未来の教室―情報化で学びが変わる 2010/08/18朝日社説

2010年8月18日水曜日

 202X年、ある小学校の教室。



 ――先生が電子黒板に触れるたび、モニターの音声つき動画が次々切り替わる。子供の机にあるのはかさばる教科書でなく、iPadのような、あるいはもっ と薄型の情報端末だろうか。校内には無線LANが張り巡らされている。ネットで調べ、タッチペンで書き込む。先生が「A君の解き方を見てみよう」と映し出 す――。



 ICT(情報通信技術)化という大波が、学校現場に押し寄せようとしている。



 小中高校に配備されたコンピューターは現在、子供6.4人当たり1台。政府はそれを2020年度までに1人1台にする目標を打ちたてた。総務省、文部科学省それぞれの実証研究が、各地のモデル校で始まる。



 デジタル教材・教科書の研究開発も急ピッチだ。先月末には、情報通信や教育関連企業による協議会が発足。ソフトバンクの孫正義社長は「通信代はタダ。我々も応援します」とぶちあげた。市場は大きく、いろんな思惑が超高速で駆けめぐっている。



 大切なことを忘れてはならない。ICT化によって子供たちの「学び」がどう変わるか、ということだ。



 東京都日野市教委は早くから態勢を整え、パソコンのグループウエアソフトを使った授業に取り組んできた。たとえば班ごとに理科実験の様子をデジカメで撮 り、載せる。すると他の班の子が「うちの班はこうだよ」と意見を書き込む。「へえ、そうかあ」とヒントをもらった子がまた考える。



 ネットワークでつながった子同士が互いに学び合い、高め合う。遠くの学校との共同授業もできる。そんな可能性を広げるツールになると、同市立平山小の五十嵐俊子校長は強調する。



 教える内容をわかりやすく示せるのはもちろんだ。一人一人の学習の履歴を把握でき、それに応じて指導もきめ細かくできる。新しい学びのカタチをしっかり描きつつ、コンテンツやハードの整備を進めるべきだろう。



 じゃあ、コンピューターが子供に教えてくれるのか。そもそも教師なんか要らなくなるのか。「紙とエンピツ」世代からは懸念も聞こえてくる。



 そんなことはない。ネットの向こうの膨大な「知」から必要な情報を探し出し、編集し、どう発信するか。ネットは現実をどんな風に映し、五感で感じる現実とどう違うのか。情報とのつきあい方、使いこなし方を身につけさせるのは、やはり先生の仕事だ。



 何より、ネットで限りなく世界が広がるとしても、顔をつきあわせ、言葉を交わすコミュニケーションこそ、生きる力を養うのには欠かせない。



 ICT化が進むほど、リアル教師の役割は大事になる。教員養成課程や研修でのサポートも必要だろう。


http://www.asahi.com/paper/editorial20100818.html?ref=any#Edit2

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