近頃、気温もグッと下がって冬の訪れを感じます。ストーブや暖房器具を出したり、冬服に衣替えをしたり、冬支度をしている人も多いと思います。今年の冬は、そういった設備や装備だけでなく、自分の心と体の冬支度についても考えてみませんか?

毎年冬がくると、寒さのせいで風邪を引いたり、体を壊したりして、気分まで憂鬱になってしまう人もいます。冬に風邪を引きやすい人や、季節性情動障害(季節性うつ)になってしまう人のために、冬になる前に、心と体の準備をお手伝いしたいと思います。

※注 これから紹介する方法は、どんな人にも役立つものではありますが、冬の間に極端に情緒不安定になったり、ふさぎ込んでしまったり、無気力になったりするような人は、どうかお医者さんや専門家に診てもらってください。季節性情動障害は、うつ病などと同様、深刻な問題であり、心身の健康を著しく害する恐れがあります

 ■体のために:日照時間、ビタミン、水分、アウトドア

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Photo by M. Pincus.

当然ですが、冬と夏とは大違いです。日照時間は短くなり、生鮮食品も少なくなり、外で運動する機会もめっきり減ってしまいます。体のための冬支度では、そういった冬になると無くなってしまうものを、適切に補うことが重要です。

●日照時間はバカにできない

人間の概日リズム(約24時間周期で変動する生理現象)は、日照時間によってかなり変動します。日本だけでなくアメリカやヨーロッパでも、冬の日照時間は劇的に減ります。夏至の頃には、1日15時間近く日照時間があっても、冬至の頃にはたったの9時間程度になる地域もあります(自分の住んでいる地域の日照時間を計りたい場合は、こちらの記事を参考にどうぞ)。

冬に太陽が照っている時間というのは、ほとんどが労働時間に消えていってしまうため、会社を出る頃には、外は大抵暗くて寒くなっています。このように、自然光に触れられる時間は限られてしまいますが、それを補う方法は無い訳ではありません。

目覚ましライトやグッドスリープライトと呼ばれる、日の出のように徐々に明るく光って目を覚ましたり、日の入りのように徐々に暗くなって眠りにつくためのライトです。これを使って、睡眠をコントロールすることは、肉体的な健康にもいいですし、季節性情動障害にも効果的です。目覚まし時間の設定を、自分が住んでいる場所の夏至の日の出時間に合わせて、年中同じ時間に起きるようにできると、最も効果的でしょう。この方法で起きられるようになると、目覚まし時計が必要なくなる人もいます。

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Photo by Greg Riegler.

●ビタミンを摂る

北欧人は、同じように暗くて寒い冬を過ごす他の北方地域の人に比べて、季節性情動障害になる割合がかなり低いです。その鍵となっているのは、魚の消費量ではないか、と言われています(北欧人の魚の消費量は、カナダなどの北米人の約5倍)。脂の乗った魚には、大量のビタミンDやビタミンAが含まれているので、魚をほとんど食べない他の地域の人よりも、季節性情動障害になりにくいそうです

魚が嫌いな人や、魚を大量に食べるのが難しい人は、ドラッグストアやサプリメントショップにある、魚のオイルのカプセルを代わりに飲むという手もあります。これでも同じような効果が得られるでしょう。また、冬場は新鮮なフルーツや野菜を摂ることも難しくなってきますので、マルチビタミンのサプリを飲むのもいいですよ。

●水分補給をする

体の冬支度に重要なもう一つの要素は、水分補給を十分にするということです。暑い夏の間は、大量の水分を浴びるように飲んでいると思います。しかし、冬は空気が乾燥していますから、水分が足りないと脱水症状のようになり、肌や鼻、のどなどが乾燥状態になってしまいます。冬の大気状態は、飛行機の中と同じくらい乾燥しているので、意識的に水分を多く摂るようにしましょう。また、室内やベッドルームでは加湿器を使って湿度コントロールすると、循環器系の病気になりにくいです。

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Photo by Doug Shick.

●外に出て運動する

夏のレジャーや遊びは、公園の芝生で寝転んだり、海水浴に行ったり、花火大会やお祭りに行ったりと、ほとんどがアウトドアです。暖かい地域に住んでいる人には分からないかもしれませんが、寒い地域に住んでいる人にとって、冬の到来は、数ヶ月間お店も何もかもが全部閉まって、街全体が眠っているような感じがするものです。ですが、ここは一つ冬眠したい気持ちを抑えて、夏と同じくらい楽しいアウトドアのアクティビティーを探してみましょう。

夏に自然豊かな山道をトレッキングしていた人は、冬はクロスカントリーをしてみるとか、夏にロッククライミングを楽しんでいた人は、冬はボルダリングのジムで汗を流してみるとか。できることなら、冬でも外に出て、太陽の元で楽しめる「何か」を探してみてください。前述の通り、太陽の光は体内時計を調整してくれます。太陽には、そういったすごいパワーがあるということを忘れないでください。

■心のために:気を配る、社会性を保つ、前もって知る

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Photo by George Ruiz.

体のケアをすれば、長い冬を耐え忍べます。十分な睡眠をとり、ビタミンを補給し、太陽に当たり、そしてキリッと冷えた新鮮な空気を吸えば、気分は爽快です。しかし、陽の光を浴びて深呼吸するだけでは、冬の憂鬱な気持ちを十分には払拭できません。心底ウキウキするような気分になるにはどうすればいいのか? 考えていきましょう。

●気分や精神状態には常に気を配る

冬になると、憂鬱な気分になったり、ふさぎ込んだり、調子が悪くなる人は多いです。外が暗く寒くなっていく時期になったら、自分の精神状態にはより注意を払いましょう。何だか心がモヤモヤするな...と思った時は、冬だからそんな気分になるんだと片付けてしまってはいけません。冒頭にも書いた通り、季節性情動障害はとても深刻な問題です。今までになったことがあるかどうかに関係なく、自分の気分の揺れ動きや精神状態には、十分注意をしてください。

●社会性を保つ

家の周りを雪の壁が覆ってしまうような雪深い場所、冬の間は近所の人もあまり見かけなくなるような場所に住んでいる人にとっては、誰かと会話をすることも大切です。例えば、夏の間は自分の家の前や庭をうろうろしているので、誰かと挨拶を交わしたりちょっと話すようなことも日常茶飯事です。ですが、冬になると、みんな家の中に閉じこもってしまうので、春になるまで隣の家に赤ちゃんが生まれていたことも知らなかったりするほどです。

ソーシャルネットワークと言っても、mixiやFacebook、Twitterのようなオンラインのものだけでなく、できればリアルの世界でコミュニティやネットワークを持ちましょう。家の中に閉じこもりながらもイライラするのを避けることは、冬場を生き抜く上で大切なことです。仲の良いご近所さんや、趣味の仲間などのグループがあれば、暖かい季節だけでなく、寒くなってからもできるだけ会うように機会を設けましょう。

冬の間は、クリスマスや忘年会、新年会など、人が集まるイベントが多いですが、月に1回程度の交流や、毎日・毎週の定期的な交流とは異なります。持ち回りで、家飲みや持ち寄りパーティーなどを開いて、みんなで集まって冬の寒さや雪の不満を言い合えば、それだけでも気分が晴れるというものです。

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Photo by Zio Bill.

●冬場に陥りそうな落とし穴を前もって知る

まず、パソコンのテキストエディタ、もしくは紙のノートなど、何でもいいのでメモできるものを用意します。そして、冬の良いところ、嫌なところなど、以下の質問に答えながら書いていきます。その答えが、ここで紹介した心身の冬支度のアドバイスを、より自分に合うものへとカスタマイズするヒントになります

  • 冬の好きなところ・ものは何ですか?
  • 冬の嫌いなところ・ものは何ですか?
  • 日が短くなってくるとどんな気持ちになりますか?
  • クリスマスやお正月にはどんな気持ちになりますか? 悲しいとかストレスだという場合は、なぜですか?
  • 引きこもったり、孤立しているなと感じますか?
  • 何もやる気がしなくなったり、冬場は運動が足りていないと思いますか?

例えば、もしクリスマスが来るのがいやだと思っていて、それが一緒に過ごす人がいない寂しさや、プレゼントを買う余裕の無さが理由であれば、早めにシングルの友だち同士でパーティーを計画してみたり、プレゼントはお金を掛けずに手作りにしてみるとか、何かしら打つ手を考えてみるといいでしょう。

また、冬の朝は布団から外に出られない人も多いと思いますが、そういう人は日照時間の項目で紹介した、目覚ましライトを買ってみてはどうでしょうか。自分をよく知ることが、アドバイスを効果的に生かす大切なポイントです

今年は、心も体も準備万端で冬支度をして、心身共に健康でハッピーな冬を過ごしましょう。

Jason Fitzpatrick(原文/訳:的野裕子)