情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

枝野官房長官に抗議の内容証明を送りませんか?~あまりに非科学的な安全デマに唖然!

2011-07-10 09:39:02 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
 7月7日七夕の日、全国の笹には、原発事故収束を願う短冊が多く吊るされたことだと思う。その日、枝野官房長官は、参議院予算委員会で、放射線の影響について、「年間20mSvを超えると健康に影響が出るのか、妊婦や幼児への配慮がされているのか」という秋野公造議員(公明党)の質問(午後1時39分あたり)に対して、「20mSvという目安はICRPとIAEAの緊急時被爆状況における放射線防護の参考レベル(20~100mSv)のうちもっとも厳しい基準を採用しているものである。この基準は大人や子供を区別することなく適用される」としたうえ、次のように解説した。

 枝野官房長官「被爆した放射線量が100mSv未満では放射線が癌を引き起こすという科学的な証拠はない、ということでございます。100mSvを超えても、100mSv~200mSvの場合の癌になるリスクは喫煙や大量飲食・食事などの生活習慣を原因とする癌のリスクよりはるかに低い値であるとされているいます。したがって、年間20mSvを超えても健康に与える影響を過度にご心配される必要はないと考えています。なお、妊娠中の方、幼児へは特別な注意を払う必要があると勧告されているので、留意したい」と回答した。


 この回答にもびっくりしたが、秋野議員が丁寧な説明だと評価したのにも呆れた。

 ☆上記のやり取りは、参議院ネット中継(http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php)で確認できる☆

 枝野官房長官の説明は、採用すべき基準が間違っている、100mSv以下の影響をあまりに軽視しているという2点で完全に間違っている。

 枝野氏が説明した基準については、IDRPの勧告は枝野官房長官自ら認めるとおり、あくまでも緊急時被爆状況に関するものであり、今後数年間、数十年間同様の状況が続くことが予測される現時点では、事故収束後の基準である年間1~20mSvを採用するべきである。このことは原子力安全委員会ですら、【「福島県内の学校等の校舎、校庭等の利用判断における暫定的考え方」について】という文書(※1)で認めている。

 ※1:http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/04/1305174.htm


「国際放射線防護委員会(ICRP)のPublication109(緊急時被ばくの状況における公衆の防護のための助言)によれば、事故継続等の緊急時の状況における基準である20~100mSv/年を適用する地域と、事故収束後の基準である1~20mSv/年を適用する地域の併存を認めている。また、ICRPは、2007年勧告を踏まえ、本年3月21日に改めて「今回のような非常事態が収束した後の一般公衆における参考レベル(※1)として、1~20mSv/年の範囲で考えることも可能」とする内容の声明を出している。
 このようなことから、児童生徒等が学校等に通える地域においては、非常事態収束後の参考レベルの1-20mSv/年を学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安とし、今後できる限り、児童生徒等の受ける線量を減らしていくことが適切であると考えられる。」

 したがって、ICRPのもっとも厳しい基準を採用しているのではなく、もっともゆるい基準を採用しているというのが正確であり、事故後4ヶ月になろうとする今も、緊急時被ばくを前提とした基準を住民に押し付ける枝野氏は、もはや「鬼畜」といってもよいだろう。



 次に、100mSv以下の場合の影響だが、これは、アメリカの科学アカデミーのBEIR-VII(Biological Effects of Ionizing Radiation-VII、電離放射線の生物学的影響に関する第7報告 http://books.nap.edu/catalog.php?record_id=11340)において、科学的にどのように考えるべきかが示されており、それによれば、放射線の影響は、直線的なモデル、比例的に考えるべきだというのだ。
 
 

※2 第7報告の概要版 http://dels-old.nas.edu/dels/rpt_briefs/beir_vii_final.pdf

※3 一般向け概要版の日本語訳 http://archives.shiminkagaku.org/archives/radi-beir%20public%20new.pdf


 長くなるが日本語解説から引用する(14頁から15頁)。


【LNT モデルから推計されるほどには低線量は危険ではない、という見解を当委員会が採用しない理由

前節で述べたこととは対照的に、LNT モデルは低線量放射線の健康影響を過大に考えているという見解も委員会は入手している。リスクは LNT から推計できるものより小さいか存在しないかであり、あるいはむしろ低線量被曝は人体によい影響をもたらすこともある、という考えである。我々はこうした仮説も受け入れることはできない。たとえ低線量であっても何らかのリスクがあるらしいことを示す情報の方が優勢なのである。この「要約」で行った単純なリスク計算で示したように、低線量のリスクは確かに小さい。そうは言うものの、我々の採用したがんのリスクの基本モデルでは、たとえ被曝線量が少なくても少ないなりに発がんはもたらされるのである。
結論を導くにあたって BEIR Ⅶ委員会は、低線量においてしきい値が存在することや人体影響が低減することを論じた論文をレビューした。そうした論文の結論は、非常に低い線量での被曝は無害であるかあるいは有益でさえもある、というものだった。これらの研究は、生態学的な研究(特定地域に着目した疫学的研究)であるか、人体の全体をそれで代表させることはできない部分について得られた発見を引用している研究であった。
 生態学的研究は広範な地域特性の関連を調べるものであり、場合によっては、より精密な疫学研究が示す結果と比較するとがんの発症率がうんと大きくなったり小さくなったりすることがある。皆が合意できる見解は、研究の全体を見渡してみて初めて見出すことができる。そのようにして我々が得た見解は、電離放射線の健康リスクは、そのリスクは低線量では小さいわけだが、やはり被曝線量の関数になっている、ということである。
疫学研究でも実験研究でも、なんらかの相関が見出せる線量域なら線形モデルと矛盾するものは見出されていない。電離放射線の健康影響の主だった研究は 1945 年の広島・長崎の原爆被爆生存者を調べることで確立された。それらの生存者のうち 65%が低線量被曝、すなわち、この報告書で定義した「100mSvに相当するかそれ以下」の低線量に相当する。放射線にしきい値があることや放射線の健康へのよい影響があることを支持する被爆者データはない。他の疫学研究も電離放射線の危険度は線量の関数であることを示している。さらに、小児がんの研究からは、胎児期や幼児期の被曝では低線量においても発がんがもたらされる可能性があることもわかっている。例えば、「オックスフォード小児がん調査」からは「15 歳までの子どもでは発がん率が40%増加する」21ことが示されている。これがもたらされるのは、10 から 20mSvの低線量被曝においてである。
どのようにがんができるかについて線形性の見解を強く支持する根拠もある。放射線生物学の研究によれば、「可能な限り低い被曝でできる 1 本の放射線の飛跡は、標的となる細胞の核を通過して細胞のDNAを損傷する可能性が低くても一定程度はある」22。この損傷の一部には、DNAの短い部分に複数の損傷を起こす電離の「突出」があり、修復しにくく、まちがった修復が起こりやすい。委員会は、それ以下では発がんリスクをゼロにするしきい値を示す証拠はないと結論した。


                 結論

低 LET による低線量被曝の健康影響をどう理解するかについては難題をかかえてはいるものの、最近の研究のおかげで結論を述べても大丈夫な点も出てきた。BEIR Ⅶ委員会の結論は次のとおりである。電離放射線の被曝とそれによって誘発された人間の固形がんの発生の間には線形の線量-応答関係が成り立つ、という仮説は最近の研究が示す科学的証拠と矛盾しない。当委員会は、それ以下だとがんは誘発されないというしきい値が存在するとは考えないが、ただ、低線量域でのがんの誘発はあっても少ないだろうとみなしている。当委員会は、他の疾患(例えば心臓病や脳卒中等)は高レベルの被曝によって引き起こされるとみなしてはいるが、低線量被曝とがん以外の疾患の間にもしかして成り立っているかもしれない線量-応答を評価するにはもっと多くのデータが収集されねばならないと考えている。】


 このように、アメリカ科学アカデミーは直線的、比例的な考え方によるべきであることを結論づけている。この考え方は、原子力安全委員会が依拠するICRPは、直線的なモデル、つまり、これ以下なら安全という量はないことを前提としたモデルによることを明らかにしており、私の質問に対し、原子力安全委員会もそのことを認めた。


 そのうえで、アメリカ科学アカデミーは、その考え方に基づいて、癌の発生リスクを説明している(※3の11頁)。

 【BEIR Ⅶ委員会は、低線量の低 LET 放射線への人間の被験者の被曝に関して委員会としては最良のリスク評価を行い、第 12 章に載せた。本報告書のデータに基づくリスクモデルが放射線被曝のリスクを評価するのにどのように使われるのか、その一例を図 PS-4 に図示している。この例では、1 人あたり 0.1Sv で予想されるがんリスクを計算している。このリスクは性と年齢に依存し、女性や低年齢で被曝した人では高くなる。平均では性と年齢の構成が米国の全人口と同じであると仮定すると、BEIR Ⅶ生涯リスクモデルでは 0.1Sv の線量により 100 人中約 1人にがん(固形がんか白血病)が発生すると予想でき、一方、他の原因では 100 人中約 42 人に固形がんや白血病が発生すると予想される。線量が低ければそれに比例してリスクは低くなる。例えば、
0.01 Sv の被曝では 1000 人に約 1 人ががんになると予想される。】

 つまり、0.01Sv=10mSv被爆すれば、1000人に一人が癌になる可能性があると考えるべきだということだ。もっといえば、癌で死ぬ人は、10mSvの場合、2000人に1人現れる可能性がある(これは1Sv=1000mSvの場合の癌死が5%であることから導かれる)。この10mSvにおける2000人に1人という癌死可能性の割合を多いと考えるか、少ないと考えるか、人によって違うだろう。

 たとえば、平成21年の交通事故死者数は4914人だ(http://www.npa.go.jp/toukei/kouki/0102_H21dead.pdf)。これを1億2000万人で割ると、交通事故で亡くなる人の割合は0.004%となる。

 10mSv/年の量が1年間継続した場合は、0.05%だから、交通事故死の可能性の10倍ということになる。

 ここでやっかいなのは、交通事故や喫煙などのリスクは自分である程度コントロールできるが、放射線被ばくはそこに住んでいる限り、なかなか低減できないということだ。

 枝野官房長官は、年間10mSv被爆する人を何人と見込み、それが原因で癌死する可能性のある人が何人増えると見込んだ上で、「過度に心配する必要はない」というのか?

 近いうちに内容証明郵便で公開質問状を送りたい。今日は疲れたので、ここまでにさせてください。



●日本、特に東北・関東の保護者必読の書●

「ICRP Publ. 111 日本語版・JRIA暫定翻訳版」(http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15092,76,1,html)

「緊急時被ばく状況における人々に対する防護のための委員会勧告の適用(仮題)=109」
(http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15290,76,1,html)

アメリカ科学アカデミーの文献「BEIR-VII」(Biological Effects of Ionizing Radiation-VII、電離放射線の生物学的影響に関する第7報告)
http://archives.shiminkagaku.org/archives/radi-beir%20public%20new.pdf






◆東電本社の記者会見は、午前11時~正午から始まる単独会見、午後5時ごろからの統合本部会見の2回となっている。インターネットで生中継と録画配信されている◆

 → ニコ生 http://live.nicovideo.jp/ 

   岩上さんのサイト http://ow.ly/4wCEr





◆以下参考◆


原子炉建屋とタービン建屋の図。クリックで拡大できます。

   ↓

 


【日弁連会長声明】
「東北地方太平洋沖地震による福島第一原子力発電所の事故に関する会長声明」 http://ow.ly/4n21n

●今後想定されるあらゆる事態、並びに、各地の放射能汚染の実情と被曝による長期的なリスクに関する情報、被曝防護に関する情報を正確かつ迅速に国民に提供し、適切な範囲の住民を速やかに避難させるよう求めるとともに、原発の新増設停止、既存原発についても電力需給を勘案しつつ危険性の高いものからの段階的停止を提言



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Marine in Futenma must go back to your country. There is no place where the base of Marine is acceptable in Japan.

Okinawa and a lot of Japanese oppose the transfer of the Futenma base to Henoko


At least180 MPs of ruling parties say NO to Futenma relocation within Okinawa. Check this http://bit.ly/9jQIW8



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