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原発、検査中なのにフル稼働 泊・大飯、手続き先送り

2011年7月6日3時0分

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図:通常の原発の定期検査の流れ拡大通常の原発の定期検査の流れ

 定期検査中の原発の運転再開が遅れている問題で、北海道電力の泊原発3号機(北海道)と関西電力の大飯(おおい)原発1号機(福井県)が、定検終了直前の「調整運転」を4カ月近く続けている。フル稼働で送電しており営業運転と同じだが、国と電力会社、立地自治体が安全評価の責任を押し付け合い、定検中のまま手続きの先送りを3カ月近く続ける異例の事態になっている。

 両機が13カ月に1度の定検に入ったのは、昨年12月から今年1月。約50項目の検査を終え、泊3号機は3月7日、大飯1号機は3月10日と、いずれも大震災直前に原子炉を起動し、調整運転に入っていた。

 調整運転は通常、約1カ月行われる。徐々に出力を上げ、フル稼働時点で、経済産業省原子力安全・保安院から、正常に作動しているかを最終チェックする総合負荷性能検査を受ける。

 両機とも4月上旬に営業運転に移る予定だったが、震災と原発事故で状況は一変した。保安院は3月と先月、緊急の安全対策を指示。海江田万里経済産業相は先月18日、両機を含む原発について「対策は適切」と再開を認めた。

 だが北海道電と関電はその後も最終検査を受けず、営業運転に踏み切らない。理由については両社とも「地元自治体の理解が得られていないので……」と歯切れが悪い。

 電気事業法では定期点検を忌避した場合、30万円以下の罰金となる。だが、保安院は「最終検査以外の過程は踏んでおり、検査忌避とも言えない。最終検査は電力会社の申請で行うもの。検査を受けるよう指導する予定はない」(原子力発電検査課)と言う。

 自治体側の態度もあいまいだ。北海道の高橋はるみ知事は先月22日の記者会見で、定検で停止中の泊1号機について「1号機も(調整運転中の)3号機も定検中というのは変わらない」と発言。調整運転の停止は求めないが営業運転にも移行させない考えを示した。

 福井県も「(大飯1号機は)定検中だが、すでに動いてしまっている」(原子力安全対策課)と、国と関電にげたを預ける。

 泊3号機は出力91万2千キロワット、大飯1号機は117万5千キロワットで北海道電、関電の供給力のそれぞれ14%、4%にあたる。国や電力会社は、夏の電力不足を恐れて調整運転を止めたくない。自治体は営業運転への移行を認めて、停止中の原発も含めた「再開容認」ととられたくない。三者が安全面の議論を避けたまま、調整運転を放置している。

 この2基のほか現在、全国で22基の原発が定検中だが、震災の影響もあって、いずれも調整運転は始まっていない。横浜国立大の小林英男客員教授(安全工学)は「調整運転の放置は政治的。電力会社は最終検査を申請し、国はそれを受けて安全性の方針を示し、社会の同意を求めるのが筋」と話す。(小暮哲夫、小堀龍之)

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