國松明日香展については、図録で、札幌芸術の森美術館の岩崎直学芸員が、気合の入った論考を書いていますので、筆者ごときが付け加えることはほとんどありません。
筆者はこれまでは、フォルムのことを中心に考えてきましたが、岩崎さんの文章を読むと、周囲の自然や風景を反映するという、國松さんの彫刻のもうひとつの特色についても考えさせられます。
というのか、今回の個展は、とりわけ、北海道の自然を、そのまま写すのではなく、そのスピリットとでもいうべきものをたくみに翻案した作品が、とても存在感をもって、設置されているといえそうです。
(なお、作品画像は美術館の許可を得て撮影しています)
冒頭は、館の中庭(むかし、一時イサム・ノグチの石彫が置かれていたところ)に展示されている「風のコンダクター」の3点(1994-95年)。
「アラベスクな街」と題された3点。
いずれも1987年の作品で、今回の展覧会では最も古い時期のものです。
作品の性質上、撮影する角度によって、見た感じもかなり変わってきます。
ところで、國松さんは60点ものパブリックアートが道内外にありますが、その大半が、これと似た作風をもっています。
今回の展覧会にも、ふだんは手稲駅のコンコースに置かれている「雪だるまをつくる人」が出品されています。
1994年の「風のポロネーズ」3点をつなげて設置した会場風景。
鉄線による空間へのドローイングみたいな作品です。
かたちについて思考をめぐらせながら熔接にとりくむ國松さんの姿が目に浮かぶようです。
1987年「風」。
(この項続く)
2008年10月5日(日)-11月16日(日)9:45-17:00(入場-16:30)、11月10日のみ休館
札幌芸術の森美術館(南区芸術の森2)
一般700円、高校・大学生350円、小中学生150円
※野外美術館との共通券あります
●アーティストトーク=10月11日(土)14:00-14:40。要観覧料
●ミュージアム・コンサート=11月1日(土)14:00-15:10、展示室内につき要観覧料。土田英順によるバッハ「無伴奏チェロ組曲」など