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■第17回 グループ環展 (2016年6月21~26日、札幌)

2016年06月27日 21時09分49秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 
 所属団体や画材を超えてベテラン具象画家が集まった「グループ環」展も今年で17回目。
 風景や人物など、分かりやすい絵が多いため、絵画好きが例年大勢訪れます。
 筆者も毎年楽しみにしていますが、今年は最終日の閉幕ぎりぎりになってしまいました。

 そういうこともあって今回は全員ではなく、かいつまんで紹介いたします。

 冒頭画像の右端は、藤井高志さん(北広島、全道展会員)「アッシジからの遠望」(F30変形)。
 これはもう個人的な好みとしか言いようがないのですが、イタリアの何の変哲もない農村風景が、どうしてこんなになつかしく感じられるのでしょう。イタリアには行ったこともないのに。
 手前に家々やイトスギ。遠くに広がる田園。このはるけさが、好きです。

 そのとなりは、合田典史さん(新道展会員)「秋 春採湖」(F50)=右=と「小樽にて」(F30)。
 合田さんらしいおだやかな色合いです。合田さんは輪郭線をわりあい多用するほうですが、それが画面を硬くしているのではなく、やわらかさを演出するほうに作用していると思います。




 左は青野昌勝さん(道展会員)「霧多布の丘にて」(F50)。
 青野さんは、広大すぎてとらえどころのない空間をなんとか描き出そうとして工夫を重ねています。
 もちろん、そう簡単に成功するような課題ではけっしてありません。写真でもむずかしいのですから。
 今作は、海岸の風景を抽象的にとらえて、スケール感を表現しています。

 右は香取正人さん(新道展会員)「能登、黒島にて」(F40)。
 香取さんの風景は、正確に対象を写し取ることよりも、その場の空気感を重視していると思います。
 主要なモチーフの鳥居は、線に勢いがでて、向かって左の脚が手前にあって、いまにも歩き出しそうな印象すら受けますが、その動感こそが香取さんの絵の魅力だと思います。単なる建築パースでは、絵にならないのです。




 中村哲泰さん(恵庭、新道展会員)「とどまることのない生命」(F50)。
 ドライフラワーと自然を効果的に組み合わせることで、題の通り、生命の感覚を表現しているのでしょうか。




 北山寛一さん(札幌)「海峡の光」(F50)。
 北山さんは道教大函館校の出身で、数年前から道南の歴史ある団体公募展「赤光社しゃっこうしゃ」に出品しているそうで、この絵も「函館の人々に見せたかった」というのが描いた動機だそうです。確かに、遠景の函館山がきいています(筆者は手稲山かと勘違いしました。恥)。
 手前に置いてある楽譜はバッハのインベンションとのこと。特に曲に意味はなく、花の実がこぼれて音符になったイメージなのだそう。
 タペストリーのような落ち着いた質感と、磁器の描写にみられる光沢とが、何の矛盾もなく同一の画面で両立しているなど、画格の高さにはあらためて感服させられます。

 最後に中吉功さん(道展会員)の「冬の河畔」(F30)。
 以前から、ラベンダー色を基調に、抽象化をほどこした独特の風景画を描いている中吉さんですが、82歳にして独自の境地を開拓したようで、目を見はらされました。
 以前よりも都市の風景を描き込み、手前には水辺を入れることで、しんとした静けさと広がりのある世界が現出しています。水面に反射する月も、本来はあり得ない位置に置かれていますが、バランスを考えるとこれが最良の構図でしょう。真冬の澄み切った大気の感覚が伝わってくるような快作だと思います。

 他の作品は次の通り。

岩佐淑子(新道展会員)「閉ざされた時間」F30、「ひとひら」P40縦=水彩
北山寛一       「チューリッヒ眺望」F30
中村哲泰       「青い池」F20
平原郁子(新道展会員)「冬の旅」F40、「緑影」F30
猪狩肇基(道展会員) 「土手道の朝」F50、「運河沿いを行く」F30
佐藤光子(新道展会員)「コスチュームの四人」F50、「独り」F30縦
佐藤順一(道展会員) 「サルベージ船」F30 「漁船」F30
藤井高志       「時よ止まれ」F50
青野昌勝       「―とかち逍遙― 高原レストハウスにて」F30
小堀清純(道彩展会員)「漁港の朝」P20、「卓上の静物」P40=水彩
中吉 功       「月明かりの教会」
枝広健二(道展会員) 「冬の日に」F50縦、「冬に待つ」F30縦
池上啓一(道展会員) 「浅春の山」F30 「早春の丘」F30
西澤宏生(新道展会員)今回は出品無し


2016年6月21日(火)~26日(日)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
スカイホール(札幌市中央区南1西3 大丸藤井セントラル7階)

2017年1月11日(水)~22日(日) 
神田日勝記念美術館(十勝管内鹿追町東町3)


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