福島県南相馬市からの報告を続ける。

 福島第一原発から20キロの立ち入り禁止ゾーン境界線に行ってみた時のことだ。幹線道路である国道6号線が田んぼの真ん中で封鎖され、検問ができていた。見慣れた電光掲示板に「災害対策基本法により 立ち入り禁止」という文字が流れ、10人ほどの警察官が立って車を止めている。

 「ここから先は行けないんですか? 報道記者なんですが」

 私も聞いてみた。

 「申し訳ないのですが、ダメです」

 「京都府警」(応援だろう)の文字がヘルメットに読める若い警官がそう言った。

 検問の風景を写真に撮ることにした。ちょうど夕方6時ごろだった。西の稜線に日が沈む。野桜が満開だ。あたりが茜色に染まって美しい。

立ち入り禁止地域から出てくる土木作業服の若者たち

 検問の周りを1時間くらいうろうろしていて、不思議なことに気付いた。無人地帯になっているはずの20キロラインの内側から、自動車が次々に現れたのだ。

 白いワンボックスカーに若者が数人乗っている。望遠レンズで覗くと、土木作業服を着ていた。靴を脱ぎ、足をダッシュボードに投げ出してたばこを吸っている。

立ち入り禁止区域から続々と自動車が出てくる(筆者撮影)

 続いて、白いトラック。ボディに「××工務店」の名前が見える。白い軽ワゴン車。ダンプ。どんどん出てくる。

 警官がそのたびに止め、何か書類をチェックしている。誰も防護服など着ていない。

 ふと見ると、警官が私の方に駆け寄ってくる。

 「すみません、写真はやめてもらえますか」

 「どうしたんですか?」

 警官は車の方を振り返った。

 「何だか、ダメらしいです」

 私はカメラを降ろした。前を通る車から、運転席の若者がこちらをにらみつけていた。何だかピリピリした雰囲気だ。

 1台だけ、白い防護服を着た2人組の乗った軽ワゴン車が通った。検問を出たとたん、道路わきの駐車場に車を入れ、外に出て防護服を脱いだ。そして走り去った。