2011年7月15日3時2分
政府の原子力損害賠償紛争審査会は14日、外国人が日本からの輸入品を敬遠する風評被害について、国内の風評被害よりも損害賠償の範囲を広げる方針を固めた。具体的な線引きを詰め、7月末をめどにまとめる中間指針に盛り込む。
5月にまとめた2次指針では、国内の風評被害については、福島、茨城など4県の全域などで生産されたすべての農水産物(食用)と、福島県に営業拠点を持つ観光業者を賠償対象とした。だが、海外では、日本産の食品全般を対象に取引拒否や検査強化を求める動きが出るなど、風評被害は福島県や隣県の範囲を超えて広がっている。
このため、審査会は14日の会合で、海外の風評被害の賠償範囲を国内と同じとするか、さらに広げるかを議論。日本の地理に詳しくない外国人が多く、日本製品を敬遠する動きが出るのは、やむを得ない面があるとの意見が出され、能見善久会長もこの考え方に賛成した。
福島県や隣県の産品に限らず、国内では認められていない西日本などの農産品も賠償対象にする方向で検討するが、むやみに範囲が広がらないよう、期間や対象品目などを限定する方向で、さらに詰める。
この日の会合には、被害実態を分野別に調べる専門委員の調査結果も示され、主要旅行業者の4月の訪日外国人の取扱額が過去3年の2割程度に激減したことなどが報告された。審査会は、外国人観光客の減少や外国人労働者の帰国、留学生の入学辞退に伴う被害を賠償すべきかも検討する。