加速度的に「ミク曲+歌ってみた」がプロコンテンツの領域を侵食する、趣味嗜好多様化社会

初音ミクが出たとき、音楽フィールドが変わると囃し立てる人がいた。初音ミクが出てしばらくして、やっぱり変わらなかったじゃんと嘲笑する人がいた。そしてブームは沈静化し、VOL@LOIDは一部マニアのみが語る単語へともぐった。

世の常だが、話題にならなくなってからが本当の勝負どころ。勿論話題にならなくなり、そのまま消えてゆく一発芸人的なものが大半ではあるが、後にズガンとブレイクするようなものも一旦は沈み、水面下で力をつけるフェーズが必ずある。そしてそのフェーズでどれだけ力をつけられるかがNEXT STEPに進むにあたって重要になる。

リンレン、たこルカは(短期的には)みなもを揺らすぐらいの効果しか出せなかったものの、水面下で力をつけたボカロコミュニティ・パワーはsupercellのCDがオリコンチャートに上がるという結果や桜ノ雨が卒業式に続々、という話題をもって久々に浮上した。先に述べた”水面下でつけた力”はボカロコミュニティ+ニコニコ歌姫コミュニティ(歌ってみたコミュニティとでもいうか)でひとつティッピングポイントを超えたんじゃないかなぁというのが感想。勿論今すぐものすごいムーブメントが起こるとは考えにくいが、さまざまな側面から見てプロコンテンツを食っていける存在になったなぁと感じる。

多分何よりも重要なのが、趣味嗜好の多様化により「こういう曲が好きなんだけど最近こういう曲ないよねー」というシーンが増えてきていることだろう。私の同年代(20代後半〜30年代前半)ではそろそろ”オリコン新曲を追いかける”ことをやめ、懐かしい曲を中心に聴く人も増えてきている。具体的には90年代ソングなどだ。そんな人を瀕死の音楽業界(メジャーフィールド)がフォローできるわけもない。わずかに残された選択肢はリメイク、ベスト、カヴァー程度か。そこにきて、アマチュアフィールドではターゲットど真ん中の世代も多くいるわけで、商業ベースに乗る・乗らないを判断基準にせずに自分たちがいいと思ったものを発信するので、差さりやすくなる。ここからはもう、ミクが出たときにさまざまな Blogやネットメディアで書かれたとおりで、作成の敷居が下がったことで玉石混交とはいえ多数の弾が撃たれ、ニコニコの再生数リストやマイリス登録数といったフィルターによって”玉”が選別される。

ボカロ初期の頃から見ていると曲のクオリティは明らかに上がっている*1し、歌い手のクオリティもあがっている *2。録音手法などもTipsが共有され、レベルアップしている。

でね。ぶっちゃけ、BGMとして掛けててまったく違和感がないし、むしろ自分の趣味嗜好とは別のベクトルにいっちまってるメジャーより、カチッと自分の好みにハマる”ミク+歌ってみた”コンテンツのほうが良く聞こえてくるから不思議だ。ここのところヘビロテで聞いている曲はミクオリジナル曲をニコニコ歌姫が歌い上げたものばかり。あれ、俺感覚おかしい?と思ってチャットモンチーとか東方神起とかアンジェラアキとか聞いてみるけどまったくしっくりこない。あー俺は今の音楽フィールドについていけてないんだなーと思うと同時に、同様についていけない人たちにとって、カチリとはまるネットオリジナル曲+ネットオリジナル歌手という組み合わせがみつかれば受けるんだろうなぁーと。




そして改めて思う。「ミクがメジャーを脅かす?ないないwwww」という嘲笑はいつの間にか乾いて引きつった笑いにならないか?メジャーについていけなくなったオッサンオバハンや、趣味嗜好が多様化して皆同じことをやるという文化が常識ではない現代のティーン層といったところから、序々にメジャーとネット発曲の境目が曖昧になってゆくのではないか。そして思ったより急激にそれが起こっているのではないかと感じる。supercellと桜ノ雨、そして下記の2曲(2歌い手)によってこの仮説は自分の中ではほぼ断定に近い感覚となっている。まだこのへんのコンテンツに触れていない30前後のオッサンがいたら、是非これらの曲をiPodやケータイにでも入れて通勤時に聞いてみてほしい。

『なんか、結構、相当、よくね?』と感じる方が多いのではないだろうか。





10年前のELTがデビューした頃とかがすきだったオサーンはこちらを。


10年前にLunaSeaとかにハマったオサーンはこちらを。


10年前にUAとかCoccoとか好きだったオサーンはこちらを。華原の朋ちゃんとかが好きだった人でも合うかも。





※まぁつまりちょうちょさんが大好きということで(ぉ  東京でライブやってくんねぇかなぁ......

*1:音楽評論家ではないのでアカデミックにいい・悪いはわからないが、個人的によくできてるなーと思った曲が増えた、ということ

*2:これは確実に感じる。歌い手の絶対数が増えたことで、先にのべたフィルターによってうまい人が祭り上げられてきちんと定着した、という効果によるところが大きいのか。