高度AI(人工知能)が豊かにするゲーム体験

 本日2016年3月10日、株式会社ポケモンは、iOS、Android端末向けのスマートフォン向けゲームアプリ『ポケモンコマスター』の制作を発表した。ゲーム概要は既報の通りだが、本作は2016年春のサービス開始予定で、ポケモンのフィギュア(ゲーム内で入手する)を使って戦う戦略対戦ボードゲームとなる。

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 注目すべきは、遊びの大きな柱として最先端かつ高度なAI(人工知能)が用いられている点だ。開発を手掛けるHEROZ(ヒーローズ)株式会社は、世界最高峰のAIのコア技術を持ち、スマートフォン向けゲームアプリ『将棋ウォーズ』などを手掛ける企業。今回発表された『ポケモンコマスター』は、そんな先端技術を持つデベロッパーと、ワールドワイドなコンテンツ力を持つポケモンのコラボレーション企画となる。

 “人間の知能の代替”というような、汎用性のある分野から、Webサービスや自動車産業、金融工学への利用など、我々の生活をより豊かにするための技術の分野まで、現在、さまざまな角度の研究や議論が展開されているAI。近未来の技術と思われがちなAIだが、より身近な分野として、チェスや将棋、囲碁といったテーブルゲームなどに用いられる特化型人工知能(特定のタスクをより効率的に、賢くこなすためのコンピュータープログラム)の急激な進化が話題になることが多くなってきた。

 この分野の最近の出来事といえば、2016年1月、米国Google社が買収したスタートアップDeepMindが開発した、コンピュータープログラム“AlphaGo”(アルファ碁)が人間の囲碁の欧州チャンピンを打ち負かしたというニュースがある。人間のプレイヤー対AIという点では、80年代から90年代に掛けてチェスの世界チャンピオンとコンピュータープログロラムの対決が大きな注目を集めていたが(1997年にIBM製コンピュータ“ディープ・ブルー”が初めて世界チャンピオンに勝利)、テーブルゲームの中でもっとも複雑な思考が必要とされる囲碁で、AlphaGoが人間のトッププレイヤーに勝利した事実は、世界に衝撃に与えた。
※現在、AlphaGoは世界チャンピオンである韓国のイ・セドル九段との5連戦中。2016年3月9日に行われた第1局はAlphaGoが勝利を収めている。

 テーブルゲームにおける特化型人工知能の開発は、海外だけでなく、日本でもひとつのトレンドとなっている。将棋でプロ棋士とコンピュータ棋士が戦う“将棋電王戦”(主催:ドワンゴ)が盛り上がりを見せているほか、前述の“AlphaGo”の偉業を受け、2016年3月1日、ドワンゴ社・川上量生会長は、“DEEP ZEN GO プロジェクト”を発表。囲碁ソフトZENの研究開発を積極的に推進し、Google社の“AlphaGo”に対抗しうるソフトの開発を目指すことを宣言した(HEROZ社・将棋ソフト“Ponanza”開発者でもある山本一成氏もこのプロジェクトに参加している)。

超高度AI(人工知能)が生み出すまったく新しいポケモンの遊び! 最新スマホゲームアプリ『ポケモンコマスター』開発キーパーソンに聞く、本作の凄み_02
▲ニコニコ超会議2014に出展された“電王手くん”。来場者がプログラムAIと対局することができた。

 さて、前置きが長くなったが、なぜ上記の話をしたかというと、『ポケモンコマスター』に実装されるAIをプログラムしたHEROZ社・平岡拓也氏が、世界コンピュータ将棋選手権(第24回大会)の優勝者であり、現在最強クラスの将棋のオープンソフト“Apery”を開発した人物だからだ。このことは、『ポケモンコマスター』が世界的な特化型人工知能のムーブメントの文脈で語られるべきコンテンツのひとつであることを示している。

 株式会社ポケモンといえば、位置情報によるAR(拡張現実)技術を用いたスマホゲームアプリ『Ingress』を開発したNiantic,Inc.との新プロジェクト『Pokemon GO』の発表もあり、このところ、既存の枠組みにとらわれないイノベイティブなゲーム開発の動きが続いている。果たして、今回の『ポケモンコマスター』は、ポケモンの遊びにどのような新風を吹き込むのか? 4人の開発キーパーソンに話を聞いた。

超高度AI(人工知能)が生み出すまったく新しいポケモンの遊び! 最新スマホゲームアプリ『ポケモンコマスター』開発キーパーソンに聞く、本作の凄み_01
▲写真左から、宇都宮崇人氏(株式会社ポケモン)、鈴木直樹氏(株式会社ポケモン)、林隆弘氏(HEROZ株式会社)、平岡拓也氏(HEROZ株式会社)。