め方に、ポリフォニックというか、多義的な幅が出てくるのではないでしょうか。




 会場の中央に積み上げられた白いいすとテーブルは、河口真哉「残影の遺物」。
 奥の、イーゼルに載った額縁つきの説明文も含めて作品のようです。
 このテーブルといすを囲んで、食事や会話をしている人々の写真が何枚も掲げられています。
 つまり、たんなるインスタレーションというよりは、テーブルで食事や会話をする「関係性」を提示する作品といったほうが良さそうです。

 この手の作品としての強度が、正直なところもう少し欲しい気もしますが、北海道ではそもそもこういうアートがきわめて少ないという事情もあり、その意味では、発表されたことの意義は決して浅くないと思いました。


 …などと書くと、筆者がモニダスム絵画を否定しているかのような文章の流れに感じられるかもしれませんが、単純に、絵画はすきなのです。

 毎春、ギャラリー大通美術館で開いている「千展」に大作を出品している赤石操さんは「a. walk」という5枚組みを並べていました。
 濃淡のある青と黒に色数を絞りつつ、曲線と直線をちょうどよいぐあいに画面に配する赤石さんの絵は、抽象画ならではの楽しいリズム感をたたえているようです。

(※5月5日追記、訂正。赤石さんは千展にはすでに出品しておらず、現在は主に新道展で活動しています。一部文章を削除させていただきます。確認が不十分で、まことにすみませんでした。)


 田中郁子さんの「No.53 sprouling」(つづり、自信ない…)も5枚組み。

 こちらも抽象画としては、なかなか完成度の高い、ダイナミックな作品です。
 色を削っては重ね―をくりかえし、下の層と上の層の絵の具を響き合わせていくのは、新道展の伝統ともいうべき技法ではないかと思いますが、田中さんは上から大胆に白を重ねることで、画面に強さを与えているように思えます。
 隣室の北海道抽象派作家協会展にも出品しており、精力的な制作ぶりにあらためて驚かされます。

 このほか河口真由美さんが「もえいづる」「1/f」「cell」などを出品。
 小品の抽象画を、ひものようなものでつなぎ合わせて、9枚組みにして壁にかけた作品などです。


 最後は、山岸せいじさん「とおくをいく」。
 高さ3.5メートルの天井から吊り下げた写真が5組10点。
 いずれもノーファインダーで撮影したデータを大型プリンターで出力したものです。

 山岸さんはプロのフォトグラファーなので、ファインダーをのぞくと、ピントの合った写真を撮ってしまうことでしょう。あえてでたらめに、意図を排して写した写真を大きく引き伸ばしているのです。
 そこには子どもたちがいたり、風景があったりするようですが、明瞭には像を結んではいません。
 ただ、人も動物も植物も一切の命が等価であるという作者の思いが、茫漠とした画面ににじみ出ているような気がするのです。


2018年4月17日(火)~22日(日)午前10時~午後5時(初日正午~、最終日~4時)
札幌市民ギャラリー (中央区南2東6)

バックボックス展(2017)=亀井、河口、赤石さんも出品


http://kokyo2.jimdo.com/
永桶麻理佳と故郷II展 (2016)
労働/パラダイス 故郷II (2014)


女抽象三人展(2015)
第8回千展 流動……(2008)
第19回そらいろ展 (2007)
第7回 千展
第6回千展
=赤石さん出品


第四十五回北海道抽象派作家協会展 (2018年4月)
44th 北海道抽象派作家協会展 (2017)
TAPIO LAST 終章 (2016)
=田中さん出品


亀井由利小品展 (2018年1月)
亀井由利小品展 (2017年1月)
亀井由利展~きらめく生命(いのち)のものがたり (2014)
花ざかりの絵画展
亀井由利展 (2014年2月~3月)
13→14展 (画像なし)
亀井由利個展 (2010)
北都館で清水アヤ子・亀井由利2人展(2009年10月)
亀井由利小品展(2009年5月)
たぴお記念25th + 13th 異形小空間 (2007~08年)
亀井由利個展(2007年)
亀井由利 心象世界(07年4月)
BOOKS ART展(06年11月。画像なし)
06年9月の個展
LEBENS展(06年6月。画像なし)
新道展50周年記念展(05年。画像なし)
柴崎康男・亀井由利2人展(04年。画像なし)
亀井由利「かかえる」=厚生省買い上げ、菊水のがんセンターに展示


鎌田光彦・山岸せいじ (2017)
帯広コンテンポラリーアート2016 ヒト科ヒト属ヒト(2016)
山岸せいじ展 photographic works あわいを覗く そこは素粒子が乱舞する処かもしれない。 (2014)
関連記事へのリンク(2007年以降)
防風林アートプロジェクト (2014年2月)
「和」を楽しむ(2014年1月)
【告知】山岸せいじ展 あわいを覗く そこは原子ひとつ隣の世界かもしれない photographic works(2012)
【告知】かげ展(2011年)
PHOTOGRAPH EXHIBITION MOVE 3 part1 (2010年)
さっぽろフォトステージPart1 (2009年)
遠くを聴く この言葉で繋がる7人の世界(2009年11月)
東川フォトフェスタ ストリートギャラリー (2009年8月)
PHOTOGRAPHY EXHIBITION MOVE 2(2009年2月)
光を編む この言葉に触発された13名の作家達が織りなす世界
東川町フォトフェスタ
ARTIST WEEK vol.1 "air"
Seiji Yamagishi、Takashi Yamaguchi 景一刻
MOVE (以上2008年)
たぴお記念25th + 13th 異形小空間(07年12月-08年1月)
OPERA Exhibition vol.2 (07年)
足立成亮写真展「事の終わり」・micro.の記録展(07年4月)
スネークアート展(07年3月)
山岸さんの個展「景」 (07年3月)=くわしいプロフィルと、過去の展覧会へのリンクあり


(この項続く) 


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