滋賀県や京都、大阪府、福井県の住民約170人が2日、定期検査で停止中の福井県内の原発7基について、関西電力の再稼働を認めない仮処分をするよう大津地裁に申し立てた。東京電力福島第一原発事故を踏まえて国の安全審査指針を改定し、それに基づく点検をしない限り、「再稼働は危険」と訴えている。
住民らは原発から20〜110キロ圏内に住む原発立地市町以外の人たちで、福井と隣接する滋賀県の人が約9割を占める。再稼働や運転差し止めを求める訴訟も年内に起こす方針。
全国で原発の差し止め訴訟などに携わってきた弁護士約100人が先月結成した「脱原発弁護団全国連絡会」のメンバーが弁護団となり、初めて起こした行動。連絡会は、被災して停止中の女川原発(宮城県)や福島第一原発の5、6号機の稼働差し止めを求める訴訟も予定している。
差し止めの対象となっている原発は、美浜1、3号機(福井県美浜町)▽高浜1、4号機(同県高浜町)▽大飯1、3、4号機(同県おおい町)。
申立書では、美浜、大飯原発の近くにマグニチュード7前後の地震を想定した活断層があるなど、周辺はもともと地震の多発地帯と指摘。関電が予想してきた津波の高さは1.86メートルまでと低いうえに、7基は運転開始から18〜40年経って老朽化しており、福島のような事故が起きる危険性があるとしている。
さらに、菅直人首相が「(国の安全審査)指針が十分ではなかったことははっきりした」と国会で答弁したり、内閣府の原子力安全委員会が指針の見直しを始めたりしたことなどから、現在の指針は事実上失効したと主張。現指針のもとで定期検査して再稼働するのは違法であり、危険性が高いと訴えている。
関西電力は「内容を把握していないのでコメントできない」としている。(中村亮)