先日、「知財高裁がソニーに対し、元社員への発明対価として512万円の支払いを命じた」というニュースが流れた。このニュースを見た瞬間、とりあえず「ちょうど512万円か。
切りが良い数字だなぁ」とニュースの中身よりも、数字に目がいった。
しかしながら、他のニュースの見出しでは、「約510万円」や「約500万円」と数字が“丸められている”場合も多かった。「512じゃ中途半端、切りが悪い」ということだろうか。

そもそも、なぜ512が切りの良い数字かというと、512が「2の9乗」だから。2のべき乗(累乗)の数は見慣れている。なので、64(2の6乗)や128(同7乗)や256(同8乗)なども同じく「切りが良い数字、ちょうどの数字」という認識だ。

この「2の累乗数」を見た時の感覚は、なにかの数字が偶然「777」や「1234」や「自分の誕生日の数字」になったのを見たときに「おっ」と思う、あの感覚に近いかもしれない。一種の快感かもしれない。

では、一般的には、256や512は丸められてしまうような、切りが悪いなのだろうか? 言い換えるなら、2の累乗数はキリ番か否か?
この疑問を、色々な知り合いに訊いてみた。
多くの人の反応は「?」といった感じで、全く何のことを言っているのか理解できない、といったような感じだった。やはり結果は「キリ番ではない(切りが悪い)」が多数派だったわけだ。

当初、「理系の人間なら当然キリ番だと感じるだろう」と思っていたが、そうでもなかった。
理系でも半数以上は「?」といった反応だった。
とある物理学専攻の知人は、なぜか「理系なら2の指数は覚えるもの!」と言い切ったものの、「専門分野では全く使わない」とのこと。
実は理系といっても、2の累乗数と縁が深いのは、理学系なら数学専攻、工学系なら電気・情報専攻ぐらい。

「切りが良い」と答えた人がなぜそう思うのか原因を突き詰めると、やはりコンピュータやゲームの影響が大きかった。デジタルは2進数なので、2の累乗数はよく目にするというわけだ。
例えば、ゲームなら「NINTENDO64」が昔あったし、コンピュータ関係だと、メモリ等の容量が512MBや16GBなどであったり、以前コネタで取り上げた32bitと64bitの問題など、デジタル関係はとにかく2の累乗数。

ちなみに、IT企業であるエキサイトの社員でも、2の累乗数をキリ番だと感じるのはシステム関係の担当者が中心とのこと。

つまり、理系か文系かというよりは、デジタル関連に明るいか否かがポイント。情報系が専門の人はもちろん、PCなどのデジタル機器に慣れている人は、2の累乗数である256や512を見慣れているので「切りが良くて覚えやすい数字」と認識する傾向だ(もちろん、理系出身のほうがデジタルに強い傾向もあるが)。そして、「2の累乗数で綺麗な数字だから」と答える数学者は、かなり特殊な部類。

結論は「2の累乗数はキリ番と感じるのは少数派」。
この結果に「デジタル機器が普及しているのに意外」と感じた筆者は、根っからの少数派なのだろう。
情報専攻でも数学専攻でもないんだけど……。
(もがみ)