池上さんだけじゃない!筆者が体験した「朝日新聞」もう一つの掲載拒否原稿を読者に問う

朝日新聞は、池上彰さんの連載「新聞ななめ読み」の掲載をいったん見合わせた後、9月4日付で掲載した。その経緯は、「池上彰さんの連載について おわびし、説明します」(→こちら)に書かれている。

8月27日、池上さんは朝日新聞に原稿を出し、翌28日、朝日新聞は池上さんに「このままの掲載は難しい」と伝え、修整の余地があるかどうかを打診した。池上さんは「原稿の骨格は変えられない」とのことで、掲載を見合わせとなった。9月1日夜、この両者のやりとりが外部に伝わり、2日にはネット上でも話題になり、朝日新聞への批判が高まった。このため朝日新聞は4日に一転、池上さんの原稿を掲載した。

これとほぼ並行して、実は筆者も掲載拒否を受けている。ただし、こちらは大きな話題にならなかったために掲載拒否のままである。

「高度すぎて理解できない」と一方的に通告

筆者が依頼されたのは、朝日新聞のジャーナリスト学校の発行する『Journalismジャーナリズム』という雑誌(販売は朝日新聞出版)の原稿だ。7月23日のメールで、アベノミクスをどう評価するかと同時に、安倍政権の経済政策や、メディアのアベノミクス報道に対する姿勢などを批判する内容の論考を9500字程度で依頼された。

原稿依頼はしばしばメールだけの場合もあるが、今回は担当者が事前に打ち合わせしたいと言うので、2度ほど当方から打ち合わせ時間を連絡したがうまくいかなかった。結局、8月11日14時から15時まで嘉悦大学の研究室で打ち合わせをした。

依頼メールからの打ち合わせの間の8月5日に、朝日新聞が慰安婦問題について過去の報道の一部を取り消す件があった。11日の打ち合わせではその話も出たし、「メディアのアベノミクス報道に対する姿勢などを批判する」ためには、朝日新聞を題材として取り上げるとこちらは言ったはずだ。

はっきり言えば、『Journalism』という雑誌はほとんど世間に知られていないのだし、ジャーナリスト学校を標榜する以上、それぐらいのことは許容範囲だと思っていた。担当者は「8月いっぱいまでに原稿を受け取り、社内で検討させてもらう」と言っていた。

筆者が担当者に原稿をメールで送ったのが8月29日深夜(30日2時46分)である。それに対して、担当者から掲載拒否のメールが届いたのは9月1日20時40分。拒否の理由は「内容が高度すぎて理解できない」というものだった。書き直す時間はないので、原稿料全額をすぐ支払う旨も付言されていた。原稿料などもらえば口封じになるかも知れないので、不要である旨、すぐメールで返答した。

筆者はこの時点で池上さんの話を知らず、翌2日にネットで初めて知った。池上さんの話はその日のうちに大きくなったが、筆者の件はその前日に少しツイートしただけなので大きな話題にもなっていない。

ただ、筆者は締め切りを守ったのに、いきなり「書き直す時間はない」と判断して、すぐ原稿料を振り込むと言ってくるのは、一方的な最後通牒である。書き直す時間があるかどうかは筆者が判断すべきで、朝日新聞側が判断するのはおかしい。

「内容が高度すぎて理解できない」というのは「内容が気に食わない」と同義だろう。もっとも、原稿で言いたかったことは、経済等の分野では不勉強な日本のマスコミはまともな記事を書けないということで、その主張を認めたということなのだろうか。

朝日新聞のジャーナリスト学校では、プロの仕事を担う記者育成を行っているらしいが、今回の筆者の例は、朝日新聞でジャーナリズムを知らない記者が出てくることを示唆しているのではないか。

ちなみに、筆者のような例はこの雑誌では珍しくないらしい。山形浩生氏のブログ(→こちら)や玉木正之氏のブログ(→こちら)でも似たような掲載拒否の件が報告されていた。

筆者も前例にならい、全文を公開しておく。朝日新聞編集委員の原真人氏の書いたものを批判しているが、ジャーナリスト学校からの依頼に即しているかいないか、読者の判断に委ねたい。以下、筆者が『Journalism』の依頼に応じて寄稿し、ボツになった原稿である。

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