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■熊澤桂子展 (4月29日で終了)

2010年05月04日 20時34分03秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 上川管内南富良野町と十勝管内浦幌町を往復しながら、ガラスを用いた現代美術の創作に取り組んでいる熊澤桂子さんの個展。
 今回も題材は、破棄される(た)ニンジン。
 ニンジンは富良野地方の名産ですが、形の悪いものは廃棄処分にされます。
 壁に投影された映像は、廃棄処分や選別作業を撮影した以前のフィルムに、すこし追加しました。また、ガラス作品は、捨てられるニンジンをかたどったものです。




 ハコの中に、おびただしいガラスのオブジェが並んでいるようにも見えますが、これは実は、ハコの内側の側面に、四方とも鏡を貼りつけてあります。
 
 上の画像では、白や赤に着彩しているように見えますが、実際のガラスは透明で、下から色の着いたあかりで照らしています。あかりの色が時間によって変わり、白一色になったり、赤いオブジェばかりになったりするときもあります。

 真上から見ると、こんな感じ。
 どこから鏡になっているか、よーく見るとわかります。




 




 黄緑のオブジェは14個。
 無色で、赤や白に光るのは12個。

 最後の写真にうつっている大きな白い縦長の箱には、くぐり戸のような穴が開いていて、中に入ることができます。
 やはり四方の壁は鏡で、自分の顔とにんじんオブジェが永遠の空間に向かってならんでいます。

 右側に、ランプのように天井からつりさがっているのは「twinkle carot」という作品。
 壁の高いところにも、とりつけられていました。


 今回、熊澤さんの作品を見て真剣に考えさせられたことがあります。
 それは「美」とは何か、ということ。
 熊澤さんのガラスのオブジェは美しい。
 しかし、元の形は、醜いからという理由で捨てられる運命にあるニンジンなのです。

 もちろん、「美」しいことの基準は、文脈(社会的な、あるいは、図像学的な)によって変わることはもちろん知っています。
 だけど、ここまで鮮やかに「美」と「醜」が入れ替わることは、めったにないのではと思います。


 秋にはふたたびギャラリー門馬アネックスで個展の予定ということです。


2010年4月21日(水)~29日(木)10:00~6:00
茶廊法邑(東区本町1の1)

熊澤桂子「こっけいにんじん」 (2009~10年)
熊沢桂子展 Carrot Tunnel(2007年)


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