津波警報の上方修正、4~8割に伝わらず NPO調査
東日本大震災で、岩手県釜石市などの被災者の4~8割が、震災後に予想される津波の高さを気象庁が上方修正したにもかかわらず、その情報を知らなかったことが8日、分かった。第一報の低い見積もりで油断したり、避難が遅れたりして被災した恐れもあり、同庁は津波警報を住民に伝える方法などを見直す必要があるとしている。
調査結果は特定非営利活動法人(NPO法人)の環境防災総合政策研究機構がまとめ、同日開かれた気象庁の津波警報改善に向けた勉強会(座長・阿部勝征東大名誉教授)の初会合で報告された。勉強会は、有識者や自治体の防災担当者ら10人で構成。秋をめどに津波警報の改善策をまとめる。
気象庁は地震発生直後の3月11日午後2時50分に、東北沿岸で予想される津波の高さを岩手県で3メートル、宮城県で6メートルと発表。その後、同3時14分と同3時31分の2回にわたり津波の高さを上方修正し、岩手県と宮城県はともに10メートル以上と発表した。
同機構は津波による被害が大きかった釜石市と宮城県名取市に住む61人を対象に、修正した情報を聞いたかどうか調査を実施。その結果、釜石市では75%、名取市では43%の人が修正を知らないまま被災していた。
釜石市や名取市に津波が到達したのは3時15~30分。津波で防災無線の設備が故障したり、停電でテレビが見られなくなったりして、情報が住民に伝わらなかったとみらられる。「第一報の低い見積もりを聞き、安心して逃げなかった人もいたようだ」(環境防災機構)という。