2011年6月30日3時34分
停止中の九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)2、3号機の運転再開問題で、同県の古川康知事は29日、海江田万里・経済産業相との会談後、「安全性の確認はクリアできた」と話し、再開を容認する姿勢を示した。県議会の議論などを踏まえて最終判断する。運転再開すれば、東京電力福島第一原発の事故後、検査で停止している原発では全国初となる。
古川知事は、全国の原発の緊急安全対策は適切だと認めながら中部電力浜岡原発(静岡県)だけに停止を要請した国に「納得できない」と説明を求めていた。
この日、県の要請に応じて来県した海江田経産相は古川知事との会談で「危険性のない所は政治の判断で動かす、本当に危ない所は責任を持って止める」と強調。「玄海2、3号機の安全性には国が責任を持つ」と再開に理解を求めた。
古川知事は会談後の記者会見で、浜岡原発だけに停止要請したのは政治判断だと経産相から説明され、玄海原発の安全性について「疑問に思ってきた点は解消された」と表明。玄海町の岸本英雄町長は4月から、安全対策の徹底などを条件に再開容認の意向を示していたため、この日で(1)安全性の確認(2)地元の玄海町の意向(3)県議会での議論という三つの必要条件のうち「((1)と(2)の)二つはクリアできた」と明言した。
古川知事は7月1日の県議会原子力安全対策等特別委員会などで、こうした考えを表明し、議会側と議論する。県議会最大会派の自民党幹部は「知事の意向を尊重することになるだろう」と話している。これで事実上、3条件が整った。
この日の会見で古川知事は「(運転再開について)総理も海江田大臣と同じ気持ちに立っているとは感じられない」と不満を漏らし、「総理の真意を確かめたい」と、菅直人首相に運転再開への考えや今後のエネルギー政策について説明を求める考えを示した。ただ、「それを一つのハードル(必要条件)とするまで、力強く思っているわけじゃない」とも述べた。
全国の原発54基のうち35基が停止中。原発の安全性に不信感が高まっており、この状態が続くと来年夏には全ての原発が停止する。古川知事の再開容認姿勢を受け、経産省は玄海原発が再開に向けて動き出すと、他の自治体にも「再開への機運が広がる可能性がある」(幹部)と期待した。
ただ、全国最多の13基の商業用原発が集中する福井県の知事は、運転再開を容認しない姿勢を明確にしている。朝日新聞が実施した全国知事アンケートでは、他の立地自治体の知事も「東電の原発事故の検証結果を見極めて対応を決める」(新潟県)など慎重姿勢が多い。玄海を突破口にしたいという経産省や電力業界の期待通りになるかどうかは不透明な情勢だ。
佐賀県でも、知事は容認姿勢を示したが、7月8日に予定される住民説明会が紛糾する可能性は否めず、隣接する長崎、福岡両県内の自治体や住民の反発も予想される。(岩田正洋、小暮哲夫)