カリフォルニア州のゲイ男性、同性パートナーの死に目に合わせなかった郡を訴え、60万ドルの和解金を勝ち取る

米カリフォルニア州ソノマ郡、老ゲイカップルを引き離し、財産をすべて売却 - みやきち日記の続報です。郡によって同性パートナーと引き離され、財産を勝手に売却され、パートナーの死に目にも合わせてもらえなかったClay Greeneさん(78)が、郡を相手取った訴訟で60万ドルの和解金を勝ち取ったとのこと。

これまでの経緯を前回のエントリから引用すると、こうです。


このゲイカップルは88歳のハロルド(Harold)さんと77歳のクレイ(Clay)さん。20年間にわたってパートナーとして共に暮らしていたとのこと。病を患っていたハロルドさんは、ある日自宅の階段で倒れて病院に運ばれました。ところがソノマ郡は、クレイさんはハロルドさんにとって他人であるとして面会権を認めず、さらに、ふたりを別々の老人ホームに収容してしまったのだそうです。
ソノマ郡は、ハロルドさんには家族がいないとみなして、郡がハロルドさんの代理として経済上の決定をくだすと主張。裁判所は郡に対し、ハロルドさんの看護費用支払いのために銀行口座のひとつにアクセスする権利だけを認めたとのこと。ところが郡は、それ以上のことをやらかしました。ハロルドさんとクレイさんの所有物を、どれがどちらのものだか区別すらせずに、全部競売にかけてしまったんです。郡はさらに、このゲイカップルが長年住んだ家の賃貸契約を打ち切り、クレイさんを家から追い出して、ハロルドさんが入れられたのとは別の老人ホームに収容してしまったとのこと。
3ヶ月の闘病の後、ハロルドさんは老人ホームで死去。クレイさんは臨終の場に立ち会わせてもらえなかったそうです。クレイさんに残されたのは、たった1冊のアルバムだけだったとか。現在、The National Center for Lesbian Rights (NCLR) がハロルドさんとクレイさんの代理として郡を訴えており、2010年6月16日に初公判が行われる予定だとのこと。

Associated Pressによると、郡の弁護士Greg Spaulding氏は、郡が誤ってクレイさんの所有物を売却したことは認めたものの、クレイさんは差別されていないと主張。クレイさんがハロルドさんへの面会を禁止されたのは、ハロルドさんから「クレイさんに殴られ、殺すと脅された」という通報があったためだとしています。ただし、この通報は、正式に申したてられたものではないんだそうですが。
Spaulding弁護士はまた、郡はこれ以上の出費を避けるため、この件を示談にすると述べたとのこと。
このゲイカップルの代理として郡を訴えていたNCLRのAmy Todd-Gher氏は、今回の示談成立について、以下のように述べています。


「私たちはこの勝利を祝いますが、ソノマ郡がこの一件でおこなった言語道断な職権濫用と法律違反の責任を取ることを拒否したことを深く憂慮します」
"Even as we celebrate this victory, however, we are deeply troubled that the County of Sonoma continues to refuse to take responsibility for their egregious misconduct and violations of the law in this case.

いくら後からお金をもらったところで、死の床にあるパートナーに付き添えなかったことの埋め合わせにはなりませんし、郡側の「差別ではない」という主張にも疑問を感じます。もし自分がクレイさんと同じ立場に置かれたらと思うと、どうにもやりきれない気分になってしまうことは確かです。それでもとにかく、一応は正義が下されるという形で事態が収束してよかったと思います。60万ドルという決して少なくない金額が、今後こうした事件の再発にブレーキをかけることになってくれるといいのですけれど。

単語・語句など

単語・語句 意味
power of attorney 委任状
egregious 実にひどい、はなはだしい、言語道断な
misconduct 職権濫用、違法行為
lodge 提出する