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2011年08月03日(Wed)

絶対値PST
 認定NPO法人に新たに絶対値PST(パブリックサポートテスト)が導入され、6月30日からこの新しい基準で申請が出来ることになっています


 この絶対値PST、かなり反応がいい。特に、今まで認定とは縁遠かった事業型のNPO法人の反応がいいな、と感じています。


 絶対値PSTがどのようなものなのか、解説したいと思います




1. 絶対値PSTとは


 NPO法人のうち、税制上の優遇があるのが認定NPO法人です。


 認定NPO法人になるために、全部で9つの要件を満たしていないといけませんが、そのうち、最大の関門になっているのが「パブリックサポートテスト要件」です。


 パブリックサポートテストとは、その名前の通り、パブリック(一般大衆)からサポート(支援)されているかどうかのテストです


 認定NPO法人の考え方として、活動内容の良し悪しを判断するのだと、誰かの主観が入るので、そうはせずに、一般大衆から多くの支援をされているということは、その活動内容がいいから支援されているのだろうと考え、そういう団体を認定して、さらに活動を応援していこうというものです。


 パブリックサポートテスト(PST)は、このように「一般大衆からどれくらい支援されているかのテスト」でしたが、そのテストの方法として、従来は、収入のうちに寄付の占める割合で判断していました。


 つまり、寄付の占める割合が多い団体は、多くの人から支援されているだろうと考えているわけです


 ところが、このPSTはいくつかの問題があり、そのために認定NPO法人はなかなか増えませんでした(現在でも200団体をようやく超えたくらいで、NPO法人全体の0.5%程度)


 計算式が非常に複雑であるため、多くのNPO法人にとってなじみにくいこと、割合計算であるため、けっきょくどれくらいの寄付を集めればいいのかわからず、目標にならないこと、介護保険事業など事業収入が多いNPO法人は始めからPSTをクリアできる可能性がないこと、などでした


 そこで新しく導入されたのが、PSTの「一般大衆からどれくらい支援されているか」という考え方を大事にしながら、もう少しわかりやすく、目標にもなり、事業型のNPOも認定の視野に入るものということで、「一定金額以上の一定数の寄付者がいる場合には、一般大衆から支援されているとしてPSTをクリアしているものとする」というものです


 その具体的な基準が、「年3,000円以上の寄付者数が年平均100人以上」という絶対値基準です(従来のPSTは相対値基準と言われ、選択制となりました)。


 「年3,000円以上の寄付者数が年平均100人以上」というのは非常に分かりやすいと思いますが、それでもいくつか疑問があると思いますので、疑問に思いそうなことを見ていきたいと思います


2. 毎年100人以上の寄付者がいないといけないのか? 


 認定NPO法人として申請する場合の対象になる期間(実績判定期間といいます)は、初回の申請の場合には直前の2事業年度です。3月決算のNPO法人であれば、21年4月1日~22年3月31日と、22年4月1日~23年3月31日が判定の対象期間です。


 この期間に年3,000円以上の寄付者が年平均100人以上いれば、認定されることになります


 いずれの事業年度でも3,000円以上の寄付者が100人以上いれば問題ないわけですが、例えば、22年3月期は80人、23年3月期は160人のような場合はどうでしょうか?


 下記の計算式を満たしていれば、クリアということになります

 
 実績判定期間の3,000円以上の寄付者の数×12/実績判定期間の月数≧100人 


 この場合ですと、(80人+160人)×12/24月=120人ですから、基準をクリアです


 また、設立して間もない法人で、実績判定期間が1年と1月(1月に満たない月がある場合には1月とみなして計算します)の場合には、寄付者が1年1月の間に110人であった場合でも、110人×12/13月=101.5人ですので、この基準をクリアすることになります。 


<カウント例>


・同じ人物から、21年度(22年3月期)に3,000円、22年度(23年3月期)に3,000円の寄付を受けた場合⇒それぞれ1人してカウントします


・同じ人物から21年度に3,000円の寄付を2回し、22年度に寄付をしなかった場合⇒21年度は1人、22年度はカウントしません



3. すべての寄付者が対象になるのか


 寄付者のうち、そのNPO法人の役員及び役員と生計を一にする者は寄付者に含めません

 また、氏名または名称及び住所又は主たる事務所の所在地が明らかな寄付者のみを数え、名前が分からない場合や、名前はわかっても住所が分からないような場合には寄付者にカウントしません


 さらに、寄付者本人と生計を一にする者も含めて一人としてカウントします


 逆に言うと、正会員などが正会員としての会費とは別に寄付をしている場合には、正会員からの寄付金もカウントすることができます



<カウント例>


・ある役員が3,000円、その役員と生計を一にしている配偶者(役員ではない)が3,000円の寄付をした場合⇒役員もその配偶者もカウントしない


・ある役員と生計を一にしている配偶者(役員ではない)のみが3,000円の寄付をした場合⇒配偶者はカウントしない


・ある寄付者が1,000円、その寄付者と生計を一にする配偶者が2,000円の寄付をした場合⇒一人としてカウントする(3,000円以上であるかどうかは合計額で判定)


4. 寄付金とは?


 そもそも寄付金としてカウントできるのはどのようなものでしょうか?


 寄付金とは、お金や物を提供しようとする者が、強制されることなく自由に提供するか否かなどを決められるもの(任意性がある)であって、直接の反対給付がない(それを提供することで商品やサービスなどを得るようなことがない)お金や物などの供与と考えられるものをいいます。


 従って、金銭の寄付だけでなく、現物の寄付も含まれます。


 企業からの助成金という名称であっても、支出する側に任意性があり、直接の反対給付がない経済的利益の供与であれば寄付金として取り扱います。


 また、総会での議決権のない、賛助会員から受領する会費については、定款や規約等から実質的に判断して明らかに贈与と認められる場合には寄付金となる場合があります


 不特定多数の者に無償で配布している機関誌等を会員が受け取っている程度であれば、対価性はないものとして取り扱われます。


 また、任意団体からNPO法人になった場合に、任意団体から引き継いだ財産についても、任意団体からの寄付と考えます。

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コメント
回答ありがとうございます。

この機会にいろいろと勉強しなおして見たいと思います。
これからもよろしくお願いします。
Posted by: 小笠原秀樹  at 2011年09月22日(Thu) 10:49

小笠原さん

こんにちは

親族については、同一生計は一人としてカウントしますが、それ以外は別にカウントします

親戚に法人のことを説明して寄付してもらうのならいいことだと思います

もし名義だけで、架空名簿なら、鳩山さんみたいなものですから大問題になる可能性はあると思います
Posted by: 脇坂誠也  at 2011年09月22日(Thu) 10:08

こんにちは。個人的には大変お久しぶりです。
いろいろと御尽力されていることに感謝いたします。

さて、「3,000円×100人」、私の周辺でも話題です。
解説も読ませていただいたのですが、カウントできる寄付者の親等制限はないのでしょうか。生計を一にするものはわかりました。親戚親類に寄付させちゃうか、なんて話が聞こえてきているので、質問です。
どうでしょうか。
Posted by: 小笠原秀樹  at 2011年09月13日(Tue) 15:51