木走日記

場末の時事評論

笑止!イントラネットで1万2000人が誰でも見ることができたファイルのどこが「国家機密」なのだ?

 11日付朝日新聞記事から。

尖閣映像、共有PCで誰でも見られた」聴取に保安官
2010年11月11日15時2分

 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突をめぐる映像流出事件で、「自分が流出させた」と名乗り出た神戸海上保安部の男性海上保安官(43)が警視庁と東京地検の10日の事情聴取に対し、「映像は、船上の共有パソコンで職員がほぼ誰でも見ることができた」と話していたことがわかった。捜査当局は11日も事情を聴いており、国家公務員法守秘義務違反容疑が固まりしだい、保安官を同日中にも逮捕する方針だ。

 捜査当局は、保安官の説明を裏付けるため、神戸市内の官舎の自宅を捜索した。乗り組んでいた巡視艇「うらなみ」のほか、職場の神戸海保や第5管区海上保安本部、流出させた現場とみられるインターネットカフェなど、いずれも同市内の関係先も捜索する。また、警視庁は11日、沖縄に捜査員数人を派遣した。

 捜査関係者によると、保安官は10日の聴取に対し、神戸市中央区の繁華街にあるネットカフェから4日夜に動画投稿サイト「ユーチューブ」に映像を投稿したことを認めた。4日は公休を取っていたという。このネットカフェは自宅から近く、5管や神戸海保が入る庁舎の北約1キロにある。

 保安官は聴取に対し、映像について、職場で共有されているパソコンから、外付けの記録媒体に移してネットカフェに持って行ったと説明したという。「映像は巡視艇の共有パソコン上のフォルダーに入っており、ほぼすべての保安官が見られる状況にあった」とし、職場では機密として扱われていなかったという認識を語ったという。ただし、映像の入手方法に関する説明はあいまいで、捜査当局は捜索などを通じて裏付けを急いでいる。

 一方、保安官は流出させた動機を「このままでは国民が映像を見る機会を失ってしまう。映像が闇から闇に葬られるのではないかと思った」と説明。「職場や家族など周囲の人たちに迷惑をかけた」とも述べているという。

(後略)

http://www.asahi.com/national/update/1111/TKY201011110193.html

 「映像は巡視艇の共有パソコン上のフォルダーに入っており、ほぼすべての保安官が見られる状況にあった」とし、職場では機密として扱われていなかったという認識を語ったそうですが、本人の供述によれば巡視艇内の共用パソコンからUSBメモリにコピーしたとしています。

 巡視艇内の共用パソコンから閲覧可能だということは、もしそれが事実ならば、海保の全職員12000人が利用できる「行政情報端末システム」と呼ばれるイントラネットを経由して問題のビデオ情報は閲覧可能であったことになります。


 産経新聞記事から

【海保職員「流出」】尖閣ビデオ庁内ネットで拡散か パスワード怠る?
2010.11.12 01:00

海上保安官との接見を終えた高木甫弁護士=11日午後11時1分、神戸市中央区
 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突をめぐる映像流出事件は、流出を認めた神戸海上保安部の海上保安官(43)が「映像は職場で見ることができた」と“証言”したことで、映像の流出範囲は石垣海上保安部(沖縄県石垣市)などに限定されていたとする従来の見方が揺らいでいる。中国人船長の釈放で映像公開の声が高まるまでの間、映像を厳密に取り扱う意識が海上保安庁の全職員にまで浸透していたかは疑問で、同庁内のイントラネットを通じて「拡散」した恐れも浮上している。
 事件後、海上保安庁は石垣海保に職員を派遣。内部調査の結果、映像は捜査資料として那覇地検に提出した十数本の映像のうちの1本と同じだと断定するとともに、流出は石垣海保を中心とした限定的なものと判断し、他管区への調査は行わないまま刑事告発に踏み切った。

(後略)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/101112/crm1011120100007-n1.htm

 事件後、海上保安庁は流出は石垣海保を中心とした限定的なものと発表していましたが、実際はかなり杜撰な管理であり、同庁内のイントラネットを通じて「拡散」した恐れも浮上と、つまり海保職員ならばほとんどの人がビデオを閲覧可能だった可能性が高まったのであります。

 そして保安官の供述を裏付ける決定的とも言える痕跡が見つかります。

 12日付け日経新聞電子版速報記事から。

巡視艇内にデータ持ち出し痕跡 尖閣映像流出
2010/11/12 13:43日本経済新聞 電子版

 尖閣諸島沖の中国漁船衝突を撮影したビデオ映像が流出した事件で、流出を認めている第5管区海上保安本部(神戸市)の男性海上保安官(43)が乗船する巡視艇内の共用パソコンに、外部記憶媒体を使って映像データが持ち出された痕跡があることが12日、捜査関係者への取材で分かった。海上保安庁の調査で判明したといい、警視庁などが裏付けを進めている。

http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819695E3E0E2E3848DE3E0E3E3E0E2E3E29F9FE2E2E2E2

 末端の10人乗りの巡視艇内の共用パソコンからでさえアクセス可能だったわけです。

 「国家機密」どころか誰でも見ることができたわけで、この映像が守秘義務の対象である「秘密」に当たるのかどうか、根本的な根拠すら揺らいできました。

 そもそもこのビデオには国家公務員法の秘密漏えい罪に該当するような機密性はまったくないことを10日のエントリーで私は強く主張していました。

 中国人船長を処分保留のまま釈放帰国させてしまい起訴すらできなくなったいま、裁判前に証拠を公にしない理由は完全に消失していますし、すでに国会議員には放映されておりもはや非公知性の点ですでに『秘密』ではなかったのです。

 そして最新の報道では海上保安庁内部ではそもそも「秘密」情報でもなんでもなく自由に全員が閲覧可能だった可能性が高まっています。

 誰でも見れた映像のどこが「国家機密」なのか、あほらしい。

 警察・検察は本当にこんな情報で国家公務員法の秘密漏えい罪(懲役1年以下)を適用するつもりなのでしょうか。


 公務執行妨害という犯罪容疑の中国人船長を超法規的に釈放してしまったくせに、犯罪の証拠を告発した日本人は逮捕するという信じられない事態を本当に強行するつもりなのでしょうか。

 前回、私はsengoku38を逮捕しても公判維持はできないと予言しました。

 再度、予言しましょう、sengoku38を国家公務員法の秘密漏えい罪容疑では、公判維持どころか逮捕すらできないことでしょう。



(木走まさみず)