国歌不起立、都立校教職員らの処分取り消し 東京高裁判決
卒業式などで国旗への起立や国歌斉唱をしなかったために懲戒処分を受けたのは不当だとして、東京都立高の教職員らが処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が10日、東京高裁であった。大橋寛明裁判長は「懲戒処分は重すぎて裁量権を逸脱している」として、処分を適法とした一審判決を変更、167人の処分を取り消した。原告側逆転勝訴となった。
思想・良心の自由を侵害するとの原告側主張は退け、損害賠償は認めなかった。
大橋裁判長はこの日、別の同種訴訟でも元教職員2人の処分を取り消す判決を言い渡した。都教育委員会が2003年に起立や斉唱を義務付ける通達を出して以降、国旗国歌を巡る都立高教職員らによる訴訟で、処分取り消しが認められたのは初めて。
大橋裁判長は判決理由で、都教委の通達について「教職員は上司の命令に従う立場にあり、一定の制約を受けることはやむを得ない」と指摘。通達やそれに基づく職務命令は適法で、思想・良心の自由を侵害しないと判断した。
そのうえで「懲戒処分はかなり情状の悪い場合にのみ行われるもの。原告らは真摯な動機から起立しなかったもので、式を混乱させる意図もなく懲戒は重すぎる」として処分を取り消した。
09年の一審・東京地裁判決は「処分が重すぎるとはいえない」として原告側主張を全面的に退けていた。
判決後に記者会見した原告の教員、真鍋善彦さん(57)は「(逆転勝訴は)まさかと思った。通達は生徒や保護者への起立・斉唱命令になりかねない」と話した。原告側弁護団は「都教委はただちに通達を撤回すべきだ」との声明を出した。
都教委の話 判決は大変遺憾。判決内容を確認して今後の対応を検討する。