2011年6月8日15時0分
広島、長崎の被爆者の全国組織「日本原水爆被害者団体協議会」(日本被団協)は8日、福島第一原発事故を受け、「脱原発」を国に強く要求していく運動方針を決めた。原発の安全性強化とエネルギー政策の見直しを求めてきた従来の立場から一歩踏み込んだ。
この日、都内で開かれた総会で決まった。事務局側は冒頭、「エネルギー政策の転換を求める」との運動方針案を示した。しかし、全国から参加した約100人の代表らの中から「物足りない」と異論が続出。「現在の発電用原子炉54基の全面廃炉を求めるべきだ」(長崎)などの声が相次いだ。最終的に「脱原発」に向けた強い表現を運動方針に明記することが全会一致で承認された。
日本被団協はこれまで、被爆者間での意見の相違に配慮し、原子力の平和利用を否定してこなかった。既存の原発については安全性の強化を求める一方、原子力に依存しないエネルギー政策への転換を促すとしてきた。だが、福島第一原発事故の衝撃は被爆者にとっても大きく、原発事故による核の被害者をこれ以上増やさないために被団協として強く行動していこうとの意見が総会で大勢を占めた。(加戸靖史)