2011年5月4日(水)、MBS(毎日放送)ラジオの「たね蒔きジャーナル」に、小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演されました。
番組案内
2011年5月 4日【水】
今日は「原発話」、2本立てです。
今夜も前半は、いつものように、福島第一原発をめぐる動きについて、京大原子炉実験所の小出裕章さんから話を伺います。
そして後半では、“原発推進派”で元原子力安全委員会委員長代理だった住田健二さんにスタジオに来ていただき、今回の原発事故について質問をぶつけます。
住田さんは、原発を推進する“原発ムラ”の重鎮でしたが、福島の事故を受けて、国民にお詫びする内容の「建言書」を発表。専門家の英知を結集してオールジャパンで、危機回避に当たることを提唱しています。
原発事業を進めてきた立場から、今の福島原発事故をどのように見ているか、詳しく話を聞きます。
録音
今回も、小出氏出演部分を録音・公開してくださっている方がいらっしゃいます。
【福島原発】5/4/水★3号機の爆発は水素爆発か?核爆発ではないのか!
参考動画
この日のリスナーからの質問で参照されている、3号機の爆発についての見解です。
福島第一原発3号機の爆発についての解説 4月26日
高崎での放射性核種の検出について
今回の放送で取り上げられている高崎での観測についての記事です。
高崎に設置されたCTBT放射性核種探知観測所における放射性核種探知状況 (2011年4月28日)
要約
・(3月14日の福島第一原発3号機の爆発についてリスナーからの質問だが、これは水素爆発ではなく核爆発だったと米国の専門家が指摘しているようだが、どう考えるか?)核爆発(核暴走)が起こったかどうかについては、多分ないと思ってきた。が、包括的核実験禁止条約があり、そのための組織が監視をしており、日本では高崎の研究機関で大気中の放射性物質を測定している。その高崎の測定で、3月15日から16日にかけてヨウ素135が大量に検出された。ヨウ素135は半減期が6.7時間で寿命が短いもので、3日たてば1000分の1になる。3月11日に原子炉が停止していたのであれば、3月15日にはほとんど存在しないはず。測定が正しければ、ヨウ素135は3月14日以降に生まれた可能性は考慮すべきかもしれない。
・(水素爆発であれば膨大な量のヨウ素135が検出されることはない?)水素爆発だったなら、当然ない。水素爆発に誘発されて燃料プール中の使用済燃料が一定の場所に吹き飛ばされて(詰まって)、そこでウランの核分裂反応が異常に進んだという可能性は考えられる。ただし、高崎の測定機関が間違った情報を出したという可能性はあるため、注意しながら考える必要はあるが、測定データが正確であれば核暴走が起きたかもしれないと考え始めている。
・(このこととレベル7認定との因果関係あるのか?)ない。核暴走があったかなかったかとは関係なく、環境に出ている放射能の量は測定されており、大量の放射性核種が放出されていることは確定している。どういう原因で出たのかには関係なく、出てきた量に従ってレベルが決まる。
・(当初から核暴走の可能性が言われていれば、レベル7となったときのショックは大きくなかったかも?)3月15日の段階で私も他の専門家もレベル6〜7とみていた。
・(核暴走があったとすると、事故の受け止め方はどう変わるのか?)核暴走が日本の原発で起きるとは私も誰も思っていなかった。使用済燃料プールでそれが起こったという推定がなされており、これはすごく意外なこと。本当であれば日本の原発の安全性を再度考え直す必要がある。
・(核の暴走は終わっている?)終わっている。瞬間的に起きて終わる。ゆっくりだろうが一瞬だろうが、核分裂によって生成される放射性物質の種類はすべて同じ。
・(核暴走があったとすると対応は変わるか?)特に変わらない。実際に起こっていたとしても一瞬で終わっており、それから一ヶ月たっており、今現在の対応は変わらない。
・(多くのリスナーが聞きたかったということなので聞いた)私自身も情報が正確なのかどうか迷いながら答えた。
・(この後、原子力界の重鎮であった住田健二氏が登場する。小出先生とは意見が違う?)もちろん。彼は原子力の旗をふってきた中心人物の一人。ただし彼はとても率直だし、それなりに責任をとる決意を持っている人。JCOの臨界事故の時、彼は現場にかけつけて陣頭指揮をとって事故収束のために働いた。その働き方には文句をつけたいことは山ほどあるが、いまの原子力安全委員会と比べると、彼の果たした役割は大きかったと思う。
全体書き起こし(転載)
5月4日MBSラジオ小出裕章氏「3号機使用済み燃料プール内で核爆発が起きた件について」
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メインキャスター(以下「MC」):水野晶子
コメンテーター:近藤勝重・毎日新聞専門編集委員
※完全な文字起こしではありません。
また、誤字脱字等、ご了承下さい。
( )は補足等。
MC:京都大学原子炉実験所助教の小出裕章先生に伺います。
小出さん、こんばんは。
小出氏:こんばんは。
MC:よろしくお願いします。
小出氏:こちらこそ。
MC:東京には近藤さんがいらっやいます。
近藤氏:お願いします。
小出氏:はい、こんばんは。
MC:まず今日は、小出さんに多くのリスナーの方々質問が参っておりまして、
例えば、ラジオネーム(省略)さん他にも多くの方々から質問が来ている件で
伺いたいと思います。
福島第一原発の3号機の爆発についての質問なのです。
今インターネット上の動画サイトなどで、この件が話題を呼んでいるのだそうでして、
3月14日に3号機が爆発をしました、
これまで報道されているのは水素爆発だという事だったのですが、
水素爆発ではなくて、核爆発だったのではないか、
と海外から指摘されているという話があります。
これはアメリカの原子力の専門家が指摘しているものなのだそうで、
映像では「1号機などの水素爆発とは違って、3号機の爆発が黒い煙を上げている」
というふうにメールも頂いているのですが、
この件に関して、小出先生のご意見を伺いたいとの事です。
いかがでしょうか、伺ってよろしいでしょうか。
小出氏:はい、もちろん結構です。
核爆発、私達は核暴走という言葉を使いますけれども、
そういう事が、使用済み燃料プールの中の燃料で起こるというふうには
私は全く思っていませんでした。
MC:全くこういう事が、起こるとは思っていやっしゃらなかった。
小出氏:爆発は起きたのですね。
MC:それは確かですね、水素爆発と言われていました。
小出氏:ですから、私は、水素爆発だと思っていますし、
いずれにしても、水素爆発が起きた事は確実だと思いますけれども、
それに伴って核爆発、核暴走ですね、までが起きたかどうかという事に関しては、
たぶんないと、ずっと私は思って来ました。
所が、いろいろなデータが次第に出て来まして、
私が今一番注目しているのは、包括的核実験禁止条約というのがあって、
世界中のどこかで秘密裏に核実験が行われているかどうかという事を、
監視するための測定機関があるのです。
日本の場合はそれが(群馬県)高崎にあって、待機中の微量の放射性物質を
常に監視しながら、どこかで核実験が行われているかどうかという事を
ずっと監視している組織があるのです。
MC:国際的組織なのですか。
小出氏:国際的な、包括的核実験禁止条約を検証するための組織です。
そのための日本の組織もあって、それが高崎で観測を続けて来た訳ですが、
その施設でずっと放射能を計って来た所、
3月15日から16日にかけての空気中の放射性各種の分析も
もちろんしていたのです。
その日はちょうど東京にも物凄い濃密な放射性物質が飛んで来た日ですけれども、
高崎のその研究機関で測定した所、ヨウ素135という放射性核種が
大量にあったという報告がなされています。
ヨウ素135という放射性核種は、半分に減るまで6.7時間という
比較的寿命の短い放射能です。
MC:6.7時間で半分になる。
小出氏:そうです。
3日も経てば1000分の1になってしまう、非常に寿命の短い放射性核種なのです。
もし、福島の原子力発電所が、3月11日で停止したのであれば、
その時原子炉の中にあったヨウ素135は、
3月15日の段階ではもう殆ど無いと思っていいと思います。
MC:そうですね、3月11日から3月15日までの間に、
もう物凄く微量になっているはずですよね。
小出氏:そうです。
もう4日経っている訳ですから、何千分の1かになっているはずで、
ほとんど無いと言って良い位になっているはずなのですが、
その高崎で計っていた機関の測定結果によると、
膨大なものがあった、ヨウ素135が。
もしその測定値が正しいとすれば、
そのヨウ素135は、3月15日あるいは3月14日に
生みだされたと考える以外にありません。
そうすると、3月14日に3号機で爆発が起きたという、
その時に出来た可能性というのは、考慮すべきかもしれないと思います。
MC:という事は、3号機がもし水素爆発であったとしたならば、
この直後にヨウ素135(間違って145と発言)が
膨大な量で検出される事は考え難いのですが。
小出氏:水素爆発だけなら、もちろんそんな事はないのですね。
ですから、水素爆発に誘発されて、
使用済み燃料プール中の使用済み燃料というものが、
ある一定の場所に吹き飛ばされて、と言うか、集まって、
そこで再びウランの核分裂反応が異常に進んだ、
という状況を仮想するのです。
仮想するというか、そんな事があったという事がひとつの説明になるかもしれないと。
MC:この時間にヨウ素135(145と間違ったまま)が沢山あるという事の
説明のひとつとしてはあり得る、考え得るという事ですね。
小出氏:そういう事も考えなければいけないのかな、
と思うように今私はなっています。
MC:という事は、水素爆発はあって、それを引き金にして、
もしかしたら核分裂反応が使用済み燃料で進んだかもしれないという事。
小出氏:そのためのひとつのかなり有力な証拠というものが出て来ている訳です。
ただ、こういう放射性物質の測定というものは、
東京電力も何度も何度も間違えた情報を出して来た訳ですから、
高崎のその包括的核実験禁止条約を検証するための測定機関が
間違った情報を出した、という可能性もあると思います。
ですから、情報開示(声かぶってよく聞き取れず)は常に注意をしながら
考えなければいけませんが、もしその測定データが正しければ、
3号機の爆発というのは、ひょっとすると核暴走という事が起きたのかもしれない、
と今私は思い始めています。
近藤氏:先生、この事とレベル7との因果関係というものは無いのですか。
小出氏:ありません。
MC:それとは関係ない。
小出氏:はい。
要するに、核暴走が起きたか起きなかったかという事とは全く関係なく、
環境に出て来た放射能の量というのは、別に測定されている訳ですね。
多数の地点で。
それでもう大量の放射性核種が出て来てしまっているという事は
確定している訳です。
ですから、それが壊れて溶けてしまった原子炉の中から出て来たのか、
あるいは一時的に核暴走という事が起きて、
ある程度の量の放射性核種がその時に噴き出して来たのか、という事。
どちらでも良いのですけれども、もう出て来た放射性核種自身の量は
解っているいますので、
レベル7はもう動かない事実です。
近藤氏:それはそうなのですけれども、
当初からそういう形で核暴走という言い方を、我々が受け止めていれば、
レベル7と言われた時のショックというのは無かったか、解らないですね、
ある意味。
小出氏:そうですね。
もうでも、私も、3月15日の段階でレベル6は遥かに超えているな、
と思っていましたし、
政府の専門家達もその段階でレベル7だと思っていたと言っている訳です。
近藤氏:結果において、水素爆発と、今現在の受け止め方と、
どう違って来るのですか。
小出氏:もう核暴走なんて事は、
所謂日本で使っている原子力発電所で起きるなんて事は、
私も含めてたぶん誰も思っていなかったと思います。
それが、ましてや使用済み燃料プールの中の燃料で起きた、
というような事を、今私は言っている訳ですし、
そういう推定が、今ネット上でなされているのです。
物凄く意外な事が起きたかもしれない、という事を言っている訳で、
もしそうだとすると、原子力発電所の安全性を
もう一度考え直す事が必要になるだろうと思います。
MC:この核の暴走というのは、もう終わっているのですね。
小出氏:もちろん終わっています。
MC:それは一時的な事であった。
小出氏:そうです。
瞬間的に起きて、それで終わりです。
MC:そこから発せられる放射性物質の内容が違うというような事は
あるのですか。
小出氏:はい。
核分裂で出来る放射性物質は、全て同じです。
原子炉の中でゆっくり燃える量と核爆発で出来る量と同じですけれども、
短い寿命の放射性物質というのが、もし閉じ込めておけたのであれば、
すぐに無くなってくれるのです。
でも、核暴走というようなものが、
使用済み燃料プールという、むしろ剥き出しの場所で起きてしまうと、
短い寿命の放射性核種が沢山環境に出て来てしまう、
という事になる訳です。
それを、高崎の研究機関が検出したと言っているのです。
MC:では、今回もしその恐れがあったとして、
これからやるべき事、対応などが何か変わるかどうかについては
いかがですか。
小出氏:特別変わりません。
もう核暴走というのは一瞬で終わってしまっていますので、
それ以降もう既に一月以上経ってい訳で
それが起きたのか起きなかったのかという事で、
今現在の対応を変更する可能性は全くありません。
MC:では、この恐れがあったとしても、今私達が、
その事によって、何かあたふたしたり、むやみに不安がる事はない訳ですね。
小出氏:そうです。
MC:なるほど、そういう事ですか。
小出氏:はい。
MC:多くのリスナーの方が聞きたかったというふうに言ってらした事で・・・
小出氏:すみません、私自身がまだ情報が正確なのかどうなのかという所で、
迷いながらお答えしました。
MC:以前にも、小出先生がおっしゃった、
出て来ているデータが間違っていればいいのだけれどもとおっしゃっていたら、
本当に間違っていたものですから、ほっとしたという事がありましたよね。
小出氏:はい。
MC:まずは、そのデータの正しさがどうかという事も含めて、
今日はお話を頂きました。
小出先生、実はですね、この後大阪大学名誉教授の住田健二先生にご登場頂きます。
住田先生は、原子力学会の重鎮でいらっしゃると聞いておりますけれども、
小出先生とはやはりご意見がだいぶ違うお立場ですか。
小出氏:もちろんです。
彼は原子力の旗を振って来た、中心人物の一人ですし・・・
MC:推進していらした側の方。
小出氏:はい。
ただし、彼は大変率直な方です。
そして、それなりに自分で責任を取ろうという事の決意を持っていらっしゃる方で、
例えば、1999年にJCOという茨城県東海村の核燃料工場で
臨界事故という事故が起きた時には、
現場にいち早く駆けつけまして、現場で陣頭指揮を取って、
事故の収束のために働いたという方です。
まあ、その働き方に関して、私自身いろいろ文句をつけたい事は山程ありますけれども、
今現在の原子力安全委員会の働きぶりと比べると、
彼が果たした役割は大変大きかった、と私は思っています。
MC:そういう方なのですね。
この後、また住田先生にもお話を伺おうと思います。
小出先生、今日はどうもありがとうございました。
近藤氏:ありがとうございました。
小出氏:いえ。
MC:京都大学原子炉実験所助教、小出裕章さんに伺いました。
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