水中写真家の中村征夫氏のもとで11年間アシスタントを務め、今年(2011年)2月に独立した。「長いですよね。でも学ぶことは多かったし、弟子生活の後半はある程度自由にやらせてもらったおかげで居心地がよくて…」と笑う。独り立ちを機に、16年にわたって取り組んできた「水俣の海」の写真を新宿エプサイトギャラリーで展示(6月9日まで)、本誌6月号「日本うるわし列島」にも発表した。
熊本県の出身。大学生のころにダイビングを始めて水中世界の魅力を知り、写真家を志す。地元で広告カメラマンとして働いていた1995年、地元に近い水俣で、かつて汚染された魚の拡散防止のために設けられていた“仕切り網”を一部撤去するというニュースを聞いた。ひと目見ようと潜ってみたら、衝撃を受けた。
「想像していたのと真逆の世界。“死の海”というイメージを抱いていたのに、網に沿ってスズメダイがぎっしりと群れていた。そのたくましさに感動した」。上陸するなり仲間に宣言した。「私、この海をずっと撮る」。思いが高じて5年後、水中写真の第一人者のもとに押しかけ、今につながる。
今回のフォトギャラリーでは水俣の海のほか、「動物愛護センター」「被災地の動物たち」「海女」のテーマの写真を紹介した。数年前から動物愛護センターで、殺処分される動物たちを撮影している。今年5月には、震災の被災地におもむき、取り残された動物たちを撮影してきた。「そこには生きている命がある。そのことを伝えたい」と語る。
『ナショナル ジオグラフィック日本版』2011年6月号「日本うるわし列島」に、写真を追加して掲載した。