情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

検察が弁護士との会話を可視化するのはOKらしい~秘密交通権訴訟佐賀地裁判決

2011-03-09 06:39:41 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 検察・警察は、自分たちの取り調べの全面可視化は拒んでいるくせに、弁護士との接見内容について、取り調べて、供述が変わったこと(最初は自白していたのに否認したこと)の信用性を打破しようとし、裁判所はそういう検察の手法を認めてしまった。


佐賀新聞によると、【佐賀地検の検察官が容疑者と弁護士の接見内容を聴取して調書化したのは、憲法が保障する「秘密交通権」の侵害だとして、県弁護士会の富永洋一弁護士(32)が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、佐賀地裁は17日、「検察官による接見内容の聴取は違法とはいえない」として、請求を棄却した。原告弁護団は「承服できない」として即日控訴した】という(http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.1788491.article.html)。

 この17日と言うのは、昨年の12月のことだが、皆さん、ご存知でしたか?

 おいらは、まったく知らんかった。

 ひどい話だ。【判決理由で野尻純夫裁判長は、検察官が接見内容を聴取した目的は、容疑者が弁護士との接見で自白から否認に転じた供述の信用性を確かめるためで、「目的の正当性や必要性、聴取した内容の範囲に照らして違法とはいえない」と判断した。】ということらしい。

 取り調べが可視化されているなら、まだ、納得できる。普通に取り調べをしていることがテープに残され、そのうえで、弁護士と接見した後、急に否認した場合には、いったい、なぜ、否認に転じたのかを聞きたくもなるだろう。

 しかし、取り調べが可視化されていない状況で、これはない。

 強引に(虚偽の)自白をさせておいて、弁護士と接見して、やっていないなら自白するべきではないとのアドバイスを受けて、次回の取り調べの際、必死の思いで、自白を撤回したところ、検察が、「ふざけんな、てめぇ。あんな弁護士の言うことを聞いていると罪が重くなるばかりだぞ。だれが求刑すると思ってるんだ。判決は求刑の8割と相場が決まってるんだ。おれをおこらせるなよ」等と言って、自白を撤回させる。その際に、いったん、否認に転じたことを説明する必要があるため、弁護士との接見内容を詳しく聞き、そのままは書けないのでアレンジして調書を仕上げる…というようなことが起きていることは容易に想像できるからだ。

 裁判所がこういう判決を出すから、検察が可視化に応じなくてもいいと強気になるわけだ。裁判員制度による訴訟が始まったにもかかわらず、こんな判決出していていいと思っているのが怖い…。


地元佐賀県弁護士会は次のような声明を出している(http://www17.ocn.ne.jp/~sagabgsk/seimei/101224.pdf)。


                会 長 声 明

当会所属の弁護士が担当していた刑事事件において,弁護人と被疑者との接見内容を検察官が聴取し,供述調書化したうえ,公判において証拠として請求したことが,弁護人の秘密交通権を侵害する違法な行為であるとして提起した国家賠償請求訴訟において,佐賀地方裁判所は,今月17日,秘密交通権が捜査機関の捜査権に対し絶対的に優越するものではないとした上で,「聴取の目的の正当性,聴取の必要性,聴取した接見内容の範囲,聴取態様等の諸般の事情」という基準により,捜査機関が事後的に被疑者・被告人と弁護人の接見内容を聴取することも許されるという判決を言い渡した。

 弁護人と被疑者・被告人との秘密交通権の絶対的保障は,充実した情報伝達を確保することで相互の信頼関係を形成するとともに,有効かつ適切な弁護活動を可能ならしめるための最も重要な,弁護人固有の基本的権利の一つである。

 この点,被疑者・被告人と弁護人との秘密交通権については,既に鹿児島接見交通権侵害訴訟において,捜査機関が,立会人なくして行われる被疑者・被告人と弁護人との接見内容を事後的に聴取することが,双方の情報伝達や援助に萎縮的効果を生じさせるものとして秘密交通権の侵害となることが明確に判示されていた。

 これに対し,本判決は,弁護人と被疑者・被告人の接見内容について,捜査機関が必要と判断しさえすれば,同判決が定立した曖昧な基準とも相まって、無制限に聴取することを許容することにもなりかねないもので,秘密交通権の重要性を認めた鹿児島接見交通権侵害訴訟判決を大きく後退させる内容であるばかりか,弁護活動における秘密交通権の重要性を看過し,秘密交通権の保障を形骸化させるものになっている。

 また,本判決は,相弁護人が報道機関の取材に応じたことが秘密交通権の放棄には当たらないが,被疑者と弁護人の接見内容が報道により検察官の知るところとなったことから,検察官において被疑者と弁護人の接見内容に高度の秘匿性はないと判断したこともやむを得ないと判示した。

 報道機関の取材に応じたことをもって秘密交通権の放棄にあたらないことは当然であるが,本判決のように検察官の主観を基準に違法か否かを判断してしまうと,弁護人が取材に応じた内容については捜査官が秘匿性なしと主観的に判断しさえすれば全て違法性がないことになってしまいかねない。とりわけ社会的耳目を惹く事案では,報道機関に対して被疑者・被告人の主張等を公表することも弁護活動の一環として必要な場合もありうることからすると,本判決のように違法か否かの判断をいわば対立当事者の立場にある捜査官の主観に委ねる基準では接見や取材対応等の弁護活動に萎縮的効果を及ぼすばかりか,秘密交通権の保障を骨抜きにしかねないのであるから,この基準は極めて不合理であるといわざるを得ない。

 平成21年5月から被疑者国選弁護人対象事件が大幅に拡大されたことにより,被疑者段階で弁護人が被疑者との接見を行う機会が大幅に増加しており,そのことは同時に捜査機関により接見内容が聴取される危険性もまた圧倒的に増加したことを意味する。
このような状況において,当会は改めて弁護人と被疑者・被告人との秘密交通権の重要性を確認し,弁護人の秘密交通権が形骸化され,弁護活動が不当に制約されることがないように断固とした態度で臨む決意であるとともに,弁護人と被疑者・被告人との秘密交通権の重要性を確認し,より一層充実した弁護活動に取り組む決意である。
2010年12月24日
佐賀県弁護士会
会 長 池 田 晃 太 郎






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