情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

放射線の影響のあまりの過小評価について枝野官房長官、秋野公造議員に公開質問!

2011-07-12 17:06:07 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
 本日、以下の内容の公開質問状を発送した。ぜひ、回答をいただきたい。そこで、この質問状の存在について、ブログやツィッターなどで、多くの国会議員や福島の市民の皆さんに伝えていただけないでしょうか?よろしくお願いします。


               公開質問状
   
 
内閣官房長官枝野幸男殿

参議院議員秋野公造殿

                        弁護士・NPJ編集長 日隅一雄  
冠省 7月7日に開催された参議院予算委員会において、枝野官房長官は、放射線の影響について、「年間20mSvを超えると健康に影響が出るのか、妊婦や幼児への配慮がされているのか」という秋野議員の質問(午後1時39分あたり)に対して、「20mSvという目安はICRP とIAEAの緊急時被ばく状況における放射線防護の参考レベル(20~100mSv)のうちもっとも厳しい基準を採用しているものである。この基準は大人や子供を区別することなく適用される」としたうえ、「被ばくした放射線量が100mSv未満では放射線が癌を引き起こすという科学的な証拠はない、ということでございます。100mSvを超えても、100mSv~200mSvの場合の癌になるリスクは喫煙や大量飲食・食事などの生活習慣を原因とする癌のリスクよりはるかに低い値であるとされています。したがって、年間20mSvを超えても健康に与える影響を過度にご心配される必要はないと考えています。なお、妊娠中の方、幼児へは特別な注意を払う必要があると勧告されているので、留意したい」などと回答されました。
 しかし、枝野官房長官の説明は、採用すべき基準自体が選択を誤っている、100mSv以下の影響をあまりに軽視しているという2点で極めて重大な問題があると思料しますので、本書面をお送りすることとしました。

まず、枝野官房長官が説明した基準については、ICRPの勧告は枝野官房長官自ら認めるとおり、あくまでも緊急時被ばく状況に関するものであり、今後数年間、数十年間同様の状況が続くことが予測される現時点では、事故収束後の基準である年間1~20mSvを採用するべきです。このことは原子力安全委員会ですら、「『福島県内の学校等の校舎、校庭等の利用判断における暫定的考え方』について」という文書で、認めているところです。
 したがって、日本政府はICRPのもっとも厳しい基準を採用しているのではなく、もっともゆるい基準を採用しているというのが正確な説明ではないでしょうか。この点、明確にご回答されたい。

2点めはさらに重大なことです。放射線量100mSv以下の場合の影響については、アメリカの科学アカデミーのBEIR-Ⅶ(Biological Effects of Ionizing Radiation-Ⅶ、電離放射線の生物学的影響に関する第7報告)において、科学的にどのように考えるべきかが示されており、それによれば、放射線の影響は、直線的なモデル、比例的に考えるべきだとされています。
具体的には、上記報告書の一般向け概要版の日本語訳(http://arcives.shiminkagaku.org/archives/radi‐beir%20pubulic%20new.pdf)には、下記のように記載されています。


 【LNT モデルから推計されるほどには低線量は危険ではない、という見解を当委員会が採用しない理由
 前節で述べたこととは対照的に、LNT モデルは低線量放射線の健康影響を過大に考えているという見解も委員会は入手している。リスクは LNT から推計できるものより小さいか存在しないかであり、あるいはむしろ低線量被曝は人体によい影響をもたらすこともある、という考えである。我々はこうした仮説も受け入れることはできない。たとえ低線量であっても何らかのリスクがあるらしいことを示す情報の方が優勢なのである。この「要約」で行った単純なリスク計算で示したように、低線量のリスクは確かに小さい。そうは言うものの、我々の採用したがんのリスクの基本モデルでは、たとえ被曝線量が少なくても少ないなりに発がんはもたらされるのである。
結論を導くにあたってBEIRⅦ委員会は、低線量においてしきい値が存在することや人体影響が低減することを論じた論文をレビューした。そうした論文の結論は、非常に低い線量での被曝は無害であるかあるいは有益でさえもある、というものだった。これらの研究は、生態学的な研究(特定地域に着目した疫学的研究)であるか、人体の全体をそれで代表させることはできない部分について得られた発見を引用している研究であった。
 生態学的研究は広範な地域特性の関連を調べるものであり、場合によっては、より精密な疫学研究が示す結果と比較するとがんの発症率がうんと大きくなったり小さくなったりすることがある。皆が合意できる見解は、研究の全体を見渡してみて初めて見出すことができる。そのようにして我々が得た見解は、電離放射線の健康リスクは、そのリスクは低線量では小さいわけだが、やはり被曝線量の関数になっている、ということである。
 疫学研究でも実験研究でも、なんらかの相関が見出せる線量域なら線形モデルと矛盾するものは見出されていない。電離放射線の健康影響の主だった研究は 1945 年の広島・長崎の原爆被爆生存者を調べることで確立された。それらの生存者のうち 65%が低線量被曝、すなわち、この報告書で定義した「100mSvに相当するかそれ以下」の低線量に相当する。放射線にしきい値があることや放射線の健康へのよい影響があることを支持する被爆者データはない。他の疫学研究も電離放射線の危険度は線量の関数であることを示している。さらに、小児がんの研究からは、胎児期や幼児期の被曝では低線量においても発がんがもたらされる可能性があることもわかっている。例えば、「オックスフォード小児がん調査」からは「15 歳までの子どもでは発がん率が40%増加する」ことが示されている。これがもたらされるのは、10 から20mSvの低線量被曝においてである。
 どのようにがんができるかについて線形性の見解を強く支持する根拠もある。放射線生物学の研究によれば、「可能な限り低い被曝でできる1本の放射線の飛跡は、標的となる細胞の核を通過して細胞のDNAを損傷する可能性が低くても一定程度はある」。この損傷の一部には、DNAの短い部分に複数の損傷を起こす電離の「突出」があり、修復しにくく、まちがった修復が起こりやすい。委員会は、それ以下では発がんリスクをゼロにするしきい値を示す証拠はないと結論した。

          結論

 低 LET による低線量被曝の健康影響をどう理解するかについては難題をかかえてはいるものの、最近の研究のおかげで結論を述べても大丈夫な点も出てきた。BEIRⅦ委員会の結論は次のとおりである。電離放射線の被曝とそれによって誘発された人間の固形がんの発生の間には線形の線量-応答関係が成り立つ、という仮説は最近の研究が示す科学的証拠と矛盾しない。当委員会は、それ以下だとがんは誘発されないというしきい値が存在するとは考えないが、ただ、低線量域でのがんの誘発はあっても少ないだろうとみなしている。当委員会は、他の疾患(例えば心臓病や脳卒中等)は高レベルの被曝によって引き起こされるとみなしてはいるが、低線量被曝とがん以外の疾患の間にもしかして成り立っているかもしれない線量-応答を評価するにはもっと多くのデータが収集されねばならないと考えている。】


 以上のように、アメリカ科学アカデミーは直線的、比例的な考え方によるべきであることを結論づけています。原子力安全委員会が依拠するICRPも、直線的なモデル、つまり、これ以下なら安全という量はないことを前提としたモデルによることを明らかにしていることは、原子力安全委員会も記者会見などで認めています。

 そのうえで、アメリカ科学アカデミーは、その考え方に基づいて、癌の発生リスクを下記のとおり説明しています(日本語概要より)。
          記
 【BEIRⅦ委員会は、低線量の低LET 放射線への人間の被験者の被曝に関して委員会としては最良のリスク評価を行い、第12 章に載せた。本報告書のデータに基づくリスクモデルが放射線被曝のリスクを評価するのにどのように使われるのか、その一例を図P8-4 に図示している。この例では、1人あたり0.1Svで予想されるがんリスクを計算している。このリスクは性と年齢に依存し、女性や低年齢で被曝した人では高くなる。平均では性と年齢の構成が米国の全人口と同じであると仮定すると、BEIRⅦ生涯リスクモデルでは 0.1Svの線量により100人中約1人にがん(固形がんか白血病)が発生すると予想でき、一方、他の原因では 100 人中約 42人に固形がんや白血病が発生すると予想される。線量が低ければそれに比例してリスクは低くなる。例えば、0.01Sv の被曝では1000人に約1人ががんになると予想される。】

 すなわち、アメリカ科学アカデミーによれば、0.01Sv=10mSv被ばくすれば、1000人に一人が癌になる可能性があると考えるべきだということになります。枝野官房長官が例として挙げた20mSvの場合は、500人に一人が癌になることになります。癌で死ぬ人は、20mSvの場合、1000人に1人現れる可能性があります(これは1Sv=1000mSvの場合の癌死が5%であることが科学的に認められていることから導かれる)。

この20mSvにおける1000人に1人という癌死可能性の割合を多いと考えるか、少ないと考えるかを問題にしなければなりません。例えば、平成21年の交通事故死者数は4914人だが、これを1億2000万人で割ると、交通事故で亡くなる人の割合は0.004%となります。
 他方、20mSv/年の量が1年間継続した場合の死亡率増加可能性は、0.1%ですから、交通事故死の可能性の25倍ということになります。
枝野官房長官、この数字が果たして、「健康に与える影響を過度にご心配される必要はない」といえるものでしょうか。枝野官房長官におかれては、このことについて、ご回答いただきたい。
また、秋野公造議員におかれては、枝野官房長官の説明を評価されていましたが、命を大切にすることを標榜する公明党所属の議員として、アメリカ科学アカデミーの見解の存在を踏まえても、枝野官房長官の説明は十分で、住民に必要な情報を提供していると言えるのか、政府に対してアメリカ科学アカデミーの見解を住民に情報提供するよう求めるおつもりはないのか、をお答えいただきたい。
 ことは、命にかかわる問題ですので、可及的速やかなご回答をお願いいたします。
なお、本書面は、当職が運営しているブログ「情報流通促進計画」にて、公開させていただくととともに、ご回答の状況についても掲載させていただきます。
                        不一








●日本、特に東北・関東の保護者必読の書●

「ICRP Publ. 111 日本語版・JRIA暫定翻訳版」(http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15092,76,1,html)

「緊急時被ばく状況における人々に対する防護のための委員会勧告の適用(仮題)=109」
(http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15290,76,1,html)

アメリカ科学アカデミーの文献「BEIR-VII」(Biological Effects of Ionizing Radiation-VII、電離放射線の生物学的影響に関する第7報告)
http://archives.shiminkagaku.org/archives/radi-beir%20public%20new.pdf






◆東電本社の記者会見は、午前11時~正午から始まる単独会見、午後5時ごろからの統合本部会見の2回となっている。インターネットで生中継と録画配信されている◆

 → ニコ生 http://live.nicovideo.jp/ 

   岩上さんのサイト http://ow.ly/4wCEr





◆以下参考◆


原子炉建屋とタービン建屋の図。クリックで拡大できます。

   ↓

 


【日弁連会長声明】
「東北地方太平洋沖地震による福島第一原子力発電所の事故に関する会長声明」 http://ow.ly/4n21n

●今後想定されるあらゆる事態、並びに、各地の放射能汚染の実情と被曝による長期的なリスクに関する情報、被曝防護に関する情報を正確かつ迅速に国民に提供し、適切な範囲の住民を速やかに避難させるよう求めるとともに、原発の新増設停止、既存原発についても電力需給を勘案しつつ危険性の高いものからの段階的停止を提言



◆参加してみました。クリックお願いします。
   ↓
人気ブログランキングへ

◆持ち込み可視化についてアンケート実施しました。ご協力ありがとうございました。
   ↓
http://blog.with2.net/vote/?m=v&id=57952

【ツイッターアカウント】yamebun


●沖縄への連帯ツイッターキャンぺーン●

【ツイッターアカウント】@BarackObama

【メール】→http://www.whitehouse.gov/contactから


【ツイッター例文】
JAPAN IS NOT US'S COLONY! We won't support US BASE. All US BASE OUT! from our country.

Please HELP Okinawa. 75% of the American bases in JP is in the islands, only 0.6% of JP land. Relocate #Futenma base outside.

Marine in Futenma must go back to your country. There is no place where the base of Marine is acceptable in Japan.

Okinawa and a lot of Japanese oppose the transfer of the Futenma base to Henoko


At least180 MPs of ruling parties say NO to Futenma relocation within Okinawa. Check this http://bit.ly/9jQIW8



【PR】






★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて:Gilbert's Nuremberg Diary)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
※このブログのトップページへはここ←をクリックして下さい。過去記事はENTRY ARCHIVE・過去の記事,分野別で読むにはCATEGORY・カテゴリからそれぞれ選択して下さい。
また,このブログの趣旨の紹介及びTB&コメントの際のお願いはこちら(←クリック)まで。なお、多忙につき、試行的に、コメントの反映はしないようにします。コメント内容の名誉毀損性、プライバシー侵害性についての確認をすることが難しいためです。情報提供、提案、誤りの指摘などは、コメント欄を通じて、今後ともよろしくお願いします。転載、引用はこれまでどおり大歓迎です。


最新の画像もっと見る