BOPビジネスの次の波をリードするもの

NextbillionにBOPビジネスと社内社会起業家(ソーシャルイントラプレナー)についての良記事があったので紹介です。BOPビジネスの定義もいろいろあるようですが、貧困の削減に資するビジネスを目的としたとき、そのための意志決定を企業が下すことはまだ難しい。そんな中でもミッションを持って組織を動かしていく社内社会起業家について、その課題と提案についてまとめられています。個別の事例についてもリンクを張ったので、参考になればと思います。原文はこちら、以下和訳要旨です。

================

あなたのGoogleアラートが、私のように設定されていたなら、誰もみなピラミッドの底辺(BOP)の開発を担う手段として、市場ベースの活動、つまりビジネスの可能性に気付き始めていることが分かるかもしれない。そこには確かに、貧困の削減という社会的価値追求しながら利益を上げるビジネスになると信じる理由がある。これは、大企業がダブルボトムラインの取り組みとして、真剣にビジネスと貧困の削減を両立するアプローチを取ることにつながるかもしれない。

しかし、現状を見てみると、それができている企業はほんの一握り。ほとんどの企業は近づくことすらできていない。

この疑念は、私が某戦略コンサルティング機関と共に、ビジネスリーダーたちに対して行った簡単な調査の結果からも見受けられるものだった。調査の明確なメッセージは、ほとんどの多国籍企業は、まだBOP市場、ソーシャルビジネスの領域を、ニッチで自社にとって魅力的なビジネス機会であるとは捉えていない、もしくは、現段時点では高い費用を払ってコンサルタントを雇ってその実現可能性を調査するような段階ではないと考えているようだ。

Dalberg Global Development Advisorsのポール・カランは、最近いくつかの企業については、”いくつかの業種、例えば農業と食糧、天然資源や電気、ガス、水道などの分野では、 BOP層の人々を消費者もしくは生産者として包括し、魅力的なビジネスを成功させている。しかし、他の多くの企業にとって、BOPビジネスの機会は十分に開けておらず、高い内部収益率というフルーツが手の届く低い位置にぶらさがっているということはない。これらの企業にとって、多くのBOPビジネスのアイデアがあったとしても、そこに投資する時間と労力を正当化することはできないでいる。新たな市場を学ぶこと、新しい価格設定をすること、新しい流通網を築くこと、新しいカルチャルキャパシティを開発すること、新しいコンピタンスを築くこと、経営者にとって単純にこれらに投資をして充分なリターンは見込めないというのが現状なのだ。

もちろんだからと言って、それが起こりえないと言っているのではない。


企業とは「人」でもあるということ

私たちはしばしば、”企業(Corporation)”について議論する際に見落としていることがある、それは、企業が「人」によって構成されているということだ。これらの人々の多くは、世界でよいことをなすこと、とそれによって儲かる仕事をすることを心がけている(Doing Well by Doing Good)。彼らが故郷と呼ぶ企業のとっての価値を創造しながら、同時に積極的に開発の問題に対処するために自分の身をささげているのだ。このように、大きな組織の中で社会問題の解決と経済的リターンなを両立するソリューションを開発する人々は「社内社会起業家(Social Intrapreneurs)として知られている。

社内社会起業家がBOPビジネスの参画に際して重要なのはなぜか。先進的なBOPビジネスやソーシャルビジネスの事例はどれも社内社会起業家が大きな役割を果たしている。例えば、CEMEX社のパロチモニオ・ホイ、ボーダフォンのM-PESA、モルガンスタンレーのマイクロファイナンスユニットなど、これらの事例には社内起業家の存在が共通している。(このあたりの事例はこちらのレポートのまとめられています)

社内社会起業は、簡単なビジネスではない。普通のスタートアップ(ベンチャーを起こす)ことによって得られる名声と栄光は、これらの企業内チェンジメーカーには浴びさられていない。しかし、彼らは既存の企業構造の中で働き、官僚的な組織ジャングルの中を深い信念を持って歩きまわり、社会のニーズに有益なソリューションを生み出していく。時には彼らは重宝されるが、未だ多くの場合は敬遠されている。彼らのアイデア(しばしNextBillionでもとりあげられるようなもの)は、時代の先を行くものであり、時に企業の現状を批判するものにすら映る。社内社会起業家達はそれが好きなのだ、だからやる。 彼らは、ソーシャルミッションによって動く生き物だ。CEOにとって、BOP市場を獲得するために大規模な企業戦略を方向づける意味を見いだせていない一方で、社内社会起業家達はそこに生まれるより大きなリターンを探し求めている。

社会起業家の情熱と企業のリソース、塾達したマネジメントを組み合わせることで、強力なチェンジメーカーの雑種を作り出すことができる、それに疑いの余地はない。こうした社内社会起業家は、企業をBOPビジネスのフィールドにリードすることができる。企業が邪魔さえしなければ。


障害物となるもの

より多くの企業が積極的に社内社会起業家を育み、活かしたいのであれば、私の経験から二つの大きな障害が存在しており、これらを考えることが重要となってくる。

強固な「管理」のマインドセット:当然のことながら、誰しもがプラハラードやハートの考えに精通しているわけではない。 「経済底辺の「どこ」にあるFortuneだって??”」と言って、しばしば、中間層以上のレベルのマネージャーたちは、BOPビジネスやソーシャルビジネスといった従来の枠組みを逸脱したものを理解するのに難色を示す。企業階層の下の方からアイデアや提案が来ている場合はなおさらだ。

サポートに消極的な内部環境:大きな企業は創造を絶するほどの数のアイデアを殺してきた。今日の素晴らしい発展的な製品サービスは大企業から生み出されたにも関わらず、多くの企業がイノベーションを生み出し、その種を育むことに熟練していない。インスピレーションの源泉を提供するために、Googleのような”20%ルール”を提供している企業もあるが、ほとんどのアイデアは、実現からはかけ離れてしまっている。

もちろん、これ以外にも多くの障害は存在している。もしかしたら特定の産業にはBOPビジネスへの適切な関与の機会すらないかもしれない。そして進めるにあたっても、アイデアの実行可能性への不確かさ、プロジェクトの資金の不足、社会的インパクトのためのアイデアの不足、プロジェクト管理のための専門知識の不足などの問題に直面するだろう。しかし、次のパトリモニオ・ホイやM-PESAを生み出す成功した社内社会起業家はこうした問題を克服することを得意としているのだと言える。

こうした障害物はよく見受けられるものだろう。新しいアイデアを実現させようとするときにはきまってこうした問題に直面しているはずだ。以下、これらの障害物を実際に克服し、社内社会起業家としてアイデアを実現していくためのステップを示唆する。とらわれたマインドセットを変革し、広いレベルでの社内のサポートを提供することで、きっと道は開かれるだろう。


社内社会起業家ムーブメントをサポート

もしあなたが企業のリーダーで、今後のソーシャルインパクトとビジネスのあり方が生み出す大きな波に真摯であるならば、以下の提案を読んでみてほしい。もし、あなたが今、もしくは今後意欲的な社内社会起業家であなたの会社の方向を変えようとしているならば、そのタスクの大きさに落胆することはない。あなたをサポートするために、そこには新たな領域が出現しつつある。そして、忘れてはいない、その領域は我々がこの場を借りて会話をしている、「あなた」のような先進的な人々のためだということを。

上級幹部の人達を関わらせる:

ただメモをメールで送ったりしてはいけない。 パワーポイントのスライドを作って終わってしまってはいけない。社内社会起業家として、本当の意味で事業創造に関与するとはどういうことかを考えてみてほしい。どうすれば、シニアリーダーは次のようになりますかについて考えてみて欲しい。どうすれば上級幹部の人々が「理解した」ことを確認できているだろうか?? その一つの手段として、現場に入り、現地の文化に浸りながら問題解決に思考錯誤することは大きな衝撃を与えるだろう。IBMのCorporate Service CorpsアクセンチュアのDevelopment PartnersPwCのUlysses Programなど、これらのプログラムは実践的な経験を通してBOP層に対する理解を促す有効性を物語っている。これらのプログラムでは、企業上級幹部などのリーダーとなる人々を、同社が今後より多くのビジネスを行っていきたいと考えている市場へ送っているものだ。リーダー達が現地の文化に浸りながら現実の問題解決に参加して経験を養っていく。これらのプログラムは時間がかかるものだが、取締役会、スライドデッキ、ワークショップなどホームオフィスでは到底提供することができないような結果を生み出すことができる。もしあなたが社内社会起業家であるならば、もしかしたらリーダーとなる人々全員をフィールドトリップに招待することはできないかもしれないが、オフィスに人を招いて社会的企業とは何かということをレクチャーすることくらいはできるだろう。

文化を創る:

企業文化は一晩で変わるようなものではない。しかし、意味のある分析やスマートな優先順位の設定はあなたが思っているよりずっと早く、あなたを正しいコースに導くことができるだろう。まずは、”企業文化の調査”から始めてみよう。これは企業全体で実施することも、もしくは20人程度のあなた自身のチームを対象に行うことができる。あなたの会社のコミュニケーションを調べてみよう。従業員がフィードバックを提供することはできるだろうか?彼らはフィードバックを行っているだろうか?インセンティブ設計の分析、会議の構造、製品/プロセスの開発、これらはどのようにしてつながっているだろうか?どこにいけば新しいアイデアは脚光を浴びるだろうか?そして最も重要なことだが、従業員はこのこと、つまりBOPビジネスやソーシャルビジネスについてどう思っているだろうか?

イノベーションのインフラを築く:

アンドリュー・ハーガドソンが「Network Theory of Innovation」の中で論じているように、イノベーションとは「テクノロジーの仲介者」によって生み出される。つまり、”遠い世界の橋渡し役”として、既存の人々やアイデア、目的を新しい組み合わせでアレンジするときにイノベーションが生まれるという考えだ。こうした仲介者は社内社会起業家になるのにうってつけのポジションにいるといえるだろう。ボトムアップのイノベーションは、アイデアがリソースと結び付く場所を必要としている。現実的な具体案としては、ソーシャルインパクトタスクフォースを設置、年次で「Meeting of the Minds」を行う等が含まれるだろう。オンライン上でのインフラも、ソーシャルメディアやアイデアコンペの出現が物語っている。インフラはGoogleの20%ルールのように「時間」、ボーダフォンのSocial Innovation Fundのように「お金」という形で整備される。繰り返すが、もしあなたが地に足付いた変化を起こしたいなら、企業の仕組みを一晩で変えようなどとはしないことだ。小さくはじめよう。そして、議論や改善の余地を残しつつ、少しずつ前に進むのだ。


その時は今

こうした社内社会起業家のための環境を作ることは、言うならば終わりのないプロセスである。それにもかかわらず、多くの人々は着実に進んでいるように見える。彼らが自分達のカードを正しく使うなら、企業のリーダー達が次の大きなビジネス戦略を描くことは必要ないかもしれない。社内社会起業家達が今後も進み続け、そして彼らの障害物が取り除かれるのならば、私達は今後多国籍企業によって生み出されるイノベーションを目にすることができるかもしれない。そして、より深いレベルでのBOP層と企業との関わりを生み出していくために、より多くの社内社会起業家を生み、彼らが力を発揮するための環境を整備する時なのである。

    • ツバメ
    • 2011年 4月 28日

    BOPとクラウドを結びつけて何かできないかと考えてます。。。。

  1. buy cheap china Jaguars jerseys free shipping and cheap jerseys free shipping by official cheap china Jerseys and wholesale jerseys shop. easy 365-days returns.

  1. トラックバックはまだありません。

コメントを残す