「うっかりツイート」で仕事を失ったジャーナリスト

  • author 福田ミホ
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「うっかりツイート」で仕事を失ったジャーナリスト

自戒も込めつつ...。

ジャーナリストニール・ローゼン氏が、やらかしてしまいました。彼はイラク情勢に関していくつもの著作があり、ニューヨーク大学フェローも務めていた人物です。が、先日多くの人にとって非常に不快なツイートをしてしまい、そのために大学の職を辞することになってしまいました。(彼のTwitterではその後謝罪のツイートがされ、この記事翻訳時点では更新を止めているようです)

ローゼン氏の問題のツイートは、エジプトのムバラク大統領が辞任表明した日、CBSの女性記者ララ・ローガン氏がタハリール広場で性的暴行を受けたことに関するものでした。こんな内容です。

「ララ・ローガンはアンダーソン(CNNの看板キャスター、アンダーソン・クーパー氏。体当たり取材で有名)を超えなくちゃいけなかったんだ。」

「まあ、彼女に起こったことは間違ってる。もちろんそれがいいとは言わない。でも、アンダーソンにも同じことが起こったら面白いだろうね。」

ローゼン氏はその後自分が引き合いに出したクーパー氏本人からCNN上でインタビューを受け、発言について謝罪し、ローガン氏への暴行が性的なものだったとは最初のツイートの時点では気づいていなかったと弁明しました。でも彼のツイートにはCBSニュースからの発表へのリンクが入っており、そこには性的暴行があった旨がはっきり記されていたのです。

クーパー氏は、ローゼン氏の説明が信頼性を欠くものだという態度を示しています。記事全体の中身を理解しないでそれにリンクするなんて、ありえないという姿勢です。

僕自身はローゼン氏が本当のことを言っているかわかりませんし、彼のツイートを擁護する気もまったくありません。でも、「リンク先の内容を全部読まないでリンクする」行為は、ありうると思います。ローガン記者への暴行が性的なものだったことは、CBSの発表全文、463文字をきちんと読まなければわかりません。そこまでしないことは、実は多いのではないでしょうか。ある記事についてツイートするときに、その記事全文を読まずにリンクを張るのは普通に行われているのではないでしょうか。

僕が中学生のとき、化学の先生が生徒に課題を進めさせるために、こんな風によく言っていました。「書け、考えるな。」

これはある意味、この時代のスローガンになりうるんじゃないでしょうか。

たしかにローゼン氏の発言は、一線を越えてしまったものかもしれません。でも、Web上では同じような脊髄反射的な発信が日常的に行われているんじゃないでしょうか。

ローゼン氏いわく、

つい口走るみたいな感じでツイートしてしまった。こうなるという予想はしていなかった、何も考えてなかったので...。その数分間、考えてなかったんだ、夜遅くベッドに横になっていて...ぼーっとネットを眺めていて...。」

彼はララ・ローガン記者についてのニュースを意識の端の方で捉えて、思いつきのジョーク(のつもり)を書き添え、送信ボタンを押してしまったんでしょう。「書け、考えるな」です。

なんだか身に覚えのある行動パターンです。テレビを見たり、お菓子を食べたり、適当なコメントを書いてポストしたり...。

Twitterでは、たった140文字に自分の考えを込めていますが、その「考え」自体が140文字相当程度になってしまうことも多い気がします。

ローゼン氏のツイートがWeb上を駆けめぐり始めると、彼はそれらを削除しました。彼がタイムマシンを作れれば、そうしたでしょうが、この時代の皮肉です。たとえ生煮えの意見であっても一瞬でみんなに行き渡ってしまい、取り返すことはできないのです。

書け、考えるな。昨今ついこの化学の先生の教えのように行動してしまいがちですが、少なくとも自分の意見を世の中に発表するときには、最適でない考え方のようです。

というか化学の授業でも、その教えが役立っていたのかは疑問ですが...。

[Politics DailyMediaITE]

Dave Pell(原文/miho)