「最悪の事態」は福島ではなく。

昨夜の大きな余震は、変電施設や女川原発など福島以外の電力関連施設に被害を与えました。

震災・原発事故に関して現時点で想定可能な「最悪の事態」は、「福島原発で何か起こること」ではありません。最悪の事態とは、数年以内に日本の別の場所で大地震が起こり、他の原発が福島と同様の事態に陥ることです。他の地震が、いつどこで起こってもおかしくない国に私達は住んでいます。


下記は過去20年間の(一定規模以上の)地震の記録です

・1993年 1月15日 釧路沖 - M 7.5
・1993年 7月12日 北海道南西沖 - M 7.8
・1993年 10月12日 東海道はるか沖 - M 6.9
・1994年 10月4日 北海道東方沖 - M 8.2
・1994年12月28日 三陸はるか沖 - M 7.6
・1995年 1月17日 阪神・淡路 - M 7.3
・1995年12月4日 択捉島付近 - M 7.7
・1997年 5月13日 鹿児島県北西部 - M 6.4
・1998年 5月4日 石垣島南方沖 - M 7.7
・1998年 8月20日 鳥島近海 - M 7.1
・1998年 9月3日 岩手県内陸北部 - M 6.2
・2000年 3月28日 父島近海 - M 7.6
・2000年 7月1日〜8月18日 新島・神津島・三宅島近海 - M 6.5、M 6.3
・2000年 8月6日 鳥島近海 - M 7.3
・2000年 10月6日 鳥取県西部 - M 7.3
・2001年 3月24日 芸予 - M 6.7
・2001年12月18日 与那国島近海 - M 7.3
・2003年 5月26日 宮城県沖(三陸南地震) - M 7.1
・2003年 7月26日 宮城県北部 - M 6.4
・2003年 9月26日 十勝沖 - M 8.0、最大余震 M 7.1
・2004年 9月5日 伊半島南東沖 - M 7.4
・2004年10月23日 新潟県中越 - M 6.8
・2004年11月29日 釧路沖 - M 7.1
・2004年12月14日 留萌支庁南部 - M 6.1
・2005年 3月20日 福岡県西方沖 - M 7.0
・2005年 8月16日 宮城県南部 - M 7.2
・2005年11月15日 三陸沖 - M 7.1
・2006年 4月21日 伊豆半島東方沖 - M 5.8
・2007年 3月25日 能登半島 - M 6.9
・2007年 7月16日 新潟県中越沖 - M 6.8
・2008年 5月8日 茨城県沖 - M 7.0 余震 M 6.4、M 6.3
・2008年 6月14日 岩手・宮城内陸 - M 7.2
・2008年 7月24日 岩手県沿岸北部 - M 6.8
・2008年 9月11日 十勝沖 - M 7.1
・2009年 8月11日 駿河湾 - M 6.5
・2010年 2月27日 沖縄本島近海 - M 7.2
・2010年12月22日 父島近海 - M 7.4
・2011年 3月9日 三陸沖 M7.3
・2011年 3月11日 東北太平洋岸・東日本 Mw9.0
・2011年 3月11日 茨城県沖で地震。M7.4
・2011年 3月12日 長野県北部で地震。M6.7
・2011年 3月15日 静岡県東部で地震。M6.4
・2011年 4月7日 宮城県沖 M7.4


ここでわかることは、「日本は今後も毎年、マグニチュード6,7,8,9の地震が起こり続ける国だ」ということです。上記を見る限り、「来年も地震はあるし、再来年も大地震はある」と思うのが普通でしょう。


★★★


次に、下記が日本の原発立地です。それぞれの名称に“原子力発電所”という言葉をつけてグーグルマップで検索すると、その原発の周囲30キロにどんな都市、施設、交通機関(高速道路、新幹線、空港)があるか簡単に確認できます。




・出展:日本原子力産業協会の原発立地地図



これらを見る限り、次の5年から10年の間に、日本のどこかで再びM8-9の地震があり、他の原発が福島と同じ状態になることは十分に想定できます。


多くの方と同様に、ちきりんも今回の災害からの日本の復興は十分に可能と考えています。けれど、数年以内に他の地震で別の原発が同様の事態に陥ったら、その時はほんとに THE END です。日本は「原発で死んだ国」として世界史に名を残すことになるでしょう。


私は原発に反対でも賛成でもありません。現実的に考えて今すぐ原発を全部止めるなんて不可能です。一方で今後の数十年は原発の新設も不可能でしょう。結局のところ「ゆるやかな脱原発」という「何も決められない日本」にふさわしい方法がとられるのではないでしょうか。

問題は「原発の新設」ができなくなることにより、どこの電力会社も「廃炉にすべき古くなった原子炉」をギリギリまで使い続けようとするだろう、ということです。それらは、万が一の際の被害を大きくしてしまいます。

また今後は、いったんなにかの事故で原子炉を止めれば再稼動させることが(住民の反対などで)難しくなるため、「できるだけ原子炉を止めたくない」という意識が現場にでてくるかもしれません。「異変に気が付いてしまえば原子炉を止めなくてはならなくなる。それはまずい。なので・・・」という想像はホラーです。


原子力発電反対も賛成もどうでもいいです。大事なのは早急に既存の原発の災害&事故対策を行うことです。「絶対安全だから、事故が起こった時にどうするか考えておく必要はない」とかいうアホみたいなことだけはもう言わないようにしたいです。


そんじゃーね。